2010/01/31

北アフリカ地域の太陽熱発電プロジェクト

このエントリーでは、北部アフリカにおける太陽熱発電について 紹介します。プラント会社や商社にビジネスチャンスが広がると思います。

本件は、太陽熱発電であり、太陽光発電とは違います。太陽を利用した発電には2つの方法があります。
①太陽光発電(photovoltaic power plant:PV)は、最近では一般家庭の屋根の上に設置されるようになった方式です。
②集光型太陽熱発電(Concentrating Solar Power:CSP)は、地球上の日照時間の長い地帯(サンベルト)において、大規模な発電をする方式です。


「クリック一回、ランク上昇」  よろしくお願いします。
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ


【 ニュース 】

2010年1月21日、モロッコは、太陽熱発電プロジェクトを正式に発表した。[1]

・ 発電能力:2020年まで全部で2,000MWを建設する。
・ 発電所数:5ヶ所
・ 最初のプロジェクト:Ouarzazate(モロッコ中部の都市)において500MWの発電所を建設する。
・ 総額:9,000百万ドル(8,100億円)
・ 資金源:電力公社、Hassan II Fund for Economic and Social Development(国王の経済社会開発財団) 日本、UAE、米国などが参加を希望している。
・ インパクト:国内需要の40%に相当する。また、原油輸入の12%を削減する。
入札:2010年2月実施予定



【 解説 】

1.CSP(Concentrating Solar Power)の方式

CSPには、トラフ式(trough)、タワー式(tower) 、ディシュ式(dish)、フレネル式(linear fresnel)4つの方式がある。現在のところトラフ型が一般的である(図1)。なお、コスモ石油がアブダビで実験している「ビームダウン式」は、タワー式を発展させたものである。[2]


図1:太陽熱発電の種類 (クリックで拡大)










2.北アフリカにおけるCSP

北アフリカは地球上でも有数な日照時間があるためCSPに適している(図2)。現在は、モロッコ、アルジェリア、エジプトで既に設置されているか、あるいは工事中である(図3)。欧州南部、MENA(中東・北アフリカ)における2050年までのCSP発電能力は、2020年頃から急激に拡大していき(図4)、北アフリカで10以上のCSPが実現すると想定されている(図5)。

(1)モロッコ
Ain Beni Matharにおいて、トラフ型太陽熱発電(20MW)と天然ガス発電を組み合わせたコンバインドサイクル発電所(総発電能力470MW)が操業を開始したばかりでありである。[3]

(2)アルジェリア
Hassi R'melにおいて、トラフ型太陽熱発電(25MW)と天然ガス発電を組み合わせたコンバインドサイクル発電所(総発電能力は130MW)が、現在工事中である[4]。その他、2つの70MWのCSP発電所が計画されている[5]。

(3)エジプト
コライマットにおいて、太陽熱(20MW)・ガス統合発電(総発電能力は150MW)が工事中である。  本事業は三井物産/Iberincoコンソーシアムが受注している[6]。


図2:サンベルト













図3:北アフリカのCSPの位置













 図4:欧州南部・MENAにおける発電能力の予想













図5: 高圧直流電流供給網

















【 コメント 】

モロッコだけなく、アルジェリア、リビア、エジプトでも同様の大規模プロジェクトがあるはずなので、巨額なプロジェクトになる。日本の企業(コスモ石油、三井造船)はアブダビでテストプラントを建設し、事業を検証しているし、その他の会社にもビジネスチャンスは十分にあるはずである。

アブダビで太陽熱発電に成功した場合、アブダビの投資ファンドは北部アフリカの発電事業に進出すると考えられる。

下の図6を見ると、CSPは高いように見えるが、本当だろうか。換言すれば、天然ガス発電や原子力発電の資本費用は安いように見えるが、実態を表しているのだろうか。例えば、天然ガス発電所の建設費用には、失敗したガス田の探鉱開発費用は含まれていないはずである。また、原子力も廃棄物処理に係る費用が含まれているのか、疑わしい。それを考えると、CSPは一見高そうに思えるが、石油ガスの上流事業のようなリスクがないし、CO2に係る「費用」がないので、実は安いのかもしれない。

図6:発電原価比較
















(追加情報)2010/12/12:アルジェリアのソーラープロジェクト もご覧下さい。


「クリック一回、ランク上昇」  よろしくお願いします。
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ


【 参考資料 】

[1] 「Morocco to invite bids for solar station in Feb」 (Reuters, 2010/1/7)
http://www.engineeringnews.co.za/article/morocco-to-invite-bids-for-solar-station-in-feb-2010-01-07
「Morocco's $9bn bid to capture sun's energy」 (International Construction Review,11/01/2010)
http://www.iconreview.org/news/view/1692
「Morocco hopes to shine in mega solar project」(SciDev.net 、2010/1/21)
http://www.environmental-expert.com/resultEachPressRelease.aspx?cid=33596&codi=79567&lr=1
[2] 「新技術取り入れた太陽熱発電所で世界市場へ参入・三井造船」(日経エコロミー、2009/09/29) ★ ご覧ください。
http://eco.nikkei.co.jp/special/ecopro/article.aspx?id=MMECf2000019092009
[3] 「Morocco commissions solar/CCGT hybrid power plant」(Power Engineering, 2010/1/26)
http://pepei.pennnet.com/Articles/Article_Display.cfm?Section=ONART&PUBLICATION_ID=6&ARTICLE_ID=372687&C=PRODJ&dcmp=rss
[4] Wikipedia   http://en.wikipedia.org/wiki/Hassi_R%27Mel_integrated_solar_combined_cycle_power_station
[5] 「Concentrating Solar Power Global Outlook 09: Why Renewable Energy is Hot」
★ ご覧ください。
http://www.greenpeace.org/raw/content/international/press/reports/concentrating-solar-power-2009.pdf
[6]「エジプト新・再生可能エネルギー庁向け太陽熱・ガス統合発電設備建設契約受注」(三井物産プレスリリース、2007/10/01)
http://www.mitsui.co.jp/release/2007/1177577_1767.html

その他資料

CLEAN TECHNOLOGY FUND: CONCEPT NOTE FOR A CONCENTRATED SOLAR POWER SCALE-UP PROGRAM IN THE MIDDLE EAST AND NORTH AFRICA REGION (世界銀行気候変動投資基金、2009/4/27)
http://www.climateinvestmentfunds.org/cif/sites/climateinvestmentfunds.org/files/CSPConceptNoteApril27.pdf

2010/01/29

BOP -- Bottom か Base か?

前回のエントリで、「BOP (Bottom of the Pyramid)」 と書いてから、考えてしまいました。 「Bottom of the Pyramid」 か 「Base of the Pyramid」 か と。


学者はどちらを使っているのか調べたところ、結果は以下のとおりです。[1]

原題:The Great Leap: Driving Innovation From the Base of the Pyramid
訳題:大いなる跳躍―ピラミッドの底辺から起こすイノベーション                
著者:Hart, Stuart L. & Christensen, Clayton M.                
出版社:MIT Sloan Management Review
出版年:2002
種別:論文

原題:The Fortune at the Bottom of the Pyramid
※正式には、The Fortune at the Bottom of the Pyramid: Eradicating Poverty through Profits        
訳題:ネクスト・マーケット―「貧困層」を「顧客」に変える次世代ビジネス戦略
著者:Prahalad, C. K.                
出版社:Wharton School Publishing          
出版年:2004
翻訳書:スカイライトコンサルティング訳、英治出版刊、2005年


なお、Dr.C.K.Prahladは、「bottom of the economic pyramid」 というフレーズを1999年1月に使っています。[2]


もう1つ、bottom と baseが使われる頻度を調べるため、Factivaというデータベースで検索し、ヒットする件数をみてみました。(下図)結果は、「Bottom of the Pyramid」の用例が3倍程度多いです。

クリックで拡大



"クリック一回、ランク上昇"     よろしくお願いします。
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ



【 参考資料 】

[1]東京工業大学大学院 社会工学専攻 ノンプロフィットマネジメントコース/公共システムプログラム 国際的社会起業家養成プログラム の データベースよ り。
http://www.soc.titech.ac.jp/~soc-entre/data/intro.htm

[2] http://www.nfdindia.org/lec22.htm
http://www.expressindia.com/news/fe/daily/19990112/01255225.html


その他参考資料

経済産業省資料 『官民連携によるWin-winのBOPビジネス』
「BOPとは、「Base of the Pyramid」または「Bottom of the Pyramid」の略で、所得別人口構成のピラミッドの底辺層を指す。」
http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/cooperation/bop/pdf/bopbusinesstoha_0101.pdf

Nikkei BP
『BOP(base of the pyramid)~経済システムの外側にいた低所得の40億人』(2010/1/22)
「BOPとはbottom of the pyramid(ピラミッドの底)の略。開発途上地域にいる低所得者層を意味する。所得別人口構成をグラフ化した時に、下から低所得者層(BOP層)、中間層、富裕層を積み上げたような三角形が出来上がるため、ピラミッドという表現を用いる。ただしbottom(底)という表現が差別的であるという観点から、最近ではbase of the pyramid(ピラミッドの基盤)と表現することが多い。」
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100122/206703/

2010/01/27

果樹農家育成プログラム(TechnoServe、コカ・コーラ、Gates財団)

「人に魚を与えれば、一日食べさせることができる。だが、魚釣りを教えれば、一生食べさせることができる。」(老子)   考え方は理解しているのですが、現実にどうすればよいのか、悩むところです。その1つの事例が発表されましたので、紹介します。


クリックお願いします。
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ


【 ニュース 】

2010年1月20日、Bill & Melinda Gates財団、コカ・コーラ、Coca-Cola Sabco、及び TechnoServeは、東アフリカでプロジェクトを立ち上げたと発表した。[1]

対象:ウガンダとケニアの小規模果樹農家(5,000軒)
目的:収穫量を2014年までに4年間で2倍にする。収穫された果実(マンゴーとパッションフルーツ)は、コカ・コーラがジュースの原料として買い取る。
方法:TechnoServeは農家に技術指導をして、農協を組織し、融資を受けられるようにする。
事業資金:1,150万$ (約10億円)
資金負担:Bill & Melinda Gates財団(750万$)、コカ・コーラ(300万$)、Coca-Cola Sabco(100万$)


【 解説 】

1.コカ・コーラのCSR
2008年の寄付額は82百万ドル(74億円)。2009年に、6年間で30百万ドル(27億円)を使いアフリカに飲料水を提供するプロジェクト(Replenish Africa Initiative :RAIN)を発表した。[2]


