2009/11/29

Climate Justice (気候正義)

2009年12月7日から18日にかけて、コペンハーゲンでCOP15が開催され、京都議定書に定められていない2013年以降の地球温暖化対策について話し合われます。このエントリーでは、アフリカ諸国のCOP15対応 と コフィー・アナン前国連事務総長のClimate Justice (気候正義)運動を紹介します。

■ ニュース ■

日経新聞[1] を引用します。
気候変動作業部会、アフリカがボイコット 発言力強化狙う?

スペインのバルセロナで開かれている気候変動枠組み条約作業部会で2日、アフリカ諸国が会議への参加をボイコットし、同日夜には一部の会合が開けない事態になった。AP通信などが伝えた。アフリカ諸国は先進国による温暖化ガス排出削減の上積みなどを求めているという。年末の合意を目指すポスト京都交渉で、先進国と途上国の溝の深さが改めて浮き彫りになった。

コンゴの代表はボイコットの理由について「アフリカ以外の交渉グループは(排出削減問題を)真剣に検討していない」などと語った。アフリカは気候変動によって最も被害を受けやすい地域とされる。

途上国は中国をリーダーとして交渉にのぞんできた。ただ交渉が進み新議定書案が具体化するのにあわせ、途上国グループの中でも利害対立が発生しつつある。アフリカ諸国は独自の主張を強めつつあり、今回のボイコットもアフリカの存在感を示し、発言力の強化を狙ったとみられる。
(パリ=古谷茂久)(07:00)


■ 解説 ■

国連気候変動バルセロナ会議(11月2日~6日)は、COP15に向けた最後の交渉機会であり、2つの作業部会(Working Group)がある。[2]
①「長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)」---Ad Hoc Working Group on Long-term Cooperative Action under the Convention (AWG-LCA)
この作業部会では、共有のビジョン、緩和、適応、資金、技術、キャパシティ・ビルディング(人材育成)について議論する。
②「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)」---Ad Hoc Working Group on Further Commitments for Annex I Parties under the Kyoto Protocol (AWG-KP)
京都議定書の附属書B には温室効果ガス削減義務を負う先進国のリストと各国の削減目標値が掲載されており、この作業部会では、この改訂について議論する。

アフリカ諸国がボイコットしたのはAWG-KPだが、彼らは、附属書Ⅰ国(先進国)が十分な削減目標を設定しない限り他の分野での議論を拒否するとの態度を示した。具体的には、1990年を基準年として2020年までに最低でも40%を削減すべきである、というものである。[3]

鳩山首相が2009年9月22日に、国連・気候変動首脳会合で発表したのは、「2020年までに1990年比25%削減」[4]であるので、アフリカ諸国は先進国に対し如何に高いハードルを主張しているかが分かる。[5]


■ コメント ■

環境問題をめぐる対立関係を大きく分類すると3つの図式(次元)になっているのではないだろうか。COP15では違った次元のものが議論されるので、合意形成は非常に困難であると考える。

①先進国 vs. 先進国
②先進国 vs. 発展途上国のうち中国・インド等
③後発開発途上国(Least developed countries) vs. その他

先進国各国は、負担をできるだけ低くすることを主張する。中国やインドも同様だがそれに加え、経済発展するために将来にわたり排出する権利を確保しながら、先進国から資金を受け取りたいと主張する。そして後発開発途上国は、経済発展とは程遠い現状にあり、「生きる」ための援助を求めている。

前国連事務総長コフィー・アナン氏は、「Climate Justice(気候正義)」という概念[6]を積極的に主張しているが、これは貧困の問題と密接に結びついている。 アナン氏は次のように発言している[7]。 「For it is a tragic irony that the countries which have done least to cause climate change are those which are suffering and will suffer most from its impact. (気候変動に最も関係していなかった国々が、いま一番苦しんでおり、今後最大の影響を受けるというのは、悲しい皮肉である。) 」

アナン氏は、音楽を通して地球温暖化対策を訴えている[8]。

<ビデオ>Beds Are Burning - TckTckTck Campaign (time4climatejustice)



