2010/01/02

ナイジェリアの民事事件をオランダの裁判所が裁く

このエントリーは、ナイジェリアの土壌汚染の続報です。油汚染土壌の技術を持っている日本企業とそのビジネスをコーディネートできる商社の方にお読み頂ければ幸いです。


【 ニュース 】

① 2009年12月3日、ナイジェリアの農民とNGO (Friends of the Earth)は、RD/Shell本社を被告として、オランダ・ヘーグの民事裁判所(civil court)に提訴した。請求の原因は、Shellのナイジェリア子会社が農地を油汚染したというもの。(2005年6月に漏油事故が発生し約400bblが漏れたが、ShellのP/L補修が遅れた。)

②2009年12月30日、ヘーグの民事裁判所は、事件がナイジェリアで発生しているが(Shellの本社はオランダにあるので)、裁判管轄権を有する、と判断した。民事裁判は2010年2月10日から開始される。[1]


【 解説 】

1.原告と被告の主張 [2]
(1)原告の主張
・Shellとナイジェリアの子会社は密接に関係しており、環境問題についてはShellの本社が決定している。
・油汚染は、P/L(地下に埋設)が腐食していたため。
・Shellが当該P/Lを修復するまで12日間かかった。
・ニジェールデルタのOruma村で汚染が発生し、魚養殖池、農地、山林を汚染された。

(2)被告(Shell)の主張(予想)
・ナイジェリアで発生した問題の裁判権は、ナイジェリアの裁判所に限定されるべき。
・油汚染は「盗油」が原因となって発生している。地元住民は、Shellの作業員がP/Lの修復のために現場に行くことを妨害した。
・RD/Shellと操業会社(Shell Petroleum Development Corporation)は別会社である。RD/Shellは、操業会社の株式の30%を保有しているが、大株主はNNPC(ナイジェリア国営石油会社)である。


2.その他情報
・盗油の犯人は、闇市場で換金している。仕事が欲しい地元民は、故意にP/Lを破損させ、石油会社に除去の作業費用を要求したり、P/L警備の仕事を要求することがある。
・一説によると、ナイジェリアの生産量(200万b/d)の10%は「盗油」あるいはその後の漏洩でなくなっている。[3]
・現在、ナイジェリア国内でShellを原告とした民事訴訟は500件以上ある。[4]


3.Shellの動向
Shellはナイジェリアの陸上鉱区の権益を売却する予定。[5]
・売却想定価格 5,000百万ドル(4,500億円)
・売却理由(想定)は、①イラクの投資(油田開発)が多くなることと、②ナイジェリアの政治が不安定であり、石油契約が改定されそうであること。
・売却対象鉱区は、生産中の油田、既発見未開発油田、反政府軍から攻撃されたため生産を中止している油田がある陸上10鉱区鉱区。沖合い油田は、含まれない。これは攻撃されにくいことと、石油契約条件が緩やかなため。
・鉱区権益の一部ファームアウトして一部を保有するのか、あるいは鉱区の全部の権益を売却するのかは不明。



【 コメント 】

・シェルは和解をするのか、裁判で争うのかに注目したい。いずれにしても、土壌は汚染されているので、油汚染土壌改良工事にビジネスチャンスあり。
・日本の石油上流企業がナイジェリア陸上鉱区の権益を取得する可能性は小さいと思うが、ファームイン場合は、油汚濁汚染に係る費用を負担させられないような譲渡契約に盛り込む必要がある。


【 参考資料 】

[1] 「Dutch court takes on Shell Nigeria case」(Upstream, 2009/12/30)
「Nigeria Shell oil spills to be tried at Dutch court」(BBC, 2009/12/30)
[2]「Farmers sue Shell over oil spills in Niger Delta」(Independent, 2009/12/3)
[3]「Nigerian villagers seek to sue Shell over oil leak」(Forbes, 2009/12/3)
[4]「Nigerians demand action against Shell」(Morning Star, 2009/12/3)
[5]「Shell plans $5 billion sale of assets in Nigeria: report」(Reuters, 2009/12/20)
「Shell to Sell Nigerian Onshore Blocks」(International Oil Daily, 2009/12/22)

その他情報

<「シェル」社が和解金支払い>ナイジェリアの活動家ケン・サロ=ウィワの処刑をめぐる歴史的な裁判で(どこへ行く、日本。(政治に無関心な国民は愚かな政治家に支配される)、2009/6/11) 


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