2.Bill & Melinda Gates財団
マイクロソフトの Bill Gates夫妻が設立した財団であり、1994年から2009年9月の間に21,100百万ドル(2兆円)を寄付した。[3] 2006年6月、大富豪のWarren Buffetが31,000百万ドル(3兆円以上)を数年間に分けて寄付することを約束したことでも有名。[4]


3.TechnoServeの専門性
1968年に設立された非営利団体。民間企業アプローチ(private-enterprise) をとり、貧困であえぐ人々が、自らが稼ぐ手段を身につけさせる助言をしている。現在、アフリカ、中南米と南インドで活動している。500名を雇用しているが、大部分が現地の専門家(local business professional)である。2008年の収入は44.3百万ドル(40億円)で、内訳は政府補助金13.5百万ドル(12億円)、民間寄付22.3百万ドル(20億円)。(下図) マネジメントには、マッキンゼー(コンサルタント会社)出身者が数名いる。諮問委員会にはビジネススクールの教授などがいる。

(クリックで拡大)



















ケニアの事例: TechnoServeがバナナ農園の経営者を助言したことで、収穫量が約2倍になり、品質も良くなった。事業が拡大し、雇用が増え、村全体が変化していく。




TechnoServeの社長の講演(50分)




【 コメント 】

企業(コカ・コーラとCoca-Cola Sabco)と篤志家(Gates Foundation)が資金負担をして、コンサルタント(TechnoServe)が、現地の起業家(果実農家)を支援する。果実はその企業が買い取る。支援する企業、支援される起業家の双方にメリットがあり、持続可能なビジネスモデルである。

企業の視点からは、
①コンサルタントが市場調査をしているので、投資のリスクは少なくなっている。
②現地の果実はジュースの原材料として必要としている。
③貧困層の人々の収入を増やす、という意味でCSR(企業の社会的責任)の目的を達成できる。
④果実農家の所得が増える→購買力がつく→ジュースが売れる→利益が出る。------という図式を期待している。

現在、経済産業省、JICA、JETROはBOP(Bottom of the Pyramid)ビジネスを推進しようとしている[5]。BOPビジネスには大きく分けて、2つのビジネスモデルがあるのではないだろうか。1つは、上記のようなビジネスモデルで、利益はあとからついてくる、という考え。もう1つは、低所得層を市場ターゲットとするもので、最初から利益を求めていく。

日本の大企業であれば、CSRも大切にして、次のようにアフリカで投資するという考えはどうだろうか。例えば、
・コンドームの会社のオカモトが、ゴムの木を植林して、工場を作る。
・オートバイの会社のホンダ、あるいは農機具の会社のクボタが、ヤトロファ[6]を植林して、バイオ燃料を作ると同時に、現地でオートバイや耕運機を販売する。[7]



クリックお願いします。
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ



【 資料 】

[1]各社のプレスリリース
Bill & Melinda Gates財団 http://www.gatesfoundation.org/press-releases/Pages/technoserv-empowers-farmers-in-uganda-and-kenya-100120.aspx
コカ・コーラ http://www.thecoca-colacompany.com/presscenter/nr_20100120_africa_juice.html
TechnoServe http://www.technoserve.org/resources/press-room/2008-2009-press-releases/tccc-gates-tns.html
[2]http://www.socialfunds.com/shared/reports/1258340692_CocaCola_0809_Sustainability_Review.pdf
[3]http://www.gatesfoundation.org/grants/Pages/overview.aspx
[4]http://www.npr.org/templates/story/story.php?storyId=5512893
[5]
経済産業省 http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/cooperation/bop/index.html
JICA http://www.jica.go.jp/topics/2009/20090731_01.html
JETRO http://www.jetro.go.jp/events/seminar/20091117129-event
[6] http://www.bioagri.co.jp/index.html
    ビデオ:http://www.youtube.com/watch?v=7EQBOhZ_b8I&NR=1
[7] http://www.honda.co.jp/news/2009/c090311.html
各社のHP
http://www.gatesfoundation.org/
http://www.thecocacolacompany.com/
http://www.technoserve.org/

2010/01/23

中国のアフリカ政策

中国のアフリカ政策については、このブログでいつかは取り上げなければならないと考えておりましたが、大きなトピックであるため、躊躇しておりました。最近になり、中国の上層部の3人がアフリカ諸国14ヶ国を訪問するというニュースに触れ、事実関係を押さえておく必要があったので、以下、これを機会にまとめてみました。

クリックお願いします。
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ

【 ニュース 】

中国、3閣僚級がアフリカ14カ国を歴訪 1月
2010/01/13 23:13   日経新聞
【北京=佐藤賢】中国が対アフリカ外交に一段と力を入れている。年明けから楊外相ら閣僚級の3人がそれぞれ現地を歴訪し、訪問国は1月だけで合計14カ国に達する。中国は各国で新たな無償援助や低利借款の供与など経済援助の拡大を約束。中国は鉱物資源の確保や途上国の連携を深める外交戦略を強化しており、金融危機の影響で主要国の一部で対外支援が停滞する中、アフリカで存在感をさらに高めそうだ。
中国外相の年初のアフリカ歴訪は20年連続となった。楊外相は10日、アルジェリアのブーテフリカ大統領との会談で、地球温暖化問題で途上国の権益を守るため連携を強化することで一致。地球温暖化対策を巡る国際交渉をにらみ「途上国連合」の結束固めにも力点を置く。
陳徳銘商務相もアフリカを歴訪中で、王家瑞共産党対外連絡部長も15日からアフリカ入りする予定。中国国営の新華社によると、エチオピアを訪問した陳商務相は11日、同国のスフィアン財務・経済開発相との会談で、貿易拡大に向けた優遇策を説明した。5000万元(約6億7000万円)の無償援助と1億 7200万元(約23億円)の優遇借款を柱とする援助や、関税免除の協定に調印した。
中国政府はアフリカの最貧国からの輸入品のうち60%について2010年中に関税を撤廃し、12年に95%を無関税とする方針。12年までの3年間でアフリカ諸国に100億ドル(約9100億円)の低利借款も供与する。エチオピアの場合、今回の協定で無関税の対象は約400品目から約4700品目に拡大する。
世界的な金融・経済危機を受けて主要国は景気刺激を狙った財政出動を拡大。国内に歳出を振り向けるため対外支援を見直す動きが広がり、金額としてはアフリカ向けも圧縮される傾向にある。国際社会は将来の成長に期待してアフリカを注視しているが、閣僚級を集中訪問させる中国の対応は異例だ。
今年も8%成長を目指す中国にとって、石油やレアメタル(希少金属)など資源確保の重要性は一段と増している。資源国の多いアフリカとの関係を以前から重視している。金融危機で逆風下にある主要国の支援姿勢をにらみながら、むしろ緊密ぶりをアピールして優位を確立したい意向とみられる。
ただ援助の中身については批判もある。12日、陳商務相は中国が支援してエチオピアで建設中のアフリカ連合(AU)会議センターを視察し、中国人労働者らを慰労した。同センターは中国がアフリカで建設を支援する最大規模のプロジェクト。目に見えやすい「ハコモノ」が依然として多く、企業と労働者を引き連れて経済利益を狙う実態も浮かび上がらせた。


【 解説 】

以前「アフリカに関する日本・中国・韓国の政策協議」のエントリーで述べたとおり、中国とアフリカとの関係は、「中国・アフリカ協力フォーラム」(FOCAC:Forum on China-Africa Cooperation)という「枠組み」において決められている。3名の閣僚級のアフリカ訪問も、その枠組みの中の訪問である。

2000年10月:第1回FOCAC@北京
2003年12月:第2回FOCAC@エチオピア アディス・アベベ
2006年11月:第3回FOCAC@北京
2009年11月:第4回FOCAC@エジプト シャルム・シェイク

①楊潔チ(Yang Jiechi) 外相
1月6~12日:ケニア、ナイジェリア、シエラレオネ、アルジェリア、モロッコ (サウジアラビア)
②陳徳銘(Chen Deming) 商務相
1月11~17日:エチオピア、モザンビーク、タンザニア
③王家瑞(Wang Jiarui) 中国共産党対外連絡部長
1月15~26日:コンゴ民主共和国、マリ、セネガル、ベナン、中央アフリカ、ジブチ




















【 コメント 】

以下の順番でコメントする。

 1.中国のアフリカ支援の「強み」と「弱み」
    ・中国のアフリカへの支援策
    ・中国 vs.イスラム社会
    ・内政不干渉
 2.中国とアフリカ諸国の考え方のズレ
 3.中国のアフリカへ進出は「新植民地主義」か?
    ・中国のアフリカへの進出の度合い
    ・中国当局による反論
    ・筆者の考え方



1.中国のアフリカ支援の「強み」と「弱み」

(1) 中国のアフリカへの支援策

「強み」は、中国政府が具体的な支援策を定め、それを着実に実行できることである。(日本は、政府と民間は別々で、投資に関しては民間が意思決定するので、中国のような機動力はない。)最近の支援策は以下を参照されたい。

①2006年1月 中国の対アフリカ政策文書
     日本語:http://www.china-embassy.or.jp/jpn/zgbk/t230934.htm
     英語: http://www.fmprc.gov.cn/zflt/eng/zfgx/dfzc/
②2006年11月 FOCACで発表:「アフリカに対する8項目の支援策」(末尾「参考-2」)
③2009年11月 FOXACで発表:「アフリカに対する新8項目の支援策」(末尾「参考-3」)


(2) 中国 vs.イスラム社会

最大の「弱み」は、中国国内のムスリム問題であると思う。2009年7月に新疆ウイグル自治区で発生した暴動事件は、「中国 vs.イスラム社会」という対立軸をもたらしたし、それが拡大する可能性がある。アルジェリアに本拠地をおくアルカイダの支部組織「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」(AQIM)は「中国人に報復を行う」と宣言した[1]。アフリカのムスリム人口は40%以上である。[2]


(3) 内政不干渉
この問題は「強み」でもあるし「弱み」でもある。欧米諸国と違い、中国はアフリカ諸国の内政には干渉しない。そのため為政者にとっては都合がよいので、中国は歓迎される。ただし民衆に歓迎されているかどうかは別問題である。

人民日報(2006/7/27)は次のように報じている。
「早くも1964年1月に、周恩来総理はアジア、アフリカの14ヵ国を訪問した際、「中国の対外援助の8つの原則」を打ち出し、その基本的な主旨は次のとおりである。(1)平等に付き合い、互恵を目指すこと(2)他国の内政に干渉しないこと(3)被援助国が自らの力で振興することを助けるために、実のある援助を提供すること(4)被援助国の受益を確保すること(5)被援助国の負担をできる限り軽くすること(6)担うべき義務を厳しく履行すること。これは中国の対外援助の性格と主旨を明らかにしたものであり、対外援助の事業を通じて中国の外交政策の具現でもある。「中国の対外援助の8 つの原則」はこれまでの中国の対外援助の行動を導き、現在においても現実的な指導的意義があると見られている。」[3]