■ 参考資料 ■

[1] 「気候変動作業部会、アフリカがボイコット 発言力強化狙う?」(日経新聞、2009/11/4)
[2]「国連気候変動枠組条約交渉  バルセロナ会合:議論の概要」 (外務省、2009/11/6)
(AWG-LCA) 
(AWG-KP)
国連気候変動バルセロナ会議報告(WWF、2009/11/19)

[3] ボイコットに関する報道
「African nations resume talks in Barcelona」(COP15のHP、2009/11/4)
「Rich countries call on African bloc to keep climate talks on track」(Guardian、2009/11/4)
「Rich-poor divide obstructing negotiations」(COP15のHP、2009/11/5)

[4]「鳩山国連演説『25%削減』の舞台裏」 (日経ビジネス、2009/11/24&25)★お勧めの記事です。

[5]Countries' negotiating positions (各国の交渉スタンス) Guardian紙作成 

[6] Climate Justiceという用語が最初に使われたのは、『Greenhouse Gangsters vs. Climate Justice』by Kenny Bruno, Joshua Karliner & China Brotsky, CorpWatch November 1st, 1999 ではないかと思われる。

[7]“From Kyoto to Copenhagen”- Address at the opening of the Global Editors' Forum アナン氏スピーチ

[8]音楽で意思表示を。地球温暖化対策を訴える「Beds Are Burning」無料配信中(Livedoorニュース、 2009/10/20)

図: 世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較(2006年) (画像をクリックすると拡大)












出典:全国地球温暖化防止活動推進センター (http://www.jccca.org/)

続報あり:2009/12/23、COP15 コペンハーゲン協定
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2009/12/cop15.html

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2009/11/27

東アフリカ共同体 が 「共同市場」 をつくる

■ ニュース ■

2009年11月20日、「東アフリカ共同体」(East Africa Community:EAC) に加盟しているケニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、タンザニアの各大統領は、『東アフリカ共同体共同市場の創設に係る議定書』(Protocol for the Establishment of the East African Community Common Market)[1] に調印した[2]。




■ 解説 ■

1999年11月30日、東アフリカ共同体創設のための条約(Treaty for the Establishment of the East African Community)[3] がケニア、ウガンダ、タンザニアによって調印された。2007年7月、ルワンダとブルンジがEACに加盟している。

次のような段階を経て、最終的に連邦政府体制( Political Federation)にすることを目標にしている。[4]
①Customs Union (関税同盟:2004年3月に議定書調印)
②Common Market  (共同市場:今回議定書に調印)
③Monetary Union(通貨・金融統合:2012年を予定)
④Political Federation(連邦政府体制:2015年を予定)

今回調印された議定書が批准(2010年7月1日が批准の期限)されると、域内の税金が撤廃され、物・人・労働力・サービス・資本は、原則自由に移動することができるようになる。

税金については、加盟国は、短期的には関税収入がなくなるが、長期的な利益が大きいという判断をしている。たとえば、ルワンダは年間12百万ドルの減収になると試算している。[5]

これまで、5ヶ国内で働く場合、労働ビザが発行される保証はなかったが、今後は域内で働く場合、労働ビザは迅速に発行されるようになる。

なお、加盟国以外の国からの安価な製品に対してはCommon External Tariffs が課税される。

<EAUについて>
面積(湖を含む): 182万Km2 (日本は37万Km2)
人口:   126百万人 (日本は127百万人)
GDP:    $60,000百万
平均 1人当たりGDP: $424
平均 GDP成長率: 6.8%
詳細は、統計資料『East African Community Facts & Figures - 2008』[6]を参照。

組織として、5ヶ国首脳会議(Summit)と事務局(Secretariat)以外に、行政・立法・司法機関として、大臣会議(Council of Ministers)、東アフリカ議会(East African Legislative Assembly)、東アフリカ裁判所(East African Court of Justice)がある。


■ コメント ■

・5ヶ国が共同体を形成することで、多くのメリットを享受できる。
①経済的な成長:
インフラ設備投資計画を立案することにより、資源の無駄を省き、効率的にインフラが整備される。人の移動を制約しないことにより、経済が活発化する。たとえばウガンダ、ルワンダ、ブルンジは、いわゆる内陸国ではなくなる。
②政治的な安定:
次のような簡単なロジックが考えられる。
経済が安定することで外国投資が増える。→雇用が増える→収入が増える→政治的に安定する。
治安については、小型兵器及び軽量兵器の拡散防止、東アフリカ混合部隊の創設が検討されている。[7]

