2009/10/31

留守のお知らせ

ご訪問ありがとうございました、11月11日まで出張しますので、11月15日頃まで更新できません。
その頃にお待ちしております。今後ともよろしくお願いします。

最近のエントリー:
(10/31) 東アフリカ地域の情報インフラ整備

(10/30)  Dr.Jeffery Sachs と 国際援助

(10/25)  中国に在住するアフリカ人

東アフリカ地域の情報インフラ整備

食料、水、電力、教育、情報など----これらの全てを同時並行的に必要とするアフリカ。今回のエントリーでは、①地球上で光ファイバーが敷設されていなかった最後の地域だった東アフリカ地域に情報インフラが整備されたこと、また、②ルワンダの電気がない村でもインターネットにアクセスするプロジェクトが進んでいることをお伝えします。

■ニュース
1.海底光ケーブル

(1) 2009年7月12日、The East African Marine Systems (TEAMS) [1] は、UEAのフジャイラからケニアのモンバサまで海底光ファイバーケーブルを敷設した。全長4,900km。

(2) 2009年7月23日、別のケーブルシステムとして、SECOM社 [2] がインド-東アフリカ諸国-フランス・マルセイユをつなぐ海底光ファイバーケーブルを敷設した。全長17,000km、伝送効率 1,28 Terabits/秒。沿岸国(南アフリカ、モザンビーク、マダガスカル、タンザニア、ケニア、ジブチ、エジプト)まで届いているので、将来は内陸国(ウガンダ、ルワンダ他)に延長することになる。

ビデオ-1: Seacom in Africa(2009/08/26登録)

・ケニアの野生動物研究者は、象にGSPをつけて動きを監視できる。
・ルワンダの田舎の医者は、町の医者に聞きながら遠隔治療ができる。
・タンザニアの学生は、米国のMITの授業を受講できる。


図1:ケーブル配線図と距離 (図をクリック→拡大)










2.ルワンダ
(1)インターネット・バス
ビデオ-2: Internet bus for Rwanda 写真とビデオ
BBCにアクセスして、ビデオをご覧下さい。 ←----クリック)











・インターネット・バスが巡回するようになった。
・電気がない奥地でも体験できる
・1ヶ所に1週間程度滞在する。


(2) OLPC (One Laptop per Child) [3]
ビデオ-3: One Laptop Per Child (2007/10/04登録)


・価格:200ドル弱
・多少の水、埃、振動に耐えられる。テキストを読むだけなら24時間起動。


■解説

1.海底光ファイバーケーブル

アフリカ全域のケーブルは、この図のようになる。 
図2:2010年のインフラ (図をクリック→拡大)
















2.途上国向けに廉価なPCを提供するプロジェクト

・LTPC以外にも、Intelが途上国向けの安価なPCを提供している。[4]
・LTPCを持っていれば、電子化された書籍100万冊以上を無料でダウンロードすることができる。[5]


図3:アフリカの普及度















■コメント

・新しい事業を始めるにはリスクを伴うが、成功すれば大きなリターンがある。「The early bird catches a worm」を日本語に訳すと、「早起きは三文の徳(得)」と訳すのが一般的だが、毎日の生活のことだけでなく、「最初に事業を始める者が利益や名誉を得る」という意味もある。アフリカは何でも不足しているが、それは、ビジネスチャンスがあるということである。日本の会社も進出してもらいたい。


・ルワンダの子供達の笑顔は、単にPCもらったというよりは、希望、あるいは自分の可能性が広がったことに対する喜びを表現した笑顔だと思う。[6]














ビデオ-4: Skills: the right to education (2008/12/10登録)

・児童労働、児童売春、少年兵---これはフィクションではなく、現実である。


(注意)give one, get one は2台のPCを買い、1台は自分に、もう1台を発展途上国の子供に寄付するというキャンペーンである。2008年11~12月に米国内で実施されたが、現在は実施されていない。ただし、寄付は受け付けている。


■参考資料 & URL
[1] http://en.wikipedia.org/wiki/TEAMS_%28cable_system%29
[2] http://www.seacom.mu/index2.asp
[3] http://laptop.org/en/
[4] http://www.classmatepc.com/
[5] http://www.xconomy.com/boston/2009/10/24/internet-archive-opens-1-6-million-e-books-to-olpc-laptops/
[6] http://www.telegraph.co.uk/technology/6247728/One-laptop-per-child.html


