2010/01/31

北アフリカ地域の太陽熱発電プロジェクト

このエントリーでは、北部アフリカにおける太陽熱発電について 紹介します。プラント会社や商社にビジネスチャンスが広がると思います。

本件は、太陽熱発電であり、太陽光発電とは違います。太陽を利用した発電には2つの方法があります。
①太陽光発電(photovoltaic power plant:PV)は、最近では一般家庭の屋根の上に設置されるようになった方式です。
②集光型太陽熱発電(Concentrating Solar Power:CSP)は、地球上の日照時間の長い地帯(サンベルト)において、大規模な発電をする方式です。


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【 ニュース 】

2010年1月21日、モロッコは、太陽熱発電プロジェクトを正式に発表した。[1]

・ 発電能力:2020年まで全部で2,000MWを建設する。
・ 発電所数:5ヶ所
・ 最初のプロジェクト:Ouarzazate(モロッコ中部の都市)において500MWの発電所を建設する。
・ 総額:9,000百万ドル(8,100億円)
・ 資金源:電力公社、Hassan II Fund for Economic and Social Development(国王の経済社会開発財団) 日本、UAE、米国などが参加を希望している。
・ インパクト:国内需要の40%に相当する。また、原油輸入の12%を削減する。
入札:2010年2月実施予定



【 解説 】

1.CSP(Concentrating Solar Power)の方式

CSPには、トラフ式(trough)、タワー式(tower) 、ディシュ式(dish)、フレネル式(linear fresnel)4つの方式がある。現在のところトラフ型が一般的である(図1)。なお、コスモ石油がアブダビで実験している「ビームダウン式」は、タワー式を発展させたものである。[2]


図1:太陽熱発電の種類 (クリックで拡大)










2.北アフリカにおけるCSP

北アフリカは地球上でも有数な日照時間があるためCSPに適している(図2)。現在は、モロッコ、アルジェリア、エジプトで既に設置されているか、あるいは工事中である(図3)。欧州南部、MENA(中東・北アフリカ)における2050年までのCSP発電能力は、2020年頃から急激に拡大していき(図4)、北アフリカで10以上のCSPが実現すると想定されている(図5)。

(1)モロッコ
Ain Beni Matharにおいて、トラフ型太陽熱発電(20MW)と天然ガス発電を組み合わせたコンバインドサイクル発電所(総発電能力470MW)が操業を開始したばかりでありである。[3]

(2)アルジェリア
Hassi R'melにおいて、トラフ型太陽熱発電(25MW)と天然ガス発電を組み合わせたコンバインドサイクル発電所(総発電能力は130MW)が、現在工事中である[4]。その他、2つの70MWのCSP発電所が計画されている[5]。

(3)エジプト
コライマットにおいて、太陽熱(20MW)・ガス統合発電(総発電能力は150MW)が工事中である。  本事業は三井物産/Iberincoコンソーシアムが受注している[6]。


図2:サンベルト













図3:北アフリカのCSPの位置













 図4:欧州南部・MENAにおける発電能力の予想













図5: 高圧直流電流供給網

















【 コメント 】

モロッコだけなく、アルジェリア、リビア、エジプトでも同様の大規模プロジェクトがあるはずなので、巨額なプロジェクトになる。日本の企業(コスモ石油、三井造船)はアブダビでテストプラントを建設し、事業を検証しているし、その他の会社にもビジネスチャンスは十分にあるはずである。

アブダビで太陽熱発電に成功した場合、アブダビの投資ファンドは北部アフリカの発電事業に進出すると考えられる。

下の図6を見ると、CSPは高いように見えるが、本当だろうか。換言すれば、天然ガス発電や原子力発電の資本費用は安いように見えるが、実態を表しているのだろうか。例えば、天然ガス発電所の建設費用には、失敗したガス田の探鉱開発費用は含まれていないはずである。また、原子力も廃棄物処理に係る費用が含まれているのか、疑わしい。それを考えると、CSPは一見高そうに思えるが、石油ガスの上流事業のようなリスクがないし、CO2に係る「費用」がないので、実は安いのかもしれない。

図6:発電原価比較
















(追加情報)2010/12/12:アルジェリアのソーラープロジェクト もご覧下さい。


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【 参考資料 】

[1] 「Morocco to invite bids for solar station in Feb」 (Reuters, 2010/1/7)
http://www.engineeringnews.co.za/article/morocco-to-invite-bids-for-solar-station-in-feb-2010-01-07
「Morocco's $9bn bid to capture sun's energy」 (International Construction Review,11/01/2010)
http://www.iconreview.org/news/view/1692
「Morocco hopes to shine in mega solar project」(SciDev.net 、2010/1/21)
http://www.environmental-expert.com/resultEachPressRelease.aspx?cid=33596&codi=79567&lr=1
[2] 「新技術取り入れた太陽熱発電所で世界市場へ参入・三井造船」(日経エコロミー、2009/09/29) ★ ご覧ください。
http://eco.nikkei.co.jp/special/ecopro/article.aspx?id=MMECf2000019092009
[3] 「Morocco commissions solar/CCGT hybrid power plant」(Power Engineering, 2010/1/26)
http://pepei.pennnet.com/Articles/Article_Display.cfm?Section=ONART&PUBLICATION_ID=6&ARTICLE_ID=372687&C=PRODJ&dcmp=rss
[4] Wikipedia   http://en.wikipedia.org/wiki/Hassi_R%27Mel_integrated_solar_combined_cycle_power_station
[5] 「Concentrating Solar Power Global Outlook 09: Why Renewable Energy is Hot」
★ ご覧ください。
http://www.greenpeace.org/raw/content/international/press/reports/concentrating-solar-power-2009.pdf
[6]「エジプト新・再生可能エネルギー庁向け太陽熱・ガス統合発電設備建設契約受注」(三井物産プレスリリース、2007/10/01)
http://www.mitsui.co.jp/release/2007/1177577_1767.html

その他資料

CLEAN TECHNOLOGY FUND: CONCEPT NOTE FOR A CONCENTRATED SOLAR POWER SCALE-UP PROGRAM IN THE MIDDLE EAST AND NORTH AFRICA REGION (世界銀行気候変動投資基金、2009/4/27)
http://www.climateinvestmentfunds.org/cif/sites/climateinvestmentfunds.org/files/CSPConceptNoteApril27.pdf

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