・隣国(スーダン、ソマリア)が分裂する可能性がある(あるいは分裂している)ことを考えると、5ヶ国が共同体を実現していることは、画期的なことである。

・EACはホームページを開設し、合意書、共同宣言、統計資料など多くの資料が掲載されています[8]。また、外国からの投資家向けの小冊子(Guide for Investors)[9]に、EACが求めている投資内容が書かれているので、是非アクセスしてみて下さい。

・将来的には、EAC以外の経済共同体(COMESA、SADC)を刺激することが期待される。[10]


■ 参考資料 ■

[1]議定書の原文
『Protocol for the Establishment of the East African Community Common Market』


[2]ニュース記事
①「EAC states to open up labour markets as part of protocol」(Business Daily, 2009/11/27)
②「East African bloc sign common market treaty」(Kenya Broadcasting Corporation, 2009/11/20)

[3]『Treaty for the Establishment of the East African Community』(1999年11月30日付) 

[4]『EAC Development Stategy 2006-2010: Deepening and Accelerating Integration』

[5]「East Africa: At last, common market becomes reality」
(The East African (Kenya), 2009/11/23)

[6]『East African Community Facts & Figures - 2008』 

[7]「東アフリカ共同体、安全問題について討議」(CRI, 2009/10/6)

[8] EAC Documents and Publications のページ

[9] 『East African Community  Information Guide for Investors』

[10] 南部、東部アフリカの共同体

①東アフリカ共同体 
East African Community (EAC) 
拡大するにはそれぞれの図をクリック










②東南部アフリカ共同市場
Common Market for East and Southern Africa (COMESA) 










③南部アフリカ開発共同体
Southern African Development Community (SADC)










その他資料:
アフリカにおける主要地域機関の相関図(2009年9月現在)

東アフリカ5ヶ国の大統領の写真 (拡大するには写真をクリック)







 

出所: kilimanjaronewyorkconnections.com

・東アフリカ共同体と中国の関係

東アフリカ共同体、中国との関係強化を希望
2009-08-13 19:52:41

EAC・東アフリカ共同体のムワバチュ事務局長は12日、記者のインタビューを受けた際、「EAC は貿易や投資などの分野における中国とのパートナー関係を強化したい。EACは中国を真の経済協力パートナーと認める」と述べました。

東アフリカ地区に対する中国の投資問題に触れた際、ムワバチュ事務局長は、「この地区における中国の投資は主に鉱山や道路などのインフラ施設に集中している。中国はエネルギー開発で豊富な経験がある。東アフリカ地域のエネルギー投資には大きな潜在力がある。地熱や風力発電、太陽エネルギーの開発において、中国との協力強化を希望する」と述べました。

また、EACの一体化プロセスの問題について、ムワバチュ事務局長は「関係作業は順調に進められている。EACの5つの加盟国の首脳は今年11月に『EAC共同市場条約』に調印する予定だ。この共同市場は2010年に公式にスタートさせる」と述べました。(翻訳:トウエンカ)
http://japanese.cri.cn/881/2009/08/13/1s145245.htm


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2009/11/22

小池百合子議員、カダフィと面談する

----- ニュース -----

2009年11月16から19日にかけて、小池百合子衆議院議員が日本リビア友好協会の会長として、リビア・ビジネス・ミッションを率いてリビアを訪問した。11月19日には、カダフィと面会した。


<産経新聞11月20日より引用>

カダフィ大佐が小池百合子氏と会談 日本との協力強化を表明 [1]
2009.11.20 09:01

日本リビア友好協会の経済使節団を率い、リビアを訪問した小池百合子元防衛相(同協会会長)は19日、首都トリポリ市内で最高指導者カダフィ大佐と会談。関係者によるとカダフィ氏は、アフリカ開発などにおける両国の協力強化を表明した。