2.中国とアフリカの考え方のズレ

温家宝は、中国とアフリカの友好関係を『古き友情は黄金の如し、百錬色褪せず』( "A time-honoured friendship is like the gold. After repeated smelting, it keeps its true colour.")と表現した。[4,5] しかし、アフリカ諸国がどのように考えるかが問題である。

「A friend in need is friend in deed.」これは全世界共通の考えであると思う。しかし、イスラム教における「喜捨」にあてはまる場合は別である。裕福な者が貧しい者を助けるのは義務であるし、喜捨を受けても別に恩義にも感じなくてもよいことになっている。

中国は自国を「発展途上国」と思っているようだが[6]、GDPでもうすぐ世界第二位になり、自動車の生産・販売台数が世界一の国なので[7]、アフリカ諸国は中国を発展途上国とみるとは思えない。アフリカ諸国が「中国は資源が欲しいから援助している」と考えているならば、中国の考えとズレが生じることになる。

シンガポールのStrais Times (2010/1/19)が「China's welcome in Africa cools」という記事を掲載したが、そこにはアフリカ諸国の冷めた意見が書かれている。[8]

①中国に滞在するアフリカの外交官は、「(中国の外相がアフリカを毎年訪問しているが)それはシンボルであり、あまり意味がない。」 「我々は中国とは友達だが、中国は、台湾を外交的に孤立させることと、アフリカの資源が目的であることを知っている。」と発言している。[9]
②エジプトで開催されたサミットで、リビアとエジプトからは、「アフリカ大陸への侵略に似ている」「新植民地だ」との発言があった。
③ナイジェリアの外務大臣は、中国がギニアとニジェールの独裁者を支援している、と批判した。


3.中国のアフリカへ進出は、「新植民地主義」か?

中国のアフリカにおけるプレゼンスが大きくなるにつれ、西側のメディアは中国を「新植民地」であるとの報道が散見されるようになった。英国、米国、EUなどでも研究されるようになっている。(参考文献を参照。)

(1) 中国のアフリカへの進出の度合い

中国とアフリカ諸国の貿易額の推移[5,10]
2001年:8,920百万ドル
2005年:50,000百万ドル
2007年:73,000百万ドル
2009年:100,000百万ドル

図 [11]

中国のアフリカ諸国との貿易額推移(1998-2006)











アフリカの対中国輸出構成(2006)

















アフリカの貿易相手国(2006)





アフリカ諸国にいる中国の会社は、①中国政府の「息」がかかっている会社と、②小規模の民間会社があるようだ。中国の会社数は、2006年の公式数は800社で、その内、85%は純粋民間会社である。しかし、ある学者が中国大使館、中国企業のインタビューをした推定値は2000社以上である。[12]

アフリカ諸国にいる中国人は75万人~100万人と推定されている。中国のプロジェクトで現地人が雇用されるのは30%程度であり、中国は現地に食堂、ホテル、店などそっくり持ちこみむため、現地の経済には貢献しない[10]。 今後、アフリカの人口が増えるにつれて摩擦が大きくなると想定される[13]。(下図)


















(2) 中国当局による反論

当然のことながら、中国は反論している。
中国を透視する ---- その一問一答(2007年) [14]
②2006年6月 温家宝総理「中国は新植民地主義にあらず」(末尾「参考-1」参照)
③2009年11月 Full text of Chinese Premier Wen Jiabao's press conference in Egypt[5]



(3)  筆者の考え
私は、現在のところ、アフリカ諸国は中国の投資によりインフラ整備などの恩恵を受けていると考えているので、「新植民地主義」には賛成しかねる。

ただし、西側諸国のメディアによる中国批判が、多少なりとも中国の政策に影響を及ぼしたのではないかと思う。具体的には、中国の2006年版「8項目の支援」と、2009年版「8項目の新支援」を比べると、後者は「ハード的援助」だけでなく、人材育成など「ソフト的援助」が増えたと考えられる(末尾「参考-2 & 3」参照)からである。

中国との関係においては、次のような点に注目しておく必要があると考える。
①中国の対アフリカ諸国の融資の返済が重荷にならないようにする。
②透明性を確保するよう働きかけることで、汚職などを少なくする。

中国がアフリカに進出しているからといって、神経質になる必要はないし、無理に中国と競争する必要はないと考える。中国と同じ土俵に上がって競争するのは得策ではない。中国は資金力があり、政府と民間の関係が強く、行動が迅速であるが、残念ながら日本はそのような「強み」はないからである。日本は中国とは別の土俵で、アフリカ諸国を援助したり投資したりすればよいのではないか。その際は、アフリカの民衆のニーズにこたえるようにすることが重要なことだと考える。

クリックお願いします。
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ


【 参考資料 】


[1] Al-Qaeda Group Vows to Avenge Uighur Deaths in China (Bloomberg, 2009/6/14)
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=20601087&sid=al7LH65DbCXA
[2] アフリカ諸国のムスリム人口
http://www.nationmaster.com/graph/rel_isl_in_afr_isl_pop_in_afr_and_pop_per_pop-islam-africa-islamic-population-percentage
http://www.pupr.edu/hkettani/papers/ICSSH2009Africa.pdf
[3] 調和の取れた世界構築を促す中国の対外援助 (人民日報, 2006/7/27)
http://j.peopledaily.com.cn/2006/07/27/jp20060727_61735.html
[4]温家宝総理の目の中の「黄金」(人民網、2009/11/12)
http://j.people.com.cn/94474/6808735.html
[5]Full text of Chinese Premier Wen Jiabao's press conference in Egypt
http://news.xinhuanet.com/english/2009-11/11/content_12427606.htm
[6]中国国家統計局の会見要旨(ロイター、2010/01/21)
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK857799220100121
[7]中国、自動車生産・販売台数が世界一 (中国網、2010/1/11)
http://japanese.china.org.cn/life/txt/2010-01/11/content_19214940.htm
[8] China's welcome in Africa cools (2010/01/18)
http://www.themalaysianinsider.com/index.php/world/49771-chinas-welcome-in-africa-cools

[9] 現在、台湾は、台湾を承認しているの4ヶ国に大使館を設置している。また2ヶ国には事務所を置いている。
ブルキナファソ              (大使館)
ガンビア                       (大使館)
サントメ・プリンシペ     (大使館)
スワジランド                 (大使館)
ナイジェリア                  (Trade Office)
南アフリカ                    (Liaison Office)
http://www.africa.org.tw/introduction_english_2.asp?M=2
チャドは2006年8月に、マラウイは2008年1月にそれぞれ台湾ではなく中国を承認した。

[10] CHINA'S INVOLVEMENT IN AFRICA」 by ELIZABETH C. ECONOMY
http://www.gpo.gov/fdsys/pkg/CHRG-110shrg649/pdf/CHRG-110shrg649.pdf
[11]China’s Engagement in Africa - Opportunities and Risks for Development
by Dr. Helmut Asche, Dr. Margot Schuller
September 2008 (94頁)
http://www.giga-hamburg.de/dl/download.php?d=/english/content/ias/pdf/studie_chinas_engagement_in_afrika_en.pdf
[12] Lizards follow the Dragon
http://www.royalafricansociety.org/index.php?option=com_content&task=view&id=579
[13] 国際連合人口部 World Population Prospects: The 2008 Rivision
http://esa.un.org/unpp
[14] 中国を透視する ---- その一問一答(2007年)
http://japanese.china.org.cn/life/archive/wenda/2008-03/19/content_13056937.htm
[15]しんぶん赤旗、2006/11/5
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-11-05/2006110507_01_0.html
その他、英語版は
Full text: Address by Hu Jintao at the Opening Ceremony of the Beijing Summit of The Forum on China-Africa Cooperation  2006-11-04
http://english.focacsummit.org/2006-11/04/content_4978.htm
[16]人民網 (2009/11/10)  http://j.peopledaily.com.cn/94474/6807657.html
英語版は
Eight new measures to enhance co-op with Africa
http://www.chinadaily.com.cn/china/2009-11/08/content_8929420.htm


その他参考資料

中東、アフリカも自分の庭にしてしまう中国
中国人は常に世界を見て動く~「中国株式会社」の研究~その40
2010.01.08(Fri) 宮家 邦彦
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2516

Department for International Development
China and Africa
http://www.dfid.gov.uk/Where-we-work/Asia-East--Pacific/China/China-and-Africa/
※英国の中国への取り組み方が書いてある。

Understanding China’s Engagement with Africa & How the UK can Build Relationships with China In Africa
23rd June 2009- 25th June 2009, Centurion Lake Hotel, Pretoria
Conference Report
http://www.dfid.gov.uk/Documents/publications/uk-china-africa-report09.pdf
※19頁

How China delivers development assistance to Africa
Dr Martyn Davies with Hannah Edinger, Nastasya Tay & Sanusha Naidu
A research undertaking by the Centre for Chinese Studies, prepared for the Department for International Development (DFID), Beijing
Centre for Chinese Studies, University of Stellenbosch
First released: February 2008
http://www.dfid.gov.uk/Documents/publications/china-dev-africa.pdf
※86頁

----------------------------



参考-1:温家宝総理「中国は新植民地主義にあらず」

2006年6月20日 CHINA HEADLINE 経済日報

温家宝総理は18日、エジプト訪問終了にあたり開催した記者会見で、「中国がアフリカとの関係を強化しようとしているのは石油、エネルギー獲得のためであり、中国は新植民主義を実施しようとしている」との一部の論調に対する見方を問われ、以下のように答えた。

「中国が新殖民主義であるということは絶対にない。1840年のアヘン戦争以来、中国は約110年にわたり殖民主義の侵略を受けており、中華民族は殖民主義が人民にもたらす苦痛を知っており、これと戦わなければならないことも知っている。中国が長年にわたってアフリカの民族解放と振興を支援してきたのはこのためである。中国はアフリカ諸国との石油貿易を行っているが、これは公開、透明でまた正常かつ互恵的なものである。中国が2005年にアフリカから輸入した石油は一部大国の3分の1に満たない。ザンビア鉄道建設支援など、中国は自らが困難に状況にある時でもアフリカを支援してきた。経済が発展した今日、中国は古い友人を忘れることはない」。


参考-2: 2006年の約束

(1) 2006年版 アフリカに対する8項目の支援[15]

