【ニュース】
「オランダは、新しい分野に開発援助の焦点を当てる」 [1]
・オランダ政府は、開発援助の予算を、GNPの0.8%から0.7%にする。全体で1,900百万ユーロの減額する。
・教育と公衆衛生に係る援助は減額される。最も縮小されるのは、教育に係る援助で、160百万ユーロの減額になる。
・NGOの「Oxfam Novib」は50百万ユーロの補助金を減額されたため、今月(2010/11)、70人の職員を解雇した。
・一方、増額されるのは、農業と水資源管理の援助であるが、これはオランダの企業が得意な分野である。企業による開発援助には40百万ユーロの予算がついた。
【解説】
恐らく、オランダ政府は次のように考えているのだろう。
1.オランダ政府が発展途上国を援助する際、オランダ企業も恩恵を受けるべきだ。
①アフリカには農業が必要である。[2]
②オランダは、米国に次ぐ世界第2位の農業生産物輸出国である[3]。その技術を利用(=輸出)することにより、アフリカの自給率が向上し、同時に、オランダの農業関係の企業が潤う。一石二鳥だ。
2.オランダは、他国に比べて多く援助している。(下図参照) [4]
図 人口一人当たりのODA支出(純額:2008暦年)
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【コメント】
日本の外務省は、平成22年度の国際協力重点方針の1つとして、「『新しい公共』の担い手であるNGOの諸活動及び基盤強化を柔軟に支援するとともに、連携を強化する。」という考えをもっている。
オランダもそのような考えであることは、今も変わらないと思うが[5]、NGO以外に企業も援助に参加させるために補助金を支給することにしたのだろう。発展途上国の援助と自国の企業育成がwin-winの関係になるならば、それは望ましい姿であると思う。
ただし、同じ記事の中で、Oxfam NovibのTom van der Le氏(キャンペーン・マネジャー)の発言には、留意する必要がある。
「産業界が援助に参加することの効率性を検証するような科学的な調査はまだ実施されていない。補助金に対する説明責任(accountability)をどうするのか。援助においてガバナンスの問題があるが、民間企業では更に複雑になる。」
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【参考文献】
[1] New focus for Dutch development aid (2010/11/29, Radio Netherland Worldwide)
http://www.rnw.nl/africa/article/new-focus-dutch-development-aid
[2] 「World Development Report 2008 Agriculture for Development」by World Bank
http://siteresources.worldbank.org/INTWDR2008/Resources/WDR_00_book.pdf
[3] オランダの農業事情 by オランダ大使館 農業・自然・食料安全部
http://www.food-safety-holland.com/-agriculture,now-jp.html
[4] http://www.jica.go.jp/faq/10_01.html
[5] オランダの援助についての参考文献
ODA(政府開発援助)とNGO: 第3 のODA ルートの意義
長坂 寿久
季刊 国際貿易と投資 2004年春号
http://www.iti.or.jp/kikan55/55nagasaka.pdf
オランダ政府の開発援助政策 by 石橋太郎
開発金融研究所報 2004年11月第21号
http://www.jica.go.jp/jica-ri/publication/archives/jbic/report/review/pdf/21_05.pdf
平成18年度 外務省委嘱
主要援助国・機関のNGO支援のための資金供与に関する調査報告書
─プロジェクトベースとは異なる政策的な支援を中心として─
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/shien/shikinkyouyo/pdfs/shikinkyouyo.pdf
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