2010/04/18

空飛ぶトイレ ( BOP:トイレビジネスの可能性 )

世界の人口の17%は野外で排泄し、11%は不衛生なトイレを使っている生活をしています[1]。下の写真は、ケニアの首都ナイロビ近郊のスラムものですが、排泄物を黒色のビニール袋に入れて、自分の家から遠くへ投げ捨てているので、「空飛ぶトイレ」(flying toilet)と呼ばれています。臭気、汚染、下痢などの問題を引き起こしています。今回のエントリーでは、汚物を処理する新製品を紹介します。

写真(ケニアのKibera スラム)
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【 ニュース 】

New York Times等は PeePoo bagの記事を掲載した[2]。概要は以下のとおり。

・スエーデン建築家 (Anders Wilhelmson)が、排泄物を入れる袋を開発した。
・袋の名前をPeePooという。(幼児言葉で、Peeは小便、Pooは大便という。)
・使い方は、小さな缶などにPeePooを入れ、その中に座って用を足す。(図1)
・PeePooに汚物を入れて封をすれば、24時間は臭わない。
・PeePooは生分解性(bio-degradableな)プラスチックでできており、袋の内側にコーディングされている尿素が、2~3週間かけて糞尿のなかのある悪い菌を殺し、糞尿を肥料に変化させる。
・ケニアのスラムの50家族で1ヶ月試験利用したところ、好評であった。
(a) 278人を対象にして、28日間使ってた。合計3,354袋が消費された。
(b) 90%の人達は、清潔で利用するのが簡単であると感じた。
(c) 85%の人達は、毎日使いたいと考えた。
・PeePooを集めて、畑で使うため、集配のための雇用も生まれる。
・PeePooは無料配布するか、あるいは、これまでのポリエチレン袋と同じ値段で販売することを検討している。。


【 解説 】
1.PeePooの使い方

図1:
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2.市場規模
世界の人口は68億人。その1%が 1日1回、1袋1円のPeePooを使ったとして、1日6,800万円の売り上げになる。その百分の一でもものすごい金額になる。


【 コメント 】

・開発者はスラムの現状をなんとかしようとして、開発しようとしたそうだ。アフリカが何を求めているのか、実際に訪問することが重要である、ということがよく分かる事例である。

・PeePooは、援助品として提供されるのか、あるいは売られる場合でも安価であるが、ビジネス(BOP:base/bottom of pyramid)の絶好の商品となるだろう。

・日本には「バイオ・トイレ」のような製品があるが[3]、レベルダウンして、低廉な商品を開発できるのではないか。

・「世界の人口の28%はトイレがないか、あっても不衛生な生活をしている」のが現実である。日本には世界に誇れる温水洗浄便座(ウオッシュレット等)があり、家庭への普及率は69%(2009年3月内閣府発表[4])に達している。安くない商品だが、それを購入できる日本人は裕福であり、日本は衛生面な国だということを、改めて認識した。



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【 参考文献 】

(1) 引用文献

[1] 「Progress on Sanitation and Drinking-water: 2010 Update」 (WHO & UNISEF,2010)
http://www.wssinfo.org/download?id_document=1289
「WATER FOR LIFE MAKING IT HAPPEN」 (WHO & UNICEF, 2005) 上記の古いバージョン。
http://www.who.int/water_sanitation_health/waterforlife.pdf

図2:世界のトイレの整備状況 
(図をクリックして拡大)

[2] PeePooに関する最近の報道
「For Pennies, a Disposable Toilet That Could Help Grow Crops」(New York Times, 2010/3/1)
http://www.nytimes.com/2010/03/02/science/02bag.html

「Kibera tries new bag to solve 'flying toilet' problem」(BBC,2010/3/30)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/8594972.stm

「Forget flying toilets, it's all fertiliser」(Standard Media, 2010/4/10)
http://www.standardmedia.co.ke/InsidePage.php?id=2000007384&cid=4&ttl=Forget%20flying%20toilets

[3] http://eco.nikkeibp.co.jp/style/eco/person/070824_seiwa-denko01/index.html
http://www.seiwa-denko.co.jp/
http://www.wrappon.com/tokara/index.html

[4] http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/shouhi.html  「普及率(3月調査)」を参照


(2) 組織

PeePooのホームページ (ビデオもある)
http://www.peepoople.com/

開発者Anders Wilhelmson氏のホームページ
http://www.wilhelmson.se/

WHO / UNICEF Joint Monitoring Programme (JMP) for Water Supply and Sanitation
http://www.wssinfo.org/country/introduction.html

International Year of Sanitation 2008 国連国際衛生年(2008)
http://esa.un.org/iys

(3)その他の資料

PeePooの利用の試験的利用の結果報告書
「Urban slum dwellers in Kenya and Bangladesh benefit from using Peepoo bags which are self-sanitising and biodegradable」(8頁)
http://www2.gtz.de/Dokumente/oe44/ecosan/en-benefit-from-using-peepoo-bags-Kenya-Bangladesh-2009.pdf

「Results of a medium-scale trial of single-use, self-sanitising toilet bags in poor urban settlements in Bangladesh」(German Technical Cooperation, 2009) (92頁)
http://www.gtz.de/en/dokumente/gtz2010-peepoo-bags-bangladesh-trial.pdf

「IMPACT ASSESSMENT REPORT 0N THE PEEPOO BAG, SILANGA VILLAGE, KIBERA, NAIROBI-KENYA」(Thomas H. M. Ondieki & Maurice Mbegera,JEAN AFRICA CONSULTANTS, 2009/1) (100頁)
http://www2.gtz.de/Dokumente/oe44/ecosan/en-peepoo-bags-assessment-Kibera-2009.pdf

「26億人がトイレを待つ」 (JANJAN、2007/08/24)
http://www.news.janjan.jp/world/0708/0708221164/1.php

アフリカのトイレ事情 ★必見
マリ、ニジェール、スーダン  http://www.toilet.or.jp/wts/bookinfo.html
ザンビア、ケニア、ウガンダ  http://www.toilet.or.jp/wts/bookinfo.html?start=3


「Kenya DownTown」(実際にKiberaというスラムの中を歩いた「★FABULOUS★」さんのブログ、2008/04/28)
http://ameblo.jp/miyabi-loves-safari/entry-10089856479.html

The Women of Kibera (ビデオ、アフリカ第二のスラム, Kiberaに住む女性の苦労を解説)

1 件のコメント:

  1. ESDの立場から、高校生にアフリカ開発経済学を無謀にも教えている公立高校の社会科教師です。私のブログ『アフリカ留魂録』に、この記事を読んでの感想を書かせていただきました。キベラスラムは、JICAの教員研修旅行で視察しました。フライング・トイレットの話も以前から承知しており、度々生徒に紹介しています。この下水道が完備していない都市生活者の(「9億人の市場」で言うところの)”アフリカ3”への大きな朗報です。人間の安全保障と、PeePooをかけて、きっと彼らはGood PeePooと名付けるような気がしています。

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