2006年11月5日(日)「しんぶん赤旗」

中国とアフリカ48カ国首脳会議
中国の援助策
【北京=菊池敏也】中国の胡錦濤国家主席が四日、中国・アフリカ協力フォーラム首脳会議で示したアフリカ援助の八項目は次の通りです。
(1)対アフリカ援助を拡大し、二〇〇九年の援助規模を〇六年比で二倍化
(2)今後三年間に三十億ドルの優遇借款と二十億ドルの優遇バイヤーズクレジットを供与
(3)五十億ドル規模の中国・アフリカ発展基金を設立
(4)アフリカ連合(AU)会議センター建設を援助
(5)重債務国・最貧国に対して〇五年に返済期限を迎えた政府無利子借款の債務を免除
(6)最貧国の対中輸出商品に対するゼロ関税品目を百九十から四百四十余りへ拡大
(7)今後三年間にアフリカに三―五カ所の海外経済貿易協力区を設立
(8)今後三年間に一万五千人の各種人材の養成をはじめ、農業・医療・教育分野での援助

参考-3: 2009年の約束

2009年版 アフリカに対する8項目の新支援 [16]

「温家宝総理、中国・アフリカ会議で演説: 今後3年で、中国・アフリカ協力推進のため8つの新措置を」

「今後3年で中国政府は、中国・アフリカ協力を推進するために8つの新措置を講じる」と述べ、以下を挙げた。
 (1)「中国・アフリカ気候変動対策パートナーシップ」を構築し、不定期の高官協議を実施し、衛星による気象観測、新エネルギーの開発と利用、砂漠化対策、都市環境の保護などの分野で協力を強化することを提唱する。中国は、太陽エネルギー、メタンガス、小型水力発電所など100件のクリーンエネルギー事業で、アフリカを支援することを決定した。
 (2) 科学技術協力を強化する。「中国・アフリカ科学技術パートナー計画」を始動し、合同科学技術研究モデル事業を100件実施し、アフリカからポストドクター100人を中国での科学研究に受け入れることを提唱する。
 (3) 100億ドルの特恵的借款を実施するなど、対アフリカ融資を強化する。中国の金融機関による10億ドルのアフリカ中小企業発展特定融資の設立を支持する。中国と国交を樹立しているアフリカの重債務国や後発発展途上国に対し、2009年末までに期限を迎えながら中国側に返済されてない政府無利子借款債務を免除する。
 (4) アフリカの生産品に対して市場開放を拡大する。中国と国交を樹立しているアフリカの後発発展途上国の95%の生産品に対する関税免除措置を段階的に実施する。まず2010年内に、60%の生産品に対して関税免除措置を実施する。
 (5) 農業協力を一層強化する。中国が支援するアフリカの農業モデルセンターを20カ所に増やし、農業技術チーム50組をアフリカに派遣し、農業技術者2000人をアフリカ諸国のために育成し、アフリカの食糧安全確保能力を高める。
 (6) 医療衛生協力を深める。病院とマラリア予防治療センター各30施設に5億元相当の医療設備や抗マラリア物資を提供し、医療要員3000人をアフリカのために育成する。
 (7) 人材開発や教育面の協力を強化する。アフリカ諸国のために、中国・アフリカ友好学校50校の建設を支援し、校長や教師1500人を育成する。アフリカ向け中国政府奨学金の定員を2012年までに5500人に増やす。今後3年で計2万人の人材をアフリカのために育成する。
 (8) 人・文化面の交流を拡大する。「中国・アフリカ共同研究交流計画」を始動し、学者やシンクタンクの交流や協力を促進し、発展のノウハウを共有することを提唱する。

2010/01/15

アルジェリアの東西高速道路建設工事

このエントリーでは、「国際的なビジネスを行っている日本の民間企業に対し、日本政府がどの程度支援すべきか」---という問題を考えてみます。

昨年末(2009/12)、日経新聞などが、アルジェリアで高速道路を建設している日本のジョイントベンチャーに関する記事を掲載しました。記事はあまりにも短く情報不足だったので、情報収集しました。

追記(2011/1/16):現場で働いている方のブログ「親方への道」が参考になります。


【 ニュース 】

日経新聞(2009/12/25) の記事 [1]

鹿島、海外大型工事に遅れ 損失発生は見通し示さず

鹿島の中村満義社長は24日、2010年に完成予定のアルジェリア東西高速道路建設工事について「約1年遅れており、(工期や支払い条件などの)変更を認めてもらうように発注者と交渉している」と述べた。
これによる損失発生の可能性については「(交渉で)努力している段階」とした。アルジェリアの高速道路工事は鹿島など5社のJVが2006年に約5400億円で工事を請け負った。当初は10年1月に完成する予定だった。


【 解説 】

1.基礎情報 [2]
アルジェリア高速道路公団は、チュニジア国境からモロッコ国境までの約1,200kmに、高速道路を建設する計画を立てた。工事は①東工区(399km)、②中工区(169km,部分的工事)、③西工区(350km)に分割され、入札に付された。(下図)

中国、米国、イタリアのJVも入札したが、日本JV(鹿島、大成建設、西松建設、ハザマ、伊藤忠商事)は入札額は最も高かったが、耐震設計技術などが評価されて、落札することができた。

(参考)事業概要
・総事業費=3410億D.A.(受注時のレートで約5400億円)
・工期は2006年9月~2010年1月 (40ヵ月)であったが、約1遅れている。
・工事が遅れている理由 (末尾参照)
①アルジェリア側の設計の問題
②資材調達・通関が困難
③脆い地質(粘土岩、マール(泥灰岩))
④悪天候
⑤テロ対策により爆薬の利用が制限される。

なお、中国のJVが請け負った中工区と西工区は予定通り2009年12月に完成している。[3]


高速道路地図 & 写真



3.本事業の意義

日本とアルジェリアの継続的関係に寄与する事業である。
・日本の企業が外貨を稼ぐ案件である。道路建設では最大級の案件。
・日本と中国の技術力を比較する案件である。
・この事業は建設後も人材育成をすることになり、日本とアルジェリアの関係が継続する。(末尾参照)


【 コメント 】

1.新聞社の責任

日経新聞の記事を読んだ時、「日本の建設会社は工期を守れないのか!」と唖然としたが、情報収集したところそれなりの理由があることを理解した。新聞社は、会社の評判や株価に影響を与える記事であればあるほど、きちんと説明する義務があると考える。

2.政治家の役割

欧米の政治家(それもトップレベルの政治家)は、自国の会社のために、各国を訪問している。なぜならば、ビジネスに係る多くの場合において、最終的な判断はホスト国の大統領や首相が判断を下すケースが多いからである。

アフリカではないが、最近の例としてあげるならば、原子力発電の売り込みのため、韓国の李明博大統領がアブダビを訪問している。(日立製作所とゼネラル・エレクトリックを中心とする日米企業連合は敗退した。日本の首脳は訪問していない。)

本件(アルジェリアでの道路工事の納期遅延問題)の場合も、政治的決着になる可能性があるので、日本の政府による政治的支援が欲しいところである。

民間のことは民間にまかせるべきである、という意見もあるが、政治家が自国の国益を考えるのは当然のことである。そもそも日本企業が国外で仕事ができるようにしたり、あるいは日本企業の利益が犯されないようにするのが、政治家の役割の1つである。これが「世界の常識」、「世界のやり方」なのである。


↓ クリックお願いします。↓
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ



【 参考資料 】

[1] 「鹿島、海外大型工事に遅れ 損失発生は見通し示さず」 日経新聞(2009/12/25)
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20091225AT1D240BP24122009.html

[2] 事業概要

①COJAAL アルジェリア東西高速道路建設工事(東工事)のWeb Page
http://www.cojaal-project.com/

②アルジェリア東西高速道路建設工事(東工区)石田 稔
http://dokokyo.or.jp/ce/ce0901/kensetukigyou.html

③アルジェリア現地ルポ(1~9) by 中川美帆 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20090427/532309/

④アルジェリア現地ルポ
もろい地山やテロと闘う日本勢 by 中川美帆
石田所長インタビュー
日経コンストラクション(2009/4/24)

[3] 「China-built expressway opens in Algeria」(人民日報, 2009/12/21)
http://english.people.com.cn/90001/90776/90883/6848142.html

[4] 西日本高速会社・石田孝会長/アフリカで人材養成へ/トレセン設置構想表明
日刊建設工業新聞(2009/12/11)



発注者との折衝は今年が勝負 [上記 2-④]

石田 稔氏(アルジェリア東西高速道路建設工事JV総合事務所総合所長)─インタビュー

発注者との交渉や資材調達の難しさなどで、不採算が懸念される海外の土木工事。日本の建設会社にとって久々のアルジェリアでのプロジェクトとなるこの工事はどうなのだろうか。

─工期に間に合うのか。

工事の進ちょく率は2月時点で40%ほど。予定より遅れている個所がある。40カ月の契約工期は本体工事だけの分で、ほかにインターチェンジの設置や光ケーブルの敷設など様々な追加工事がある。
工事の半分は40カ月で終えるようにする。残り半分は、我々だけでは解決できないアルジェリア特有の問題があるので、工期延長を求めていく。今年は、工事と発注者との折衝で勝負の年になる。

─アルジェリア特有の問題とは?

設計・施工の元になる図面が10年以上前のもので、正確さに欠けていたので、長さ400kmの航空測量から始めた。しかし、テロの危険があるからと、なかなか許可が下りない。ボーリング調査をするにも機械を集めるだけで苦労した。
工事が始まっても、発注者側の現場監理者が2008年10月まで不在で、権限のないアルジェリア人がその立場にいた。その間、我々にとっての意思決定者がいなかったが、仕事を進めないわけにはいかない。やり直し覚悟で進めた。追加変更はなかなか承認されず、工期を食った。

─自然条件も厳しい。

土工事は、少ない雨量ですぐできなくなる。特に2008年10月からは悪天候が続き、2009年1月~2月の稼働率は10%ほどだった。
トンネル工事は、すべり面にある膨張性地山を掘削する難工事だ。地山が変われば工法も変えないといけないことを発注者に分かってもらうのもひと苦労だった。

─資材は調達できるのか。

品不足の国で400km分の資材を調達するのは大変。特に火薬は、テロにつながる危険があるので、取り扱いに非常に敏感だ。
アスファルトとセメントもタイムリーに手に入らない。石油は出るが、ガスが多すぎてアスファルトに向かないので輸入している。しかも中工区と西工区を請け負う中国連合との取り合いだ。セメントは工場によって品質が異なり、良いものを確保するには200km離れた場所からでも持って来ないといけない。

─資材価格の変動の影響は。

セメントと燃料の価格は統制されているので、ほとんど一定。輸入している一般資材は、世界の動きに連動していて、鉄筋は2008年の4月~9月に40%ほど上がった。だが、インフレ率を補てんする、日本で言うエスカレーション条項が契約に入っている。

─追加変更分の代金はもらえるか。

どれだけ数量が増えるかで異なるが、ある程度は。ランプサム契約(固定価格での契約)ではなく単価契約なので、例えば1が10の量になれば代金は10倍になる。

─このプロジェクトが業績に与える影響は?