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2009/10/30

Dr.Jeffery Sachs と 国際援助

今回のエントリーは、ジェフリー・サックス氏の国際援助活動について紹介します。2009年10月29日に開催された「第2回 日経GSRシンポジウム:地球の問題解決に向けた企業と国連、NGOの連携」の特別ゲストとして、竹中平蔵氏と対談されましたが、そこでの発言をまとめました。

●ジェフリー・サックス氏とは?
・コロンビア大学地球研究所長 兼 国連事務総長特別顧問。
・20代でハーバード大学のテニュアー(教授として終身的地位をもつ)になった。
・竹中氏曰く、「この30年間で最も世界を変えた経済学者」である。また、「アフリカの大統領は皆、彼に会いたがっている」とのこと。

●何をしている人?
・「Millennium Villageプロジェクト」を実施している。一言でいうと「援助のモデル村」あるいは「援助の実験村」である。(末尾のビデオ、参考資料を参照して下さい。)

●講演では何を話したの?
1.  アフリカなどの貧しい人たちは、自分達ではどうしようもない程に貧困状態から抜け出せなくなっている(trapされている)。だから我々先進国の人々が助けなければならない。しかし、その方向性を変更させる役割については、米国にはできないし、世界政府もない。

2.  企業、NGO、政府・国際機関、大学の4つが関与する必要がある。
①企業は自分が得意とする技術やノーハウを提供する(寄付する)。単にお金を寄付するのではなく、相乗効果(multiplier effect)があるものを提供する。日本にはいろいろな技術があるので、企業一社、一社が持ち寄り、貧困層に届くようにすればよい。
②NGOは企業が提供した技術などが援助として役立つかどうかを検証する。
③政府・国際機関は、NGOが検証して有効であることを確認したプロジェクトに、大規模に援助する。
④大学は、援助について分析し、提案する。

(私なりに考えて、図1のように図式化してみました。)
図1 援助モデル (図をクリックすると拡大)


3.  具体的な例を話された。
①住友化学の例
住友化学は援助の成功物語だ。同社はアフリカではタンザニアとナイジェリアで防虫剤練り込み蚊帳「オリセットネット」を生産している。現地企業に技術を無償供与し、5,000人を雇用している。
住友化学からは、Millennium Villageプロジェクトのため、「オリセットネット」を約35万張り寄付してもらい、そのマラリアに対する有効性を検証した。
私は、国連に何度も説明した結果、国連が大量購入して200万人に配布した。
②エリクソン
携帯電話を普及させるために、高さ100mの電波塔を建てた。
③GMは病院の機材(1000万ドル相当)を寄付した。
④KPMJは会計事務所です。同社はmillennium villageの経理を手伝ってくれてます。

このブログに書いたことに若干の間違いがあるかもしれません。速報ベースということでお許し下さい。なお、本日の講演会は、11月中に日経新聞が記事にするそうです。

●参考
住友化学のアフリカでのCSR

関連ブログ
黒川清オフィシャルブログ
「Jeffrey Sachs教授とMillennium Village」(2007/03/13)

Wanaki Jiji
「未来への提言 経済学者 ジェフリー・サックス ~貧困のない世界を目指して~ 」(1)  (2)

ビデオ (全てお勧めですが、最初のビデオにはアンジェリーナ・ジョリーがでてます。)
Angelina Jolie & Jeffrey Sachs- Part 1 Part2 (登録2006/09/06)

GOOD: The UN Millennium Declaration (登録2007/06/12)

Millennium Village Ruhiira, Uganda  (登録2008/05/23)


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2009/10/25

中国に在住するアフリカ人

中国のアフリカ進出は目覚ましく、多数の中国人がアフリカ各国に滞在していることは周知の事実です。今回のエントリーでは、アフリカ人が中国に進出していることをお伝えします。

■ニュース
2009/07/16: 中国広州で黒人200人が派出所を攻撃した。[1]
ナイジェリア人1名が、パスポート検査を逃れるためビルから飛び降りて死亡したことがきっかけとなって、約100人の黒人が暴動を起こした。(末尾のビデオ画像参照)

2009/09/25:ナイジェリアの議員がナイジェリア政府に、①中国に収監されているナイジェリア人の実態、②ナイジェリアに不法滞在しているとみられる中国人---について調査するよう要請した。[2]

2009/10/13:BBCは、リベリア共和国で中国語が教えられている、と報じた。[3]

