2009/10/12

中国はコンゴ民主共和国への融資額を減額する

■ニュース
2008年4月、コンゴ民主共和国(旧ザイール、以下「コンゴ」。)と中国は、インフラ整備と銅生産プロジェクトをパッケージにした融資契約(融資総額9,000百万ドル)を締結していたところ、2009年10月8日、駐コンゴ民主共和国中国大使(Wu Zexian)は、融資総額を6,000百万ドルに減額した、と発表した[1]。

■解説
1.コンゴと中国の契約について
(1) 主要経緯
2007年9月:コンゴと中国は経済援助協定に調印[2]。
2008年1月:コンゴと中国は融資契約(総額9,000百万ドル)を調印[3]。
2008年4月23日:中国中鉄、中水集団は、銅・コバルト生産の合弁企業設立を発表[4]。
2008年5月:コンゴ議会は契約を承認[3]。
2008年6月:IMF担当官は、「中国との契約を変更しない限り、減免、緊急融資はできない」と発言[5]
2008年8月:国際的なNGOがコンゴ政府に対して、情報を公開するよう要請[6]。
2009年10月:融資総額を6,000百万ドルにすることを発表。

(2)融資契約は、3つの融資区分(tranche)になっているようだ[7]。
①インフラ整備(図1)----(3,000百万ドル+3,000百万ドル)
・道路 (3,800~6,000 km)
・鉄道 (3,000~3,200 km)
・ダム/水力発電所 (2)
・病院 (32~42)
・ヘルスセンター (145~150)
・大学 (2)
・ホテル (?)

②銅・コバルト事業(図2) ----(3,000百万ドル)

3.世銀融資引き出しのための妥協案
最貧国の1つであるコンゴは、世界経済の低迷に伴う金属資源(銅など)の下落により外貨収入が落 ち込み、国際的な支援が必要になっている。支援の1つはOECD諸国による融資に係るパリクラブによる貸付金の減免・リスケ、世銀による融資(600百万 ドル)で、もう1つは中国によるインフラ整備、資源開発のための融資である。
IMFは、中国の融資は必要であるとしながらも、コンゴの債務(11,000百万ドル。今回の中国分を除く。)を増やさない方法を考えるように、コンゴに要請していたが、それに応えた形で中国からの融資を減額した。

図1-1:インフラ事業図












図1-2:コンゴの地図













図2:事業図



■コメント
契約の内容は公開されていない。報道から推測すると、上記のとおりインフラ整備への融資が2つのtrancheになっているところ、その1つ(3,000百万ドル)を外したものと考えられる。だだし、それを中止したのか、一時延期したのかは不明である。

コンゴは世銀からの緊急融資を確保することで、公務員などへの給与の支払いが可能となった。しかし、これは一時的な救済措置であるので、政治的不安定は続くと思われる。

中国の融資条件の詳細は公になっていないこと、また、中国にとって有利な契約になっているように野党議員(そして国民)が感じていることは、将来の不安定要因になると思われる。2008年5月に議会承認した際に、野党議員150人は抗議のため退席している。なぜならば、中国は9,000百万ドルの投資に対し、80,000百万ドルの利益配分が予想されており、野党はフェアな取引であると思っていないからである[3]。

契約を締結した当時の銅価格はUS$8,000/tonであったが、現在はUS$6,000/tonである(図3)。中国側からみると、9,000百万ドルの投資により、約5倍のリターンが期待できるので、採算性は非常に良い。(金利、リスクファクターを勘案する必要があるが・・・。) 中国とコンゴの契約の採算性を左右する要因は埋蔵量、価格であるが、価格は上下するので(図4)、価格が下落した場合、債務保証しているコンゴが中国に対しどのように借入金を返済するのか、というところに注目すべきである。

さらに、東コンゴ地域を拠点としている反政府軍も中国との契約を公表するよう要請していたが[8]、このインフラプロジェクトに従事している中水集団の中国人労働者が攻撃されてしまった[9]。コンゴ住民に反中国感情が高まり、脆弱な中国人労働者が攻撃の的になったと考えられる。

図3:銅とコバルトの埋蔵量・価格・売上













図4:銅価格、コバルト価格($/ton, 過去5年間)





















■資料

[1] 「Chinese companies sign $6 billion Congo deal」(Reuters, 2009/10/08)
[2]「中国の対コンゴ経済援助、アフリカ最大借款提供のねらい」(2007/11/30, Epoc Times)
[3] 「China’s ‘Angola Model’ comes to the DRC」
By Hannah Edinger & Johanna Jansson, Centre for Chinese Studies

「China to seal $9bn DR Congo deal」(2008/04/14, BBC)
[4] 「中国中鉄:コンゴに銅・コバルト生産の合弁企業設立を発表」(2008/04/23, China Press)
[5]「Chinese Companies Amend $9 Billion Congo Agreement (Update2)」(Bloomberg, 2009/10/08)
[6]「中国の民主コンゴへの融資」(DebtNet通信, 2008/12/14)
[7]
「Donors press Congo over $9bn China deal」(2009/02/09, Financial Times)
[8] 「コンゴで再燃した資源争奪戦争」(ル・モンド・ディプロマティーク日本語・電子版, 2008/12)
[9] 「Armed men attack Chinese firm in DR Congo」(2009/10/06, Xinhua)

ビデオ Newsnight: China $9bn Congo deal
Part 1, Part 2, Part 3


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