大きな影響はないとみている。数量がどれだけ増えて、工期がどこまで延びるかで多少の変動はあるが、リスクを回避しながら契約している。しかるべき利益を出していく。

─南に2本目の東西高速道路を造って、それを南北に結ぶ計画もある。この工事の受注も狙うのか。

発注者はニンジンをぶら下げて「次がある」と言う。我々は「契約を守ってくれないと、やらない」と言っている。適切な代金が支払われて、きちんとした仕様があることが大前提だ。将来はトルコを通って欧州諸国とつなぐ構想もある。このプロジェクトが先駆けになって、早く開通できるように貢献したい。

いしだ・みのる
1947年東京生まれ。69年鹿島入社。最初の海外赴任地はイラン。以後、東南アジアを中心に約35年間、海外で仕事をしている



アフリカで人材養成へ [上記 4]

西日本高速道路会社の石田孝会長は、9日に東京都内で行った記者会見で、「近い将来、高速道路の維持・管理業務を教えるトレーニングセンターをアフリカにつくり、現地人によるマネジメント、メンテナンスができるよう養成したい」との構想を明らかにした。同社は海外への事業展開の一環として、アルジェリアの東西高速道路建設工事の施工JVに職員を派遣しており、石田会長は「道路建設をサポートするだけでなく、ワーカーを育てるのも責務だ」との考えを示した。トレーニングセンターの具体的な設置時期や国・地域は決まっていないという。

石田会長は、先にアルジェリア東西高速道路建設工事の現場を訪問した感想を踏まえ、「メンテナンスの仕事は50年後もあり、そのころには現地の方にやってもらえるよう技術指導しなければならない」と指摘。今後、国際貢献の取り組みの中で訓練施設を設置する方針を示した。

石田会長によると、現在の高速道路計画だと、2020年以降、同社が新たに建設する道路は無くなる見通しで、「(同社が保有する)道路建設技術が陳腐化する恐れがある」と懸念を表明。その上で、「新しい技術でつくられた道路を維持・保全するには、それに対応したレベルの技術力が求められる。道路を必要とする国に技術的な支援をしたい」と述べ、技術レベルの維持と国際貢献の両面から今後、海外展開に積極的に取り組んでいく方針を示した。

アルジェリア東西高速道路工事は全長1200キロのうち東側の400キロを鹿島・大成建設・西松建設・ハザマ・伊藤忠JVが施工。契約工期は10年1月18日までの40カ月。

2010/01/11

ケニア の ストリートチルドレン

このエントリーでは、①ケニアのストリートチルドレンを支援されている松下照美さん、②この子供達を映画化した『チョコラ!』と監督の小林茂さんを紹介します。2009年5月から現在にいたるまで全国で自主上映されているのでご存じの方も多いと思います。「援助」を考える参考になると思います。


【 ニュース 】

徳島新聞(2010/1/9)の記事 [1]

ケニアに孤児施設着工 徳島市出身の松下さん、念願かなう

  ケニア中央部の地方都市ティカで貧しい子どもたちの自立支援に取り組んでいる徳島市出身の松下照美さん(64)が、現地で建設準備を進めてきた孤児施設「子どもたちの家」を着工させた。構想10年の念願の施設で、8月末に完成予定。建設費の約1000万円は、徳島をはじめ全国各地から募った善意の寄付金で賄われる。

「子どもたちの家」は鉄筋石造りの平屋約400平方メートル。入居時に15歳以下の子どもを受け入れる定員20人の孤児ホームで、地域住民に開放する集会交流スペースも設ける。
昨年12月3日に起工式を終え、現在、基礎工事に取り掛かっている。9月までに塗装が終わり、引っ越しの後、10月ごろから運営を始める。

松下さんは1999年、ティカを拠点に非政府組織(NGO)「モヨ・チルドレン・センター」を設立し、ストリートチルドレンを学校や地域に戻す取り組みを続けてきた。05年からは孤児院を運営し、現在は18歳以下の13人が暮らしている。

しかし、孤児院は借家で、物価の不安定なケニアでは家賃の高騰がセンターの活動に悪影響を与える恐れがある。さらに、ケニア政府から定員20人以上とするよう求められているため新たな施設が必要で、自前の孤児ホームは松下さんの念願だった。

ケニアでは空腹や寒さを忘れるためにシンナー中毒になる子どもたちが後を絶たない。日本に帰国するたびに、貧困の連鎖が続く現地の窮状を訴え、全国行脚をしながら建設資金を募ってきた。しかし、遠い異国の支援に思うような寄付が集まらず、松下さんは「何度もくじけそうになった」と振り返る。

追い風が吹いたのは昨年、センターの活動やティカの子どもたちの姿を追ったドキュメンタリー映画「チョコラ!」(小林茂監督)が公開されたこと。徳島など全国22都道府県で巡回上映と合わせたキャンペーンを繰り返し、約500万円の寄付金が集まった。これまでの建設資金の累計は約640万円となり、まだ資金繰りが必要ながらも着工に踏み切った。残りの費用は今年のキャンペーンでさらなる支援を求めていく。

松下さんは「本当に多くの人の協力を得てここまでたどりついだ。言葉にできないほど感謝している」と感慨深げに語った。

【写真説明】工事が進む「子どもたちの家」=ケニア・ティカ市(松下さん提供)

 
完成予想図


【 解説 】

●松下照美(てるみ)さんとは?

1945年:徳島県生まれ。
1967年:玉川大学文学部芸術科卒業。陶芸家
1992年:画家の伴侶を亡くし「心にポッカリ穴が開いた」。知人に誘われてアフリカに渡り路上の子どもたちと出会う。
1994年:小林茂監督と共にウガンダを訪れたときに出会ったアフリカの子どもたちに魅了され、現地でボランティア活動を続ける。
1999年:NGO「モヨ・チルドレン・センター」を設立。モヨとは、スワヒリ語で、心、魂、精神などを意味する。
2000年(?):脳梗塞で倒れ、手術。

現地の子どもたちからは親しみを込めて「テルミ」と呼ばれている。
子ども一人一人の性格や状況に合ったケアのあり方を柔軟に模索し続けている。[2]

NGO「モヨ・チルドレン・センター」を設立した経緯は <ここ> をクリック[3]




●『チョコラ!』とは?

小林茂監督、吉田泰三撮影のドキュメンタリー映画。
「チョコラ」の意味は、スワヒリ語で「拾う」。クズ拾いで暮らす子供をさげすむ言葉。
映画は、2006年6月~11月に撮影され、ビデオの長さは120時間。1年半かけて1時間34分に編集された。第13回長岡アジア映画祭(2008年9月)で公開され、2009年5月から日本各地で自主上演されている。詳細は公式サイト参照[4]。映画の解説、あらすじ、評価、公開情報、松下さんと小林監督のインタビュー動画などが掲載されている。

撮影のきっかけは、「松下さんから、アフリカの子供たちを撮って欲しいと言う話が来て、実は腎臓の悪い僕が透析に移行する直前で、松下さんも少し前に大病をしている。やるなら今しかないと思い、すぐに透析に移れるようバイパスの手術をして行きました。具体的なイメージは無かったけれど、子供たちの食べて寝てという日常をきちんと撮ろうと思って行ったんです。」[5] 

撮影方針は、「モヨの宣伝映画にしない事、松下さんを主役にしない事と言う約束で撮影した。」[5]


●小林茂監督とは?

1954年新潟県生まれ。同志社大学法学部卒。
ドキュメンタリー映画監督・カメラマン。

写真集
・「今日もせっせと生きている」(1981年/風媒社)
・「ぱんぱかぱん」(1985年/径書房)
・「グラフィックドキュメント・スモン」(1989年/日本評論社・共著)
・「トゥスビラ・希望一ウガンダに生まれた子供たち」(1996年/情報センター出版局)
※この時、松下照美さんと出会う。

ドキュメンタリー映画撮影作品
・「阿賀に生きる」(1992年/佐藤真監督) 
※日本映画撮影監督協会第一回JSC賞受賞。
・「農民とともに~佐久総合病院の50年~」(1995年/時枝俊江監督)
・「地域をつむぐ~佐久総合病院小海町診療所から~」(1996年/時枝俊江監督)

監督・撮影作品
・『放課後』(1997年に第1回監督・撮影作品)
・『こどものそら』(1997~2000年)
・『わたしの季節』(2004年。文化庁映画大賞や毎日映画コンクール記録文化映画賞などを受賞。)

・2009年5月8日には「チョコラ! アフリカの路上に生きる子どもたち」(岩波ブックレット)を出版。

2002年5月:脳梗塞
2006年6月~11月:ケニアで撮影。入退院を繰り返しながら編集する。

 


映画『チョコラ!』予告編 Chokora! (2分02秒)




【 コメント 】

私はまだ『チョコラ!』を観ていないのでコメントすることはできないので、小林監督コメントを紹介する。

先進国と呼ばれる国に住む私たちは、とかくアフリカの諸国に対して「援助」「支援」などという言葉を使いますが、私たちは決して彼らの見本としてあるべき国ではありません。なぜならば、彼らはああいう暮らしぶりをしていても決して自ら死のうとは思いません。しかし日本では日々子どもたちが自らの命を絶ち、東京の駅のホームでは毎日のように「~線で人身事故が…」というテロップが流れます。そして、そのことに対してすでに誰も驚きません。年間の自殺者は3万人とも言われています。そういった現実の中で、先進国と言いながら子どもたちが死ぬような状況をそのまま放置している国々を、ケニアの子どもたちの方が逆に心配しているのではないかとさえ思うようになったのです。そういう意味でこの映画は、わずかな期間ではありますが私が心の交流を図りながらも、いかに自分が傲慢な考え方で彼らにカメラを向けていたのか、という報告でもあります。」[5]


チョコラをマイナスに、ネガティブな感じで撮ろうと思えばいくらでも撮れますし、世界にはそういう子どもが数多くいるんだということに関連させる方法もあるかと思います。けれどもこの映画で言いたいのは、子どもたちの生命体の輝きを感じて欲しいということなのです。[5]