2009/10/14:新華社は、発展途上国から中国へ移住してくる外国人が近年激増している、と報じた。[4]


■解説
断片的な数字であるが参考になると思われる。

(1)中国にいるアフリカ人の実態

アフリカ在住の中国人:750,000人 [5]

広州在住のアフリカ人正規の居住者: 20,000人
ビザなしでの半年以内の長期滞在、不法滞在者を合わせたアフリカ系人数:
200,000人 [6]

広州在住のアフリカ人の多くはコンゴやナイジェリア、マリ共和国からの移民。[7]

中国の牢獄に収監されているナイジェリア人の数:700人(罪状は、不法入国、薬物、詐欺)
ナイジェリア人囚人の死亡数:30人
ナイジェリアに滞在している中国人の数:20,000人[2]

中国に滞在するアフリカ人留学生の数:
2001年には1,224人
2010年(予想)には、奨学金留学生は4,000人、私費留学生12,000人。[8]

(2)アフリカにおける中国語教育
2009/6: 「孔子学院」が現在アフリカ14か国で21校開校[9]

なお、世界では、2009年4月時点では、81の国と地区に326の孔子学院が設立されている。[10]

■コメント
水は高いとことから低いところに流れるが、労働力は貧しいところから豊かなところに流れる。

中国がアフリカで中国語を教える目的は、アフリカで働く中国人とのコミュニケーションを円滑にするため、及び、中国文化の普及だと考えられる。一方、アフリカ人が中国語を学ぶ目的は、雇用が主目的であるが、働き場所はアフリカ地域内に留まらず、中国本土も含まれる。もう1つ、アフリカのビジネスマンが中国で交渉する際に、中国語を知らないので不都合を感じているようである[4]。

中国人とアフリカ人が相互に交流すれば(あるいは、交流できれば)、大きな摩擦は生じないだろう。しかし、不当に中国がアフリカ人の移民を阻止したり、中国に滞在するアフリカ人が中国に対し悪い感情をもって帰国した場合、今度は、アフリカに滞在する中国人に影響が出るのは必至である。

今のところ、中国に滞在するアフリカ人は中国人とはあまり交流していないようである。[11] 

■参考文献  (印はお薦めです。)

[1] 「アフリカ系外国人が派出所を襲撃=黒人の飛び降り死亡事故への抗議-広東省広州市」(中国ニュース通信社,2009/07/16)
「広州で黒人200人が派出所を攻撃=広東省」(Epoc Times, 2009/07/19)
[2]「Nigerian anger over China deaths」 (BBC, 2009/09/25)
[3]「Learn Chinese for free... in Liberia」(BBC, 2009/10/13)
[4]「中国は『人気の移民先』に? アフリカなどからの不法就労が急増---広東省広州市」 (中国ニュース通信社, 2009/10/14)
[5]「中国のアフリカ征服は近い!既に75万の中国人が現地在住―米紙」(中国ニュース通信社, 2009/07/18)
[6]「中国とアフリカの『不適切な関係』の行方」(有本香, 2009/10/08) 
[7]「中国・広州にアフリカ人が多数移住--米メディア」(中国ニュース通信社,2009/06/29)
[8]「Confucianism at large in Africa」(Asia Times, 2009/08/07)
[9]「アフリカでも続々開校する『孔子学院』、関係強化図る中国が14か国に21校--香港紙」(中国ニュース通信社、2009/06/18)
[10]孔子学院ニュース
[11]「Largest Number of Africans in China Live in South of Country」 (VOA, 2009/06/26)
ビデオ「Africans in China」

その他参考文献
「『科学的発展観』はブレーンなき胡錦涛の苦肉の策だったが世界二百箇所の『孔子学院』、実態は語学教室の実利一点張り」(2009/08/26 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」)

「不法滞在のアフリカ系黒人に“占領”される中国・広州市---中国本土3300キロをタクシーで巡る(その3)」(北村豊 2008/12/19) 

ビデオ「African Black Immigrants Riot in China」


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2009/10/15

カダフィ大佐の後継者はSaif al-Islam氏に決定

 この記事を書いて1日が経過しました。下記の原文はそのままにし、追加でコメントします。

カダフィは、遅かれ早かれ引退するのは間違いありません。大統領や首相がいない国で、カダフィの「次」をどうするかが問題ですが、理論的には、①クーデター、②選挙(ただしその制度がない)、③権力移譲----この3つの方法が考えられます。カダフィとしては、息子に移譲するのが最善の方策でしょう。噂では、二男のSaif al-Islam、またはMutasim-Billah Gaddafiと言われていいます。