世界8位の原油確認埋蔵量を誇るリビアは2003年、大量破壊兵器の開発計画放棄を表明し国際社会に復帰、欧米など外資参入が進んでいる。カダフィ氏が日本の要人と公に会談するのは06年の松田岩夫科学技術担当相(当時)以来で、両国の経済関係拡大に好材料となりそうだ。

会談はテントで行われ、カダフィ氏は黒の民族衣装姿で小池氏らを歓迎。関係者によると、カダフィ氏は終始、友好的で「日本の技術力を高く評価する」と述べ、原油や天然ガス関連、太陽光発電などでの関係強化に期待を示した。(共同)




----- 解説 ----- 

1.ニュースの補足
このニュースは共同通信が提供したものであるが、大手の新聞は産経新聞だけが報じている。その他、地方新聞は北海道新聞、東京新聞など5社以上が報じている(11/22現在)。共同新聞(英文)[2] には日本語の記事に書かれていないことがあるので、以下補足する。

Koike, who also served as environment minister under Koizumi, proposed that Japan and Libya cooperate to build environmentally-friendly cities in Libya. Qaddafi responded positively to Koike's proposal, the sources said.
小池議員は、日本とリビアが共同でリビア国内に環境保全型の都市を造ることを提案し、カダフィは前向きの反応を示した。

The Japanese delegation, comprising about 30 representatives of 16 oil firms and trading houses, arrived in Libya on Monday for talks with Libyan officials.
経済ミッションは約30社で構成され、16社の石油企業と商社などが含まれていた。


2.小池百合子議員とリビアとの関係 [3]

1971年9月 関西学院大学 社会学部中退
1973年夏 リビア訪問(日本商社の通訳として)
1976年10月 カイロ大学卒業
1977年 アラビア語通訳、講師(日本アラブ協会事務局長)
1978年 リビア訪問(日本TVコーディネータ・インタビュアとして)
1979~1992年 TVキャスターなど
1992年7月 参議院議員初当選
1993年 日本アラブ協会顧問就任
2006年12月 リビア訪問(内閣総理大臣補佐官として。カダフィと面談していないと思われる。)
2009年6月 日本リビア友好協会会長就任。(2009年1月に逝去された柿澤弘治氏(元外相)の後任。)
2009年7月   『南地中海の新星リビア―高まる日本への期待』(共著、同友館 )出版 [4]
2009年11月 リビア訪問(日本リビア友好協会会長として。カダフィと面談。)


3.政府 及び 日本リビア友好協会によるリビア要人往来 [5]

2004年6月 逢沢一郎外務副大臣リビア訪問(小泉首相の親書を携えて、カダフィ指導者と会談)
2004年12月 福島啓史郎外務大臣政務官リビア訪問
2005年3月 柿澤弘治会長:エネルギーミッション
2005年4月 リビア Salf al-Islam氏 来日
2006年4月 町村信孝前外務大臣、柿澤会長:エネルギーミッション
2007年6月 柿澤会長:リビア・ビジネス開発ミッション
2009年11月 小池百合子会長:リビア・ビジネス・ミッション


----- コメント -----

1.リビアに進出できそうな業種
リビアへの投資の問題は、①リビアの官僚組織が未熟で手続きに時間がかかること、②ジョイントベンチャーを組んだ場合、マネージャークラスをリビア人にするようリビア政府が要求しているなど、必ずしも投資がやり易いということではないようだ。しかし、リビアには、石油収入があり、インフラ整備などの国造りはこれからであるので、ビジネスチャンスはいくらでもある。特に、建設業界などにとって可能性が高いと思われる。

2.日本政府の関与
(1) 課題1:日本政府のトップが訪問していない。
リビアの国際復帰後、各国は大統領・首相あるいは大臣クラスがリビアを訪問しているが、日本の首相、あるいは現職大臣は訪問していない。今回訪問した小池議員は、上記経歴のとおり、アラビア事情に最も精通している国会議員であるが、現時点では野党の一議員なので、インパクトが弱いのは否めない。