自分自身が地に足をつけてしっかりと生きる事ではないでしょうか。テレビ局とかで援助だと言ってアフリカに毛布を送ったりしますが、日本から送料を使ってわざわざそんな事をしなくても、品質は悪いかもしれないけれど、そのお金で向こうの毛布を買えば産業も成り立つわけです。ODA等日本の政府の援助も、援助と言いながら本当の援助になってなくて、日本の企業が援助した以上のお金を吸い上げる仕組みになっている。自分が自分の暮らしをちゃんとすればその矛盾に気が付くはずです。後、フェアトレードとかですね。[6]


↓ クリックお願いします。↓
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ


【 参考資料 】

[1] ケニアに孤児施設着工 徳島市出身の松下さん、念願かなう   (徳島新聞、2010/1/9)
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2010/01/2010_126300208494.html

その他松下照美さんを報じた徳島新聞記事のURLなど
2009/1/1:「ケニアを舞台にしたドキュメンタリー映画「チョコラ!」の製作に協力した
松下照美さん」
http://www.topics.or.jp/special/12254542636/2009/01/2009_123078690282.html
2009/5/8:「チョコラ!」徳島市で上映 ケニアの貧しい生活伝える映画
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2009/05/2009_124174677796.html
2009/7/12:力強いケニアの子たち 映画「チョコラ!」の上映開始
http://www.topics.or.jp/localNews/news/2009/07/2009_1247363442.html

松下照美さんのブログ http://teru.moyo.jp/
モヨ・チルドレン・センターを支える会 http://moyo.jp/


[2] 「映画『チョコラ!』全国公開 連動キャンペーン」より引用
http://www.chokora.jp/moyocampaign.html
[3] NGO「モヨ・チルドレン・センター」 http://moyo.jp/road.htm
[4] 『チョコラ!』公式サイト http://www.chokora.jp

[5] チョコラ! 特別先行試写&パネルディスカッション
小林茂監督との対話
明治学院大学国際平和研究所の勝俣誠教授とそのゼミ生7人
2009/4/18@明治学院大学
http://www.56press.com/choko0905/index.html
http://www.56press.com/choko0905/blank.html

[6] 映写室「チョコラ!」小林茂監督インタビュー(前編&後編)[B]
2009/5/29、聞き手は犬塚芳美さん
http://eiganotubo.blog31.fc2.com/blog-entry-172.html
http://eiganotubo.blog31.fc2.com/blog-date-200906.html


<ビデオ>

収録日:2009年5月8日
収録イベント:BS朝日
ビデオ名:映画「チョコラ!」BS朝日『週刊! しっかり見ナイト』
URL:http://www.youtube.com/watch?v=Rb38rPDZ4KY
ビデオ録画時間:4分48秒
備考:小林茂監督インタビュー


収録日:2009年5月9日
収録イベント:映画上映後
ビデオ名:映画「チョコラ!」松下照美トークショー ①②③④
URL:
http://www.youtube.com/watch?v=4O0B3K_bBo4
http://www.youtube.com/watch?v=L06cUJwmZDM
http://www.youtube.com/watch?v=RBkGQdSsB2w
http://www.youtube.com/watch?v=dupBzUUeAqc
ビデオ録画時間:全部で27分


収録日:2009年5月9日
収録イベント: テレビ埼玉
ビデオ名:映画「チョコラ!」テレビ埼玉『いのり・エネルギーの映画缶』
URL:http://www.youtube.com/watch?v=Af9YBERxj0E
ビデオ録画時間:9分30秒
備考:小林茂監督インタビュー


収録日:2009年5月13日
収録イベント:映画上映後
ビデオ名:映画「チョコラ!」吉田泰三+松下照美トーク ①②③
URL:http://www.youtube.com/watch?v=fTfoDNioS70
        http://www.youtube.com/watch?v=lwoRKHXVPxY
        http://www.youtube.com/watch?v=m55Dg1EajT0
ビデオ録画時間:約30分


収録日:2009年5月24日
収録イベント:映画上映後
ビデオ名:映画「チョコラ!」マエキタミヤコ+松下照美トーク ①②③
URL:http://www.youtube.com/watch?v=R8J9ZpJtPNc
      http://www.youtube.com/watch?v=C_Nvr8naulk
      http://www.youtube.com/watch?v=Tld24jkRXS8
ビデオ録画時間:約30分


収録日:2009年5月25日
収録イベント:NHK国際放送
ビデオ名:映画「チョコラ!」NHK World「Japan's 'Grandma' in Kenya」
URL:http://www.youtube.com/watch?v=-X25YamndFI
ビデオ録画時間:6分55秒
備考:松下さんインタビュー


収録日:2009年06月03日
収録イベント:日本テレビ
ビデオ名:NEWS ZERO: 映画「チョコラ!」ケニアを支援する女性の思い 
URL:http://www.youtube.com/watch?v=kI2e0rJh6D0
ビデオ録画時間:4分23秒


収録日:2009年6月12日
収録イベント:NHK BS
ビデオ名:映画「チョコラ!」NHK BS きょうの世界①②
URL: http://www.youtube.com/watch?v=zMIxNoVhmj0
http://www.youtube.com/watch?v=JDm-l96FQ1k
ビデオ録画時間:約17分
備考:松下さんインタビュー




2010/01/10

在外公館(アフリカ)のWeb Page評価

伊勢新聞が在マラウイ日本大使のインタビュー記事を掲載しました。一人でも多くの方にお読み頂くためこのブログに掲載させて頂きます。私は、大使のご発言の中で「経済的自立」「ビジネスチャンス」などの発言に注目しました。

私は、在外公館にはできるだけ多くの情報を発信して頂きたいし、インターネットを利用した情報発信が大切だと思います。現状を把握するため、在外公館のWEBページを独断で評価してみました。


【 ニュース 】

在マラウイ日本大使(野呂元良氏)のインタビュー記事 [1]

【東京】三重郡朝日町出身で昨年六月にマラウイに赴任した野呂元良特命全権大使(62)が一時帰国し、マラウイの現状や大使館の活動などについて本紙に語った。
マラウイは人口約千四百万人、国土は日本の約三分の一の一一・八万平方キロ。南アフリカに近いアフリカ南部に位置し、首都はリロングウェ。アフリカで三番目に大きいというマラウイ湖があり、そこに生息する淡水魚の種類は世界一。日本にも熱帯魚を輸出するなど自然豊かな国という。
赴任して約一年半。野呂大使は「今ガソリン不足に陥っており、車社会のため生活に影響が出ている。特に救急車や警察車両が動かないため、治安面があまり良くない」と話す。
とはいえ、「他のアフリカ諸国に比べマラウイは平和で安定している。人々もマイルドで温和。気候も確かに暑いが、日陰に入ると過ごしやすく、大使公邸は冷房要らず。真っ青な空に真っ白な雲、自然と人がいい国です」と良さを語る。一九七一(昭和四十六)年から派遣されている海外青年協力隊の累積隊員数は約千四百人に上り、世界一という。
大分県の「一村一品運動」をならった「オボップ」と呼ばれる取り組みもアフリカで初めて実施。農村の貧困対策の一環でコーヒーや紅茶、はちみつなど特産物の輸出を村おこしで進め、経済的自立につなげている。今ではザンビア、タンザニア、モザンビークなどから見学が相次ぎ、注目を集めているという。
野呂大使の重要な仕事の一つがムタリカ大統領と直接会い、政策提言すること。「やはり物事を動かすには大統領と直接話をし、理解してもらうのが一番」と言い、任務を終えた協力隊員への感謝状の発行やマラウイに日本協会をつくることなどを提言してきた。
日本では昨年末、行政刷新会議の事業仕分けで開発途上国援助のODA(政府開発援助)削減が議論に上るなどしており、アフリカ支援が国民全体の理解を得ているとは言い難い状況。
野呂大使は「アフリカは欧米諸国と違い、植民地など過去の問題はなく、日本外交のフロンティア。また潜在能力も高く、日本のビジネスにとっても新しいチャンスを生み出す場所だ」と重要性を強調する。そのため、アフリカの状況をもっと知ってほしいとする。「マザー・テレサの言葉にあるように、一番の敵はエイズでも核でも貧困でもなく、無関心。日本人一人一人がもっとアフリカのことを考えてほしい」。


【 コメント 】

外務省が公表している「在外公館長名簿」によると、2010年1月4日現在、アフリカには日本から28ヶ国に大使が赴任している[2]。また、外務省は「在外公館 Web Page」のリストを作成している[3]。

1.Web Pageの有無

28ヶ国の内、Web Pageがある国とない国は以下のとおりである。(末尾の「個別国のWeb Page」を参照)

●WEBページがない国 (11)
ウガンダ、ガーナ、ガボン、カメルーン、ギニア、コートジボワール(※)、ナイジェリア、マダガスカル、マラウイ、マリ、リビア
※コートジボワールは大使がブログで情報発信

●WEBページがある国 (17)
アルジェリア、アンゴラ、エジプト、エチオピア、ケニア、コンゴ民主共和国、ザンビア、ジンバブエ、スーダン、セネガル、タンザニア、チュニジア、ブルキナファソ、ボツワナ、南アフリカ共和国、モザンビーク、モロッコ
※アルジェリアは日本語だけ。


2.Web Pageの評価

新着情報の頻度、現地情報等を選考基準にして、トップ5(順不同)を選んでみたところ、アンゴラ、タンザニア、ブルキナファソ、ボツワナ、南アフリカを評価したい。読者の皆さんも評価して下さい。

アンゴラ:大使の挨拶のページ見当たらないが、文化情報・生活情報が充実している。
タンザニア:更新頻度が高く、大使執筆コラムが掲載されている。
ブルキナファソ:「お客様第一」のスタイルである。
ボツワナ:情報量が多い。
南アフリカ:情報量が多い。


3.特記事項

ブルキナファソ(杉浦勉大使)、ボツワナ(松山良一大使)は民間(商社)出身である[4]。

番外として、コートジボワールの岡村善文大使のブログを評価する[5]。(本ブログの推薦HPとして掲載中でもページ右側においてリンクさせて頂いている。)同国は、投資を求めているので[6]、日本大使館もWeb Pageを作って、日本企業を誘致して欲しい。

Web Pageがない大使館の内、以下の国からの情報発信は重要であると考える。大使館の人員不足などの要因はあると思うが、JICA[7]、JETRO[8]、商社から情報を得て、本省にWeb Page作りを手伝ってもらうこともできると思う。
・ウガンダ:石油が発見され、経済的に飛躍する可能性が大きい。
・ナイジェリア:ナイジェリアの動向は世界経済に影響があるし、投資機会がある。[9]
・リビア:投資機会がある。[10]