現在リビアが抱えている最大の外交問題は、スイスと断絶状態にあることですが、名目的には国際仲裁裁判所で審議されるでしょうが、やはり外交的に解決するのが妥当です。リビアでそれができるのは、ロッカビー事件で有罪判決を受けたal-Megrahiを帰国させた実績があるSaif al-Islam氏以外にはいないと思います。

そのためには、リビア人民会議(議会)に彼に役職を与えなければならない-----これが今回のニュースの背景にあったと考えます。後継者レースの先頭を走っているのは間違いないのですが、まだ後継者に「決定」したわけではありません。

従ってこの記事の題は、 「カダフィ大佐の後継者としてSaif al Islam氏が有利」 に変更します。「後継者に決定」というレポートを書く日ができるだけ早く来ることを期待しています。(2009/10/16,  00時05分)


■ニュース
2009/10/13、リビアのカダフィ大佐は、二男のSaif al-Islam氏を国家第2位の地位に任命し、国家人民会議(=議会)と政府を監督する権限を与えた。[1]












■解説
カダフィ大佐は40年リビアを統治してきたが、これでSaif al-Isram氏が後継者になることがほぼ確定した。Saif al-Isram氏は、1972年6月生まれ、37才、リビア国際慈善基金総裁、 London School of Economics で博士号取得。[2]

■コメント
Saif al-Islam氏は、リビアだけでなく、アフリカ大陸のリーダーになる素質がある。

国際社会(あるいはリビアにとって)、以下のようなの貢献をしている。
①リビアの国際復帰
②AIDS問題で逮捕されたブルガリア人看護婦達の解放
③チュニジアで拉致された外国人旅行者の解放
④ロッカビー事件の囚人のリビア帰国。

彼にとって、以下のような課題がある。
①独裁者カダフィの息子であることが自体がハンディキャップである。反カダフィの民衆から支持されるか。
②リビアを近代化させるために、憲法制定したり(実際にそのように発言している)、政治機構、官僚機構など全てを改革する必要があるが、改革を急ぎ過ぎると保守派と摩擦が生じる。
③弟(四男)とうまくやれるか。
④率直に発言する性格だが[3]、言動を慎むことができるか。

■参考文献
[1]
「Libya leader names son 2nd-in-command」(Press TV, 2009.10/13)
「Kadhafi names son second-in-command: report」(AFP)
[2] Saif al-Islam氏のプロフィール 
Wikipedia, BBC

[3] ロッカビー事件の犠牲者への巨額の補償金の交渉にあたって、「いやしい(very greedy)」と発言した。

その他参考資料
ビデオ Sky News (2009/09/07)

「影響力の後退を噂される改革指向の子息セイフ・イスラム氏の公式な肩書きを求めたリビアのカダフィ大佐」最近の中東・エネルギー情勢から(2009/10/14)


「NO・1421 カダフィ大佐も人の親か、息子がかわいい」 中東TODAY 佐々木良昭 2009/10/08

「ポスト・カダフィ体制へ模索が続くリビア」 畑中美樹 石油・天然ガスレビュー 2009/07

「リビア国際慈善基金総裁の総理表敬」2005/04/04














Gaddafi International Charity and Development Foundation (GICDF) のホームページ

(参考)カダフィの子供達

長男:Muhammad Gaddafi: オリンピック委員会。通信会社。政治には無関心。 (母親が、次男以降の息子の母親とは違う。次男の母親のほうが影響力があるので、政治に無関心なのかもしれない。)
二男:Saif al-Islam Gaddafi
三男:Al-Saadi Gaddafi:サッカーに熱心
四男:Mutasim-Billah Gaddafi:軍人。national security adviser。カダフィの後継者として競っていた。
五男:Hannibal 乱暴者。欧州各地で酒に酔って暴力事件を起こしていた。スイスでの暴行事件をが契機になって、スイスと断交状態になった。
六男:Saif Al Arab
七男:Khamis:警察官
娘Aishaは弁護士であり、サダムフセインを弁護した。Hannaという養女がいたが、米国のトリポリ攻撃(1986年)の際、死亡した。