(2)課題2:日本政府にとって、リビアの魅力
少なくとも2つの理由で、リビアは魅力的である。

  ①石油埋蔵量。日本の石油上流企業や商社(エネルギー部門)は、既にリビアの鉱区を取得し進出している。試掘の結果はまだ出ていないが、リビア政府の原油取分割合が大きいため、開発に着手するためには、油価が高くなるか、大油田を発見するか、あるいはその両方の前提が必要となる。
  今後、既に石油(あるいはガス)が発見されているがまだ開発されていない鉱区、あるいは古い油田だが増産することができる鉱区が外国企業に付与されると考えられる。そのために、多数の石油会社が今回のビジネスミッションに加わっている。

   ②「リビアモデル」。リビアは大量破壊兵器(WMD)を放棄して国際社会に復帰したが、北朝鮮がリビアを見習うように、リビアに北朝鮮を説得してもらうことである[6]。ただし、リビアは核兵器を開発していただけで、保有していたわけではない。また、国連が制裁を加えていた。一方、北朝鮮は既に核を保有しているとみられ、核が北朝鮮にとって生命線になっていること、また中国が支援している----という違いがある。


(3)課題3:日本政府による民間企業への支援
日本政府は民間企業がリビアに投資して欲しいはずだが、民間企業にとっては、リビアは多数ある投資国の1つにすぎず、採算性がなければ進出しない。日本政府がリビアと経済関係を深めたいのであれば、政治的イニシアチブをとる必要があると思われる。


日本がリビアに何をオファーできるのか、また、リビアが日本に何を求めるのか、注目する必要がある。「Give and Take」。リビアは日本の常識以上のことを要求する可能性がある。例えば、英国のShell、BP、米国のExxonMobilが随意契約で鉱区を取得したが、それは両国がリビアの国際社会復帰に貢献してくれたお礼でもある。リビアは両国がリビアにしたことと同様の程度のことを日本に求める可能性がある。

ただし、2つの報道が注目に値する。
①関係者によるとカダフィ氏は、アフリカ開発などにおける両国の協力強化を表明した。
②小池議員は、日本とリビアが共同でリビア国内に環境保全型の都市を造ることを提案し、カダフィは前向きの反応を示した。

なぜならば、これは、日本だけ一方的にリビアに対し何かをするのではなく、日本とリビアが共同でビジネスをする、ということであるからである。もしそうであるならば、リビアは、おそらく運用資産約700億ドルといわれるリビアの政府系ファンドのリビア投資庁(Libya Investment Authority:LIA)を使うのではないかと考えられる。カダフィは採算性を考えずに行動すると言われているが、LIAであれば採算性を重視するということを意味するので、悪くない話である。もしLIAが相手であれば、日本政府は国際協力銀行(JBIC)の資金を使う可能性があると思われる。


----- 参考資料 -----
[1] 産経新聞 (2009/11/20)
[2] Libya's Qaddafi meets Japan's ex-defence minister, calls for better ties Nov 20, 2009 (BBC Monitoring via COMTEX)
[3] 小池百合子Official Website 2009
[4] 『南地中海の新星リビア―高まる日本への期待』(共著、同友館 )
[5] 外務省   日本リビア友好協会
[6] 官房長官発表 (2006/12/1)

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2009/11/17

南アフリカへの投資(コンドーム)

南アフリカ・ケープタウンに約1週間滞在しました。これまで私は アフリカ大陸では、北アフリカと東アフリカを訪問しましたが、南アフリカ共和国は初めてでした。

ケープタウンは先進国の都市である、という印象を受けました。
①道路を横断するため、歩行者用の信号がない横断歩道(Zebra=シマウマという)に立っていたところ、自動車は直ぐに一時停止し、手を動かして道路を渡るよう促されました。ドライバーのマナーとしては、日本や英国以上といっても過言ではないと思います。

②ケニアやタンザニアですと、日本の中古自動車が黒煙を出して走っている光景がみられたのですが、ケープタウン周辺にはそのよう車は見受けられませんでした。フェラーリやBMW製のオートバイの展示場があったのには、驚きました。

③英語が公用語ですが、英国で話されている英語に似ています。

以上のように、欧州の都市と比べて何ら遜色のない南アフリカ(ケープタウン)は、日本がアフリカへの投資、工場建設などを考えた際、アフリカ諸国への拠点になれるという優位性があるのではないか、という印象を受けました。