他国の状況を確認するため、在リビア英国大使館[11]と 在リビア米国大使館[12]にアクセスしてみたところ、自国の企業向けに多くの投資情報を提供してことが分かった。日本の大使館も頑張って欲しい。



【 参考資料 】

[1]「もっとアフリカに関心を」 朝日町出身の野呂大使 マラウイの現状語る
(2010/01/08 伊勢新聞)
http://www.isenp.co.jp/news/20100108/news08.htm
[2]在外公館長名簿
http://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/zaigai/meibo/list.html
[3]「在外公館 Web Page」
http://www.mofa.go.jp/mofaj/Link/zaigai/index.html
[4]韓国のアフリカ政策
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2009/12/blog-post_13.html
[5]岡村善文大使のブログ
http://blog.goo.ne.jp/zoge1
[6]なぜ日本企業はアフリカへの投資に熱心でないのか?
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2009/11/blog-post.html
[7]JICA
http://www.jica.go.jp/about/structure/organization/oversea/africa.html
[8]JETRO
http://www.jetro.go.jp/world/africa/
[9]ナイジェリアの民事事件をオランダの裁判所が裁く
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2010/01/blog-post.html
[10]リビア Energy Cities 建設計画
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2010/01/energy-cities.html
[11]在リビア米国大使館
http://libya.usembassy.gov/doing_business_in_libya.html
[12]在リビア英国大使館
http://ukinlibya.fco.gov.uk/en/doing-business/help-for-uk-companies/



個別国のWeb Pageリスト
(国名、在外公館のURL、言語 の順番)


1. アルジェリア
http://www.dz.emb-japan.go.jp/
日本語のみ(フランス語は「工事中」)

2. アンゴラ
http://www.angola.emb-japan.go.jp/index.htm
日本語、ポルトガル語

3. ウガンダ
無し

4. エジプト
http://www.eg.emb-japan.go.jp/j/index.htm
日本語、英語、アラビア語

5. エチオピア
http://www.et.emb-japan.go.jp/index_j.htm
日本語、英語、アラビア語

6. ガーナ
無し

7. ガボン
無し(本省が住所と開館情報などを掲載)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/link/zaigai/country/gabon.html

8. カメルーン
無し

9. ギニア
無し(本省が住所と開館情報などを掲載)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/link/zaigai/country/guinea.html

10. ケニア
http://www.ke.emb-japan.go.jp/j-index.html
日本語、英語

11. コートジボワール
無し(ただし大使がブログで情報発信)

12. コンゴ民主共和国
http://www.rdc.emb-japan.go.jp/
日本語、フランス語

13. ザンビア
http://www.zm.emb-japan.go.jp/ja/index_j.html
日本語、英語

14. ジンバブエ
http://www.zw.emb-japan.go.jp/japn_home.html
日本語、英語

15. スーダン
http://www.sdn.emb-japan.go.jp/index_j_new.html
日本、英語、アラビア語

16. セネガル
http://www.sn.emb-japan.go.jp/
日本語、英語

17. タンザニア
http://www.tz.emb-japan.go.jp/index_j.html
日本語、英語

18. チュニジア
http://www.tn.emb-japan.go.jp/jp/index.html
日本語、英語

19. ナイジェリア
無し

20. ブルキナファソ
http://www.bf.emb-japan.go.jp/
日本語、フランス語

21. ボツワナ
http://www.botswana.emb-japan.go.jp/
日本語、英語

22. マダガスカル
無し(本省が住所と開館情報などを掲載)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/link/zaigai/country/madagascar.html

23. マラウイ
無し(本省が住所と開館情報などを掲載)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/link/zaigai/country/malawi.html

24. マリ
無し(本省が住所と開館情報などを掲載)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/link/zaigai/country/mali.html

25. 南アフリカ共和国
http://www.za.emb-japan.go.jp/index_jp.html
日本語、英語

26. モザンビーク
http://www.mz.emb-japan.go.jp/
日本語、ポルトガル語

27. モロッコ
http://www.ma.emb-japan.go.jp/index_j.htm
日本語、フランス語、アラビア語

28. リビア
無し


↓ クリックお願いします。↓
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ

2010/01/07

リビア Energy Cities 建設計画

リビアで、新しい都市(Energy Cities)を2つ建設することが決定しました。都市建設に関して全て需要(物とサービス)が発生します。たとえば、事務所、住宅、病院、学校、水処理施設、石油化学プラント、道路、電力設備、通信設備などです。ビジネスチャンスです。


【 ニュース 】

1.2009年10月、リビアの経済社会開発基金(Economic and Social Development Fund)は2つの都市を建設 することを最終決定したと発表した。[1]

地中海沿岸に建設される都市は、Ras Lanuf とal Brega と呼ばれる。事業期間は 2010年~2024年、総事業費は548億ドル(5兆円)である。(図1, 表1&2) 。[2]

2.2009年12月、積水化学工業はリビアに進出すると発表した[3]。日本の製造業として初めてのケースである。(写真1)

図1:地図




【 解説 】

1.Energy Citiesについて [4]

2007年7月、リビア経済社会開発基金(ESDF)は、米国のFluor Corporationに対し、マスタープランを描くよう要請した。
2008年2月、ESDFは、Gulf Finance House (ドバイの投資銀行でロンドン証券取引所に上場)との間でEnergy City Libya開発のMOUを締結し、資金調達の目途をつけた。
2009年7月、マスタープランの最終計画が承認された。
2009年10月、2都市の開発が正式に公表された。
新しい都市ができることにより、約12万人の人口を吸収でき、32,000の雇用が確保できる。2つの都市の間(Al Egaila)にはリゾートタウンを建設する。


2.積水化学工業のリビア進出について
樹脂製の水道管を生産・販売するため、事業会社「リビア エスロン」を現地メーカーと合弁で設立する。資本金は1,200万ドル(約11億7600万円)で、積水化学工業が60%、現地メーカー(リビア・アフリカ投資ファンド傘下の国営企業)が40%出資する。生産能力は年産6,000トン。従業員は約100人。2010年に生産を始め、2013年度に30億円の売上を目指す。[5]




【 コメント 】

リビアには経済が「離陸」するための条件が整っている。これは25年前のアラブ首長国連邦の首都アブダビと同じ状況である。
・ 巨額の石油収入がある。
・ インフラ設備を必要としている。
・ 人口が多くない。
・ 強力なリーダーがいる。

ただし、ビジネスチャンスにはリスクがつきものであり、リビアも例外ではない。
・法律や裁判制度が未整備である。
・統治者の考え次第で、投資環境が変化する可能性がある。
・失業率が高いため、リビア人を雇用することが求められる。ジョイントベンチャーを組む場合は、マネージャー職をリビア人にすることが求められている。

リビアに進出する際は、頭の切り替えが必要である。先進国においては、外国企業は地元企業と差別されることなく経済活動ができる。しかし、リビアにおいては、「リビアは江戸時代の領主であり、外国企業は庭師である」と覚悟しておいたほうが無難である。基本的には、外国企業はコントラクターであり、大きな利益を得ることはできないのである。

既に前例がある。リビアには外国の石油会社が進出しているが、油価が高騰した時期に、リビアは石油会社の取り分を制限した。要するに、リビアの立場で考えると、「自分の領土から産出された石油は基本的にはリビアのものであり、油価の高騰による恩恵はリビアが受け取る。」という認識なのである。

リビアが求めているのは、基本的には、外国の技術移転と雇用であるので、それを提供できるのであれば、薄利かもしれないが長期にわたりビジネスができるはずである。

日本とリビアとの関係については、石油開発会社を除き、日本企業はほとんどリビアに関心がなかったし、リビアも日本のことは眼中になかった。しかし、昨年12月にカダフィは明治大学の学生とサテライト対話をしたが、カダフィは日本に目を向けたと思われるし、サテライト対話がリビアで放映されたことで、一般国民も日本を身近に感じたと考えられる。日本企業のリビアへの投資環境は上向いていると考えられる。

7大総合商社の内、リビアに事務所を構えているのは、三菱商事、三井物産、丸紅、双日の4社であるが、積水化学工業に続いて日本企業が誘致されることを期待する。

The early bird catches the worm !


【 参考資料 】

[1]「Libya to Launch Mega-Billion Energy Cities」(Petroleum Africa、2009/10/20)
http://petroleumafrica.com/read_article.php?NID=8500
[2] Energy Cities Master Plan の説明用HP
http://www.energycitiesmasterplan.com/
[3]同社プレスリリース(2009/12/17)
http://www.sekisui.co.jp/news/2009/1196641_2241.html
[4]「Libya to Launch Mega-Billion Energy Cities」(Petroleum Africa、2009/10/20)
http://petroleumafrica.com/read_article.php?NID=8500
[5] 日経産業新聞、化学工業日報、日刊工業新聞より


過去のリビアに関するエントリー:
①小池百合子議員、カダフィと面談する
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2009/11/blog-post_22.html
②カダフィ大佐と明治大学学生とのサテライト対話集会
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2009/12/blog-post_15.html


ビデオ
Energy Cities Master Plan の説明用HPに入り、左側にある Project Video をクリック
http://www.energycitiesmasterplan.com/














その他のビデオ

New Construction Projects Libya - Part 1
http://www.youtube.com/watch?v=0ZA5ml5NB7I

New Construction Projects Libya - Part 2
http://www.youtube.com/watch?v=bu8cq-ydP4Y&feature=related

New Construction Projects Libya - Part 3
http://www.youtube.com/watch?v=Yh3KhNetDmo

New Construction Projects Libya - Part 4
http://www.youtube.com/watch?v=ikX2Xq72DII&feature=related



↓ クリックお願いします。↓
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ

2010/01/02

ナイジェリアの民事事件をオランダの裁判所が裁く

このエントリーは、ナイジェリアの土壌汚染の続報です。油汚染土壌の技術を持っている日本企業とそのビジネスをコーディネートできる商社の方にお読み頂ければ幸いです。


【 ニュース 】

① 2009年12月3日、ナイジェリアの農民とNGO (Friends of the Earth)は、RD/Shell本社を被告として、オランダ・ヘーグの民事裁判所(civil court)に提訴した。請求の原因は、Shellのナイジェリア子会社が農地を油汚染したというもの。(2005年6月に漏油事故が発生し約400bblが漏れたが、ShellのP/L補修が遅れた。)

②2009年12月30日、ヘーグの民事裁判所は、事件がナイジェリアで発生しているが(Shellの本社はオランダにあるので)、裁判管轄権を有する、と判断した。民事裁判は2010年2月10日から開始される。[1]


