スーダンで医療活動に従事されている川原尚行さんの講演会(10月1日@東京広尾 JICA地球ひろば)に参加したので、その報告をします。
川原さん(44才)は、九州大学医学部、同大学院、外務省医務官(@タンザニア、スーダン)を経て、2005年に外務省を辞職し、現在は「NPO法人ロシナンテス」の代表として、スーダンで医療協力、養護教育サポート事業(女子校建設と教育、障害児の医療と教育)、スポーツ事業(サッカーを通じた青少年育成)など、幅広く活動されています[1][4]。
講演会の演題は、「意志あるところに道は拓けるか? ~スーダンでのNGO活動~」で、これは高校卒業の際、担任の先生に送られた言葉「Where there is a will, there is a way.」の訳ですが、演題には「?」マークがついてました。まだ道半ばだからなのでしょうか、それとも彼の奥ゆかしさからなのでしょうか。1時間30分の講演では、政治、部族、医療、教育、NGO、援助などについて話されましたが、このブログでは、援助に関する話題を紹介します。
1.現地の人が自ら「必要だ」と考えさせる
川原さんが活動されているスーダンの村では、教育を受けられるのは男子であり、女子は水くみや家事をさせられている。川原さんは女子学校を単純に「与える」ことはしなかった。現地の人が議論し、女学校が必要であることを自らが結論付けて、日本大使館に援助を申請するように導いた。日本の援助で女子学校を建設しても、親が通学させなかったら、無駄になるからである。現地の親が女子の教育の必要性を本当に理解することが前提であり、時間がかかっても議論はそのための重要なプロセスであった。
2.信用を得る
日本人がスーダンの無医村で医療活動をするには、部族長の信頼と協力を得なければならない。川原さんは、同じ飯を囲んで食べ、女子供が遠くから汲んできた濁った水を提供された時も下痢覚悟で飲む。他のNGOが発電機、衛星TV、クーラー付きのトレーラーに住んでいるのとは、大違いである。
2009年3月、国際刑事裁判所(ICC)が人道に対する犯罪及び戦争犯罪の容疑で、アル・バシール大統領への逮捕状を発付した。大統領はスーダンで活動していた13のNGOの登録を抹消し、国外追放した。川原さんもスパイ容疑で拘束されたが、スーダンの役人に事情説明して、留まることができた。しかし、高給の医務官の職を辞めて、ほどんど無給のNGOとして働いている理由はついに理解できなかったようだ。スーダン人に「日本男児だから」と説明しても、分かってもらえなかったそうだ。しかし、最終的には川原さんの人柄、実績、そして部族長などの信頼があったから、活動が継続できたに違いない。
3.「売る」
川原さんの医療活動の一環として、井戸を掘り、清潔な水を村に供給することができるようになったが、その水を村民に無料であたえるのではなく、あえて、売っているとのこと。微々たる金額だと思いますが、薬を買う金に充当しているとのこと。村民に金を負担させることにより医療活動が持続可能になる。「目から鱗」でした。
なお、この井戸の浄水器購入費用の一部資金は、シンガーソングライターの浜田省吾氏が有志とともに設立した「J.S. Foundation」から資金供与を受けているとのこと[2]。
4.物と人
川原さんは、中古の医療器具をスーダンに持ち込んでいるとのことですが、メンテナンスをする医療技師にスーダンに来てもらっている。技師は、器具を直すだけでなく、スーダン人の技師に知識を教えている。
川原さんは、最後に「ハチドリのひとしずく~いま、私にできること~」の話[3]をされ、講演を終えた。日本に帰国した際は精力的に講演活動をされているので、中高生の子供さんを連れて参加されることを勧めます。「元気」をもらえますよ。
■参考
[1]スーダンでの活動
NPO法人ロシナンテス 川原医師のブログ
[2]浜田省吾氏/J.S. Foundation
[3]ハチドリのひとしずく~いま、私にできること~ YouTube
[4]医師・川原尚行「情熱大陸」 (毎日放送、2009年01月11日放送)
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復興、住民主導目指す/国際NGOロシナンテス(北九州市)理事長・医師・川原尚行さん(河北新報社、2011/5/21)
返信削除http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1075/20110521_01.htm