業種では、少なくとも2つの業種の会社が進出できるのではないかと思いました。その1つがコンドームです。(もうひとつに関しては、次回のエントリーで述べます。)なぜコンドームなのか?---貧困防止、HIV防止のため、これ以上のものはないと思うからです。

日本あるいは東南アジアで製造して輸出することも可能ですが、やはり現地サイズを、現地の人が製造したほうが、売れるのではないでしょうか。

イスラム教の国ではあまり使用しないそうですので、北アフリカではあまり売れないかもしれませんが、それ以外の地域は、市場として有望ではないでしょうか。水、食料と同じくらいの必需品です。オカモトさん、相模ゴム工業さん、そして商社の皆さん、如何ですか?Jeffery Sachs教授の援助モデル[1]が使えるかもしれません。なお、コートジボワールのゴム生産量は多いとのことです[2]。


---参考資料---

YouTubeで傑作作品を見つけました。


何十年も前の話ですが、妊娠した夫婦に「どうやって使ったのか?」との質問に、親指につけたという仕草をした、という冗談のような話を聞いたことがありますが[3]、まさか折りたたみ傘にはつけないでしょう。

統計資料を調べてみました。

サブサハラにおけるHIV/Aids感染者数のNo.1は 南アフリカの570万人。人口 5,010万人なので、9人に1人の計算になる。[4]

国連合同エイズ計画(UNAIDS)がグラフ化しています。















4人に1人の男性が女性をレイプしたことがある」というBBCの記事[5]が本当かどうか、タクシー運転手に聞いてみたところ、作り話ではない、と話していました。9人に1人がHIV感染しているという理由の1つなのでしょう。なんとも可哀そうなはなしです。


[1] Jeffery Sachs教授の援助モデル
[2] コートジボワールの投資プロモーションビデオ
[3]日本財団会長 笹川陽平ブログ
[4] HIV/Aids感染者数 統計 
[5] BBC記事 南アフリカのレイプ率

その他 参考資料
コンドームのリコール状況
南部アフリカにおける女性用コンドームの配布状況

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2009/11/14

なぜ日本企業はアフリカへの投資に熱心でないのか?

アフリカには、1日一人当たり数ドル以下で生きている最貧国や、それを脱した国、さらに南アフリカのように先進国の仲間入りをしたといえる国があります。最貧国には「援助」が必要ですが、貧困から脱した国には、雇用を確保するため外国企業からの「投資」を求めています。「Trade, Not Aid」です。今回は、「投資」についてのエントリーです。

追記(2012/7/7): タグページの「日本企業inアフリカ」もご覧下さい。


■ニュース
2009年11月12日、「日・アフリカ交流フォーラム 第2回アフリカ貿易・投資促進シンポジウム」(主催:外務省、後援:経済産業省、日本貿易振興機構(JETRO))が開催された。

シンポジウムでは、ジブチ、マラウイ、べナン、ルワンダ、コートジボワール(アイボリーコースト、象牙海岸)、ジンバブエ、ガボンの7ヶ国からの投資促進担当者が 日本企業の「投資」を求めた。

各国の説明(30分/国)を終え、Q&A 質疑応答に次のような問題提起があった。

①ジブチの商工会議所会頭(Mr.Said Omar Moussa)
・中国、インド、韓国、欧州などがアフリカに投資しているのに、なぜ日本企業は投資しないのか?その理由を聞かせて欲しい。

②在日ルワンダ大使(Mr.Antoine Munyakazi-Jiru)
・JICAはアフリカ諸国に多くのことをしてくれている。しかし、日本の民間部門の投資はslowだ。
・マスコミはアフリカの汚職、内戦などだけを報道しているが、アフリカ諸国は改革しつつあり、確実に成果が出ている。そのなかでもルワンダは改革の優等生(best reformer)だ[1]。