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2009/10/12

中国はコンゴ民主共和国への融資額を減額する

■ニュース
2008年4月、コンゴ民主共和国(旧ザイール、以下「コンゴ」。)と中国は、インフラ整備と銅生産プロジェクトをパッケージにした融資契約(融資総額9,000百万ドル)を締結していたところ、2009年10月8日、駐コンゴ民主共和国中国大使(Wu Zexian)は、融資総額を6,000百万ドルに減額した、と発表した[1]。

■解説
1.コンゴと中国の契約について
(1) 主要経緯
2007年9月:コンゴと中国は経済援助協定に調印[2]。
2008年1月:コンゴと中国は融資契約(総額9,000百万ドル)を調印[3]。
2008年4月23日:中国中鉄、中水集団は、銅・コバルト生産の合弁企業設立を発表[4]。
2008年5月:コンゴ議会は契約を承認[3]。
2008年6月:IMF担当官は、「中国との契約を変更しない限り、減免、緊急融資はできない」と発言[5]
2008年8月:国際的なNGOがコンゴ政府に対して、情報を公開するよう要請[6]。
2009年10月:融資総額を6,000百万ドルにすることを発表。

(2)融資契約は、3つの融資区分(tranche)になっているようだ[7]。
①インフラ整備(図1)----(3,000百万ドル+3,000百万ドル)
・道路 (3,800~6,000 km)
・鉄道 (3,000~3,200 km)
・ダム/水力発電所 (2)
・病院 (32~42)
・ヘルスセンター (145~150)
・大学 (2)
・ホテル (?)

②銅・コバルト事業(図2) ----(3,000百万ドル)

3.世銀融資引き出しのための妥協案
最貧国の1つであるコンゴは、世界経済の低迷に伴う金属資源(銅など)の下落により外貨収入が落 ち込み、国際的な支援が必要になっている。支援の1つはOECD諸国による融資に係るパリクラブによる貸付金の減免・リスケ、世銀による融資(600百万 ドル)で、もう1つは中国によるインフラ整備、資源開発のための融資である。
IMFは、中国の融資は必要であるとしながらも、コンゴの債務(11,000百万ドル。今回の中国分を除く。)を増やさない方法を考えるように、コンゴに要請していたが、それに応えた形で中国からの融資を減額した。

図1-1:インフラ事業図












図1-2:コンゴの地図













図2:事業図



■コメント
契約の内容は公開されていない。報道から推測すると、上記のとおりインフラ整備への融資が2つのtrancheになっているところ、その1つ(3,000百万ドル)を外したものと考えられる。だだし、それを中止したのか、一時延期したのかは不明である。

コンゴは世銀からの緊急融資を確保することで、公務員などへの給与の支払いが可能となった。しかし、これは一時的な救済措置であるので、政治的不安定は続くと思われる。

中国の融資条件の詳細は公になっていないこと、また、中国にとって有利な契約になっているように野党議員(そして国民)が感じていることは、将来の不安定要因になると思われる。2008年5月に議会承認した際に、野党議員150人は抗議のため退席している。なぜならば、中国は9,000百万ドルの投資に対し、80,000百万ドルの利益配分が予想されており、野党はフェアな取引であると思っていないからである[3]。

契約を締結した当時の銅価格はUS$8,000/tonであったが、現在はUS$6,000/tonである(図3)。中国側からみると、9,000百万ドルの投資により、約5倍のリターンが期待できるので、採算性は非常に良い。(金利、リスクファクターを勘案する必要があるが・・・。) 中国とコンゴの契約の採算性を左右する要因は埋蔵量、価格であるが、価格は上下するので(図4)、価格が下落した場合、債務保証しているコンゴが中国に対しどのように借入金を返済するのか、というところに注目すべきである。

さらに、東コンゴ地域を拠点としている反政府軍も中国との契約を公表するよう要請していたが[8]、このインフラプロジェクトに従事している中水集団の中国人労働者が攻撃されてしまった[9]。コンゴ住民に反中国感情が高まり、脆弱な中国人労働者が攻撃の的になったと考えられる。

図3:銅とコバルトの埋蔵量・価格・売上













図4:銅価格、コバルト価格($/ton, 過去5年間)





















■資料

[1] 「Chinese companies sign $6 billion Congo deal」(Reuters, 2009/10/08)
[2]「中国の対コンゴ経済援助、アフリカ最大借款提供のねらい」(2007/11/30, Epoc Times)
[3] 「China’s ‘Angola Model’ comes to the DRC」
By Hannah Edinger & Johanna Jansson, Centre for Chinese Studies