【 解説 】

1.原告と被告の主張 [2]
(1)原告の主張
・Shellとナイジェリアの子会社は密接に関係しており、環境問題についてはShellの本社が決定している。
・油汚染は、P/L(地下に埋設)が腐食していたため。
・Shellが当該P/Lを修復するまで12日間かかった。
・ニジェールデルタのOruma村で汚染が発生し、魚養殖池、農地、山林を汚染された。

(2)被告(Shell)の主張(予想)
・ナイジェリアで発生した問題の裁判権は、ナイジェリアの裁判所に限定されるべき。
・油汚染は「盗油」が原因となって発生している。地元住民は、Shellの作業員がP/Lの修復のために現場に行くことを妨害した。
・RD/Shellと操業会社(Shell Petroleum Development Corporation)は別会社である。RD/Shellは、操業会社の株式の30%を保有しているが、大株主はNNPC(ナイジェリア国営石油会社)である。


2.その他情報
・盗油の犯人は、闇市場で換金している。仕事が欲しい地元民は、故意にP/Lを破損させ、石油会社に除去の作業費用を要求したり、P/L警備の仕事を要求することがある。
・一説によると、ナイジェリアの生産量(200万b/d)の10%は「盗油」あるいはその後の漏洩でなくなっている。[3]
・現在、ナイジェリア国内でShellを原告とした民事訴訟は500件以上ある。[4]


3.Shellの動向
Shellはナイジェリアの陸上鉱区の権益を売却する予定。[5]
・売却想定価格 5,000百万ドル(4,500億円)
・売却理由(想定)は、①イラクの投資(油田開発)が多くなることと、②ナイジェリアの政治が不安定であり、石油契約が改定されそうであること。
・売却対象鉱区は、生産中の油田、既発見未開発油田、反政府軍から攻撃されたため生産を中止している油田がある陸上10鉱区鉱区。沖合い油田は、含まれない。これは攻撃されにくいことと、石油契約条件が緩やかなため。
・鉱区権益の一部ファームアウトして一部を保有するのか、あるいは鉱区の全部の権益を売却するのかは不明。



【 コメント 】

・シェルは和解をするのか、裁判で争うのかに注目したい。いずれにしても、土壌は汚染されているので、油汚染土壌改良工事にビジネスチャンスあり。
・日本の石油上流企業がナイジェリア陸上鉱区の権益を取得する可能性は小さいと思うが、ファームイン場合は、油汚濁汚染に係る費用を負担させられないような譲渡契約に盛り込む必要がある。


【 参考資料 】

[1] 「Dutch court takes on Shell Nigeria case」(Upstream, 2009/12/30)
「Nigeria Shell oil spills to be tried at Dutch court」(BBC, 2009/12/30)
[2]「Farmers sue Shell over oil spills in Niger Delta」(Independent, 2009/12/3)
[3]「Nigerian villagers seek to sue Shell over oil leak」(Forbes, 2009/12/3)
[4]「Nigerians demand action against Shell」(Morning Star, 2009/12/3)
[5]「Shell plans $5 billion sale of assets in Nigeria: report」(Reuters, 2009/12/20)
「Shell to Sell Nigerian Onshore Blocks」(International Oil Daily, 2009/12/22)

その他情報

<「シェル」社が和解金支払い>ナイジェリアの活動家ケン・サロ=ウィワの処刑をめぐる歴史的な裁判で(どこへ行く、日本。(政治に無関心な国民は愚かな政治家に支配される)、2009/6/11) 


↓ クリックお願いします。↓
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ

2010/01/01

CSR : 企業のアフリカ支援

読者の皆様、明けまして おめでとうございます。

ブログを開始してまだ3ヶ月半ですが、Flag Counter(画面右下)を見ると、27ヶ国から500名以上の方にアクセスして頂いたことがわかります。(中国はこのブログサービス(Blogger)をアクセス禁止にしているようです。) ありがたいことにリピーターも増えております。2010年もご訪問頂きますよう、よろしくお願いします。

さて、正月ということもあり、嬉しい事例を紹介するため、日本の企業がアフリカのために、どのようなCSR活動(Corporate Social Responsibility: 企業の社会的責任)をしているのか調べてみました。下のリストに掲載されていない企業がある場合は、恐縮ですがコメント欄に記入して下さい。後日、検索してこのブログに来られた方に役立つと思います。

----------------------------------------------------

1.イニシアチブをとって実施しているケース
(順不同)

●会社名:住友化学
活動:
①マラリア撲滅:http://www.olyset-net.jp/activity/index.html
②教育支援:http://www.sumitomo-chem.co.jp/csr/africa/education.html
※ワールド・ビジョンへの特別支援プロジェクト
http://www.worldvision.jp/support/corporate/index.html?link_id=m0008


●会社名:阪神酒販
活動:Water for Smile
http://www.hanshinshuhan.co.jp/products/wfs/
http://www.worldvision.jp/support/corporate/index.html?link_id=m0008
※ワールド・ビジョンとのタイアップ企画プロジェクト


●会社名:住友化学、NEC、ノベル
活動:中古パソコン寄付
http://www.sumitomo-chem.co.jp/csr/africa/topics/news20090223.html


●会社名:NEC
活動:デジタル技術提供
http://www.nec.co.jp/csr/ja/report2008/contribution/con01.html


●会社名:ユニクロ
活動:全商品リサイクル運動
http://www.uniqlo.com/jp/csr/recycle/index.html


●会社名:コマツ
活動:対人地雷除去機
http://www.komatsu.co.jp/CompanyInfo/csr/2008/pdf/20.pdf


●会社名:日立建機
活動:対人地雷除去機
http://www.hitachi-kenki.co.jp/company/csr/contribution/mine/index.html


●会社名:三菱商事
活動:アフリカ基金によるさまざまな活動支援
・セネガル:産科医院を開設
・チュニジア:バルドー博物館への車両寄贈
・ケニア:森林再生実験プロジェクト
・モロッコ:救急車寄贈
・アルジェリア:知的障がい者職業訓練施設へ印刷機を寄贈
・チュニジア:バルドー美術館に今後5年間必要資機材を寄贈
・タンザニア:自然保護区ゲート資料館改修プロジェクト
・コートジボワール:国立児童図書室の修復を支援
・エジプト:児童保護施設設置プロジェクト開始
・モザンビーク:安全な水供給・公衆衛生教育事業への支援
・南アフリカ:ピースパークス財団(PPF)への支援
・アースウォッチによるアフリカン フェローシップ プログラム支援
・エチオピア:太陽光発電による無電化農村支援
http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/contribution/activities.html
http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/csr/report/international.html
http://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2009/html/0000009234.html

●会社名:住友信託銀行、住友化学、三井住友海上、住友生命
活動:小学校校舎修築・建設などのための寄付。
http://www.sumitomotrust.co.jp/csr/brand/withyou/support_africa.html


●会社名:三井物産
活動:
・赤道ギニア:LNGプロジェクトでの雇用創出
・エチオピア:ゴンダール市日本館の給水施設建設への資金協力
・モザンビーク:灌漑用水ポンプ設備を建設
http://www.mitsui.co.jp/csr/contribution/area/ME/index.html
http://www.mitsui.co.jp/release/2009/1190032_3576.html


●会社名:京セラ
活動:ウガンダ:学校施設への太陽光発電システム寄贈
http://www.kyocera.co.jp/news/2009/1004_msky.html


●会社名:オカモト
活動:ガーナ:コンドーム約81万個を寄贈
http://www.okamoto-inc.jp/news/20080402.html
※ジョイセフ(家族計画国際協力財団)と協力


●会社名:ソニー
活動:サッカー観戦
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/csr/ForTheNextGeneration/contentslist/dreamgoal2010/

----------------------------------------------------

2.NGO・NPOが実施する活動を支援をするケース
(順不同)

●プロジェクト名:Table for Two(学校給食)
プロジェクト:http://www.tablefor2.org/jp/index_jp.html
参加企業:http://www.tablefor2.org/jp/support_members_jp.html


●プロジェクト名:Smile Africa Project (シューズ再利用)
プロジェクト:http://www.sotokoto.net/smileafrica/
参加企業:http://www.sotokoto.net/smileafrica/program/supporter.html


●プロジェクト名:1L for 10L(井戸掘り)
プロジェクト:http://www.unicef.or.jp/partner/event/volvic/index.html
参加企業:
http://www.volvic.co.jp/1Lfor10L/
http://jp.sanyo.com/corporate/message/aqua/


●プロジェクト名:チャイルド・スポンサー
プロジェクトURL:http://www.worldvision.jp/
参加企業:http://www.worldvision.jp/support/corporate/index.html?link_id=m0008


●プロジェクト名:JICA and Sony For the Next Generation in Ghana(HIV/AIDS教育促進)
http://www.jica.go.jp/press/2009/20090717_01.html
参加企業:JICA、Sony
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/200907/09-0717/

JICA and Sony For the Next Generation in Ghana 
(画面を2回クリックして、YouTubeでご覧下さい。さすがSony、画質が素晴らしい。2分46秒)




【 コメント 】

ネット上にはCSRデータベースが存在するが[1]、活動内容で分類されているサイトは見つからなかったので、「日本の企業はアフリカに対し、どの程度の社会貢献をしているのか?」という情報はすぐには分からない。CSRのデータベースを扱っているサイト、JICAあるいは経団連などが、データベースを整理してくれることを期待する。

企業の社会的責任を考える場合、「何かをする責任」と「何かをしない責任」という切り口があると考える。例えば、汚職や買収をしない責任、武器を輸出しない責任などは、「何かをしない責任」の範疇だが、それも立派なCSRだと考える。

過去のエントリー「Dr.Jeffery Sachs と 国際援助」で書いたが、Sachs教授は、「企業は自分が得意とする技術やノーハウを提供する(寄付する)。単にお金を寄付するのではなく、相乗効果(multiplier effect)があるものを提供する。日本にはいろいろな技術があるので、企業一社、一社が持ち寄り、貧困層に届くようにすればよい。」と助言していた。日本の企業は概ね彼の助言に沿った活動をしていると思われる。


【 参考資料 】

[1]CSRのデータベース
CanPan 日本財団公益コミュニティサイト
社会貢献.net
エコほっとライン

その他参考資料

CSR Africa
アフリカと共に ‐進出日系企業のCSR活動‐ (JETRO, 2007年9月8日)
藤井敏彦の「CSRの本質」
「日本企業はアフリカにどう向き合う?」 (2008年2月4日)

↓ クリックお願いします。↓
にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ人気ブログランキングへ