③コートジボワール投資促進センター所長(Mr.Daoda Silue)
・アフリカの全ての国は、全ての国に門戸を開いている。日本が来ていないだけだ。
・アフリカはインフラが整備されていない、と思われている。だからビデオを見てもらった[2]。港湾、道路、鉄道は既にある。
・内戦していると思われているが、それはほんの一部だ。10億人がアフリカ住んでおり、巨大な市場がある。


■解説
「アフリカ貿易・投資促進シンポジウム」は、2008年5月に開催された第四回アフリカ開発会議(TICAD IV)において発表されたアフリカへの民間投資倍増支援政策の一環として、毎年行われている[3]。


■コメント
なぜ日本の企業はアフリカに投資していないのか?---4つの仮説を考え、「今後はどうなるのか?」と自問自答してみました。

<仮説-1>アフリカは対象外
企業が他国に進出する主な理由は「安い労働力」と「市場」だが、アフリカは対象外であった。
①安い労働力:日本の周辺国(韓国、中国、タイ、ベトナムなど)があったのでわざわざ、アフリカに進出する必要はなかった。
②市場:アフリカ諸国は貧しいので市場にならなかった。

※今後はどうなるか?
アジアにはまだ安い労働力を供給する国があるので、日本企業がアフリカの低廉な労働力を求めることはないかもしれない。しかし、市場としての価値はある。確かに日本製品は中国製品に比べて高い。しかし、アフリカにも金持ちはいるので、それをターゲットにすることができる。(中国の一部は大金持ちであることと同じである。)また、日本製品も売れているが、欧州企業経由で買っているので、日本企業が進出し、直接販売することができる。


<仮説-2> 「赤信号、皆で渡れば怖くない」の逆
日本企業の競争相手は日本企業なので、競争相手がアフリカに進出しなければ、自社もアフリカに進出しないでも良い、と考えていた。

※今後はどうなるか?
アフリカ要員を増員している商社がある。今後は「バスに乗り遅れてはならない」という意識で、アフリカ進出の要因になる可能性がある。


<仮説-3> "ひも付きODA"
日本企業は、リスクが小さい"ひも付きODA" には関心があったが、リスクが高い投資には熱心ではなかった。

※今後はどうなるか?
ODA案件において、外国企業との競争(特に現地調達が求められるので地元企業との競争)が激しくなると思われる。


<仮説-4> 情報不足
日本企業には、アフリカの情報がなかった。一方、欧州諸国は植民地時代の宗主国として情報が蓄積しているし、旧植民地からの移民もいる。また、近場ということで、必然的に情報が入ってくる。

※今後はどうなるか?
とにかくアフリカを訪問して、自らの目で確認することである。「ルワンダとはどんな国?」と聞かれたら、多くの人は「1994年に大虐殺があった国だ」と答えるだろう。しかし2009年の現状を答えられる人は少ないと思う。


■参考資料

[1] ルワンダの資料 (図をクリックすると拡大)












出所:Rwanda Development Board
その他、World Bank Governance Indicatorも参考になる。


[2] コートジボワールの投資促進ビデオ




[3] TICAD, 「第1回アフリカ貿易・投資促進シンポジウム(概要)」

その他:
仲山今日子アナのブログ
ガボン開発銀行総裁(Christian Bongo)の発言
注:ガボンの前大統領Omar Bongo Ondimbaは、2009年6月8日死去。現在は息子のAli Ben Bongo(Ali Bongo Ondimbaで報道される場合がある。)が大統領で選出されている。Christian Bongoは前大統領の約30人の子供の一人。

各国の投資促進組織
ジブチ      
Djibouti Chamber of Commerece
http://www.djiboutichamber.dj/ (アクセス不可)

マラウイ
Malawi Cenfederation of Chambers of Commerce & Industry          
http://www.mccci.org/

べナン          
Agence Beninoise de Promotion des Echnges Commerciaux
http://www.abepec.bj/ (仏語)

ルワンダ          
Rwanda Development Board
http://www.rwandainvest.com/

コートジボワール
Centre de Promotion des Investissements in Cote D'Ivoire  
http://www.cepici.ci/index.php (仏語) CEPICI

ジンバブエ      
Zinbabwe Investment Authority
http://www.zia.co.zw/

ガボン
Investment Promotion Agency
http://www.invest-gabon.com (アクセス不可)


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