「China to seal $9bn DR Congo deal」(2008/04/14, BBC)
[4] 「中国中鉄:コンゴに銅・コバルト生産の合弁企業設立を発表」(2008/04/23, China Press)
[5]「Chinese Companies Amend $9 Billion Congo Agreement (Update2)」(Bloomberg, 2009/10/08)
[6]「中国の民主コンゴへの融資」(DebtNet通信, 2008/12/14)
[7]
「Donors press Congo over $9bn China deal」(2009/02/09, Financial Times)
[8] 「コンゴで再燃した資源争奪戦争」(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版, 2008/12)
[9] 「Armed men attack Chinese firm in DR Congo」(2009/10/06, Xinhua)

ビデオ Newsnight: China $9bn Congo deal
Part 1, Part 2, Part 3


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2009/10/07

ナイジェリアで武装勢力(MEND) が投降

■ニュース
産油国のナイジェリアでは、2006年1月より、ニジェール・デルタ解放運動(Movement for the Emancipation of the Niger Delta :MEND)という武装組織が、石油生産施設やパイプラインなどを破壊したり、石油労働者を誘拐したりしていた。名ナイジェリアのUmaru Yar'Adua大統領は、2009年10月4日を期限として、武装解除に応じるならばこれまでの犯罪に対し恩赦(amnesty)し、職業訓練や助成金を与える---という取引をした。これまでに約6000人(全体の80%)が投降し、10月3日にはリーダー格が投降した。

ただし、MENDは次のように発表している。「リーダーが投降しても、代わりの者がリーダーになった。石油収入が正しく分配されていないという根本の問題が解決しないかぎり、停戦を終わりにして、攻撃を再開する。」

■解説
ニジェール・デルタ[1]は世界でも有数の産油地帯である[1]。ナイジェリアは、2008年の全世界の原油生産量の内2.7%、またOPECにおいては5.9%を生産している。それにも関わらず、人口 1億4000万人の90%は一日当たり2ドルで暮らしている。社会の格差、そして石油生産地域に石油収入が公平に分配されていない、という現実がある。

MEND[2]が初めて名乗り出たのは、2006年1月に4人の石油労働者を誘拐の犯行声明を出した時であった。目的は身代金ではなく、資源の管理・石油収入の分配を問題提起することであった、と報道されている[3]。それ以来、MENDは原油生産施設を破壊してきたため、原油生産量は、260万b/d(2005年)から170万b/d(2009年央)まで30%以上減少した[4]。現在の1ヶ月の収入の損失は1,000百万ドルと報じられている[5]。

専門家は次のことを危惧している[6]。①MENDは全ての武器を放棄しているわけでなく、隠しているはずである。②石油収入の分配、石油資源のマネジメント、貧困の問題などの根本の問題が解決されない場合、MENDは再び攻撃してくる可能性がある。

■コメント
石油収入の分配を問題視し、地方分権を強く求めているのは、ナイジェリア以外にも次の地域がある。--- イランのクルド地域、インドネシアのアチェ地域、英国のスコットランド地域、南部スーダン地域。 ナイジェリアで武装攻撃して権利を勝ち取った先例をつくれば、これらの地域にも飛び火しそうである。

ナイジェリアでは汚職が多いが、倫理観が高まるかどうか。また、国造りのために、忠誠心、愛国心が生まれるのか、注目したい。

和平が確実になれば、①油価の下げ要因になる。(ただし、油価を変動させる要因は、他にたくさんあるので、油価が下がるとは限らない。) また、②ナイジェリアの石油産業(特に上流部門)に参加する外国企業が増えるであろう。(たぶん第一号は中国)。

■参考資料
[1]図1











[2]MEND

[3]「Group claims responsibility for kidnap of oil workers in Nigeria」(2006/1/14, Xinhua News Agency
「LAGOS, Jan. 14 (Xinhua) -- A previously unknown group, which calls itself the Movement for the Emancipation of the Niger Delta (MEND), has claimed responsibility for this week's attack on oil installations in the Nigeria's Niger Delta and the abduction of four oil workers.
In a statement cited by Nigeria's The Guardian newspaper on Saturday, the group, who are already being trailed by security agencies and the navy, said they were not out for cash ransom but to bring the issues of resource control in the impoverished delta to the front burner. 以下略 」
 [4]図2














[5]「Q+A: What is at stake in Nigeria's Niger Delta?」(2009/10/3 Reuters)

[6]Video: Inside Story - Rebels in the Niger Delta - 05 Oct 09 Al Jazeera (24分と長いです。)



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2009/10/03

Dr.川原尚行 と 国際援助活動

スーダンで医療活動に従事されている川原尚行さんの講演会(10月1日@東京広尾 JICA地球ひろば)に参加したので、その報告をします。
川原さん(44才)は、九州大学医学部、同大学院、外務省医務官(@タンザニア、スーダン)を経て、2005年に外務省を辞職し、現在は「NPO法人ロシナンテス」の代表として、スーダンで医療協力、養護教育サポート事業(女子校建設と教育、障害児の医療と教育)、スポーツ事業(サッカーを通じた青少年育成)など、幅広く活動されています[1][4]。
講演会の演題は、「意志あるところに道は拓けるか? ~スーダンでのNGO活動~」で、これは高校卒業の際、担任の先生に送られた言葉「Where there is a will, there is a way.」の訳ですが、演題には「?」マークがついてました。まだ道半ばだからなのでしょうか、それとも彼の奥ゆかしさからなのでしょうか。1時間30分の講演では、政治、部族、医療、教育、NGO、援助などについて話されましたが、このブログでは、援助に関する話題を紹介します。

1.現地の人が自ら「必要だ」と考えさせる
川原さんが活動されているスーダンの村では、教育を受けられるのは男子であり、女子は水くみや家事をさせられている。川原さんは女子学校を単純に「与える」ことはしなかった。現地の人が議論し、女学校が必要であることを自らが結論付けて、日本大使館に援助を申請するように導いた。日本の援助で女子学校を建設しても、親が通学させなかったら、無駄になるからである。現地の親が女子の教育の必要性を本当に理解することが前提であり、時間がかかっても議論はそのための重要なプロセスであった。

2.信用を得る
日本人がスーダンの無医村で医療活動をするには、部族長の信頼と協力を得なければならない。川原さんは、同じ飯を囲んで食べ、女子供が遠くから汲んできた濁った水を提供された時も下痢覚悟で飲む。他のNGOが発電機、衛星TV、クーラー付きのトレーラーに住んでいるのとは、大違いである。
2009年3月、国際刑事裁判所(ICC)が人道に対する犯罪及び戦争犯罪の容疑で、アル・バシール大統領への逮捕状を発付した。大統領はスーダンで活動していた13のNGOの登録を抹消し、国外追放した。川原さんもスパイ容疑で拘束されたが、スーダンの役人に事情説明して、留まることができた。しかし、高給の医務官の職を辞めて、ほどんど無給のNGOとして働いている理由はついに理解できなかったようだ。スーダン人に「日本男児だから」と説明しても、分かってもらえなかったそうだ。しかし、最終的には川原さんの人柄、実績、そして部族長などの信頼があったから、活動が継続できたに違いない。

3.「売る」
川原さんの医療活動の一環として、井戸を掘り、清潔な水を村に供給することができるようになったが、その水を村民に無料であたえるのではなく、あえて、売っているとのこと。微々たる金額だと思いますが、薬を買う金に充当しているとのこと。村民に金を負担させることにより医療活動が持続可能になる。「目から鱗」でした。
なお、この井戸の浄水器購入費用の一部資金は、シンガーソングライターの浜田省吾氏が有志とともに設立した「J.S. Foundation」から資金供与を受けているとのこと[2]。

4.物と人
川原さんは、中古の医療器具をスーダンに持ち込んでいるとのことですが、メンテナンスをする医療技師にスーダンに来てもらっている。技師は、器具を直すだけでなく、スーダン人の技師に知識を教えている。


川原さんは、最後に「ハチドリのひとしずく~いま、私にできること~」の話[3]をされ、講演を終えた。日本に帰国した際は精力的に講演活動をされているので、中高生の子供さんを連れて参加されることを勧めます。「元気」をもらえますよ。

■参考
[1]スーダンでの活動 
    NPO法人ロシナンテス  川原医師のブログ
[2]浜田省吾氏/J.S. Foundation
[3]ハチドリのひとしずく~いま、私にできること~ YouTube
[4]医師・川原尚行「情熱大陸」 (毎日放送、2009年01月11日放送)







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