2010/02/28

自動車リサイクル業者がアフリカに進出する

日本から多数の中古車がアフリカに輸出されていますが、現地でメンテナンスをしないと、いずれゴミの山を作ってしまいます。新車を製造するのは「動脈産業」ですが、それだけでは、いずれ限界がきます。資源は無限ではないからです。使える部品を有効利用する「静脈産業」が必要です。

会宝産業(金沢市)は、中古乗用車部品の輸出のコンテナ数が年間550本に上る日本一の企業ですが、2010年にケニアでリサイクル専用工場を稼動させ、中古車リサイクル事業を本格化させようとしています。

「海外の多くの国々では、日本の中古車はまさに宝物。それを日本では、潰してスクラップにしてしまっているんですよ。もったいないと思いましたよ」 (会宝産業 近藤典彦社長)

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【 ニュース 】

アフリカ、中東に合弁会社 会宝産業 [1]

自動車解体、部品販売の会宝産業(金沢市)は今年、アフリカや中東など海外8カ国で合弁会社を新たに設立する。既に営業しているタイ、ケニアを含め、海外の合弁会社を10カ国体制とする。自動車リサイクルの営業拠点と位置付け、中古車の部品を販売する。

近藤典彦社長によると、新設する合弁会社は南アフリカ共和国やガーナ、タンザニア、ヨルダンなどが候補地で、米国やロシアにも設立する計画だという。現在、同社の役員をアフリカに派遣し、現地の取引先との交渉を進めている。

同社は海外61カ国の取引先とネットワークをつくっており、合弁会社は中古車の部品販売のほか、現地で同社の自動車リサイクル事業のノウハウを伝える拠点とする。社員が現地に常駐することも検討しているという。

同社の2009年12月期の売上高は15億3千万円。同社は合弁会社の増設によって販路を拡大し、10年12月期の売上高は17億7500万円を目指す考えだ。近藤社長は「自動車リサイクルという環境に役立つビジネスを海外に広げることは社会貢献にもなる」と話している。


【 解説 】

1.会宝産業とはどんな会社?

(1)会社概要
設立: 1969年
資本金: 5,700万円
売上高: 2009年12月期 1,530百万円 [2]
社員数: 60名
URL: http://www.kaiho.co.jp/jp/
事業内容:使用済自動車の引取・解体・破砕前処理、中古車・中古部品の輸出販売など

図をクリックして拡大


















(2)海外ネットワーク

取引国:61ヶ国
海外の合弁会社:
合弁会社の役割は、中古車の部品販売の拠点、及び 自動車リサイクル事業のノウハウを伝える拠点。
①営業開始(2ヶ国):タイ(2008年7月)、ケニア(2009年5月)
②2010年:モンゴル、英国、南アフリカ、ガーナ、タンザニア、ヨルダン、米国、ロシアの8ヶ国を予定。


(3)同社の「強み」
・在庫システムのノウハウを持っている。[3]
・業界をまとめて、国内外において技術士を育成している。[4]


2.ケニアとの関係は?

2009年2月:近藤社長がケニアを初めて訪問。アフリカに自動車リサイクル工場を作ることをケニア政府高官に提案。(この時の話は末尾の参考2&3参照。)
2009年5月:ケニアに合弁企業「マイジ・カイホウ(ナイロビ)」を設立。ケニアの中古車販売会社と会宝産業との折半出資。同社は技術者を派遣し、リサイクル技術を指導している。[5]
2010年:リサイクル専用工場を稼動して中古車リサイクル事業を本格化する予定。


写真















【 コメント 】

アフリカに進出した日本企業/事業家で有名なのは、住友化学工業(タンザニアとナイジェリアで蚊帳を製造)[9]、柏田雄一氏(ウガンダでヤマトシャツを製造する「フェニックス・ロジスティクス」)[10]、佐藤芳之氏(ケニア・ナッツ社)[11]である。

数年後には、会宝産業は、発展途上国で単純労働者を雇用する会社ではなく、専門技師を育成する会社として、そのビジネスモデルが内外に紹介されるであろう。



【 参考文献 】

参考1:会宝お客様通信(2008/5/1) [6]

「解体業というマイナスのイメージを取り払い、業界全体が認められるようにしたい」ということ。「トヨタを代表とする日本の自動車産業は世界的に評価されている。この自動車製造業を動脈にたとえれば、我々は自動車をリサイクルする静脈産業である。廃車はゴミと見られてしまうが、希少金属を含有する有益な資源である。都市鉱山と呼ばれるように、自然の資源に比べてはるかに高い含有率と聞く。有効に活用すれば宝の山だ。環境問題が叫ばれるなか、資源は循環させなければならない。静脈産業を築くために、業界全体で協力し合っていく」

「業界全体の底上げで重要なのは、解体に関するノウハウの共有である。自動車メーカーには組み立てマニュアルはあっても、解体するための手順書なんてない。これは我々のような中古部品販売業者が長年培ってきたノウハウである。一定の品質水準に達した部品だけを市場で流通させるにはノウハウの共有が不可欠だ。解体作業のマニュアル化に取り組み、同業者と連携して「自動車リサイクル技能者」制度を作った」

「IREC(インターナショナル・リサイクル教育センター)という研修施設も設け、海外の取引先からも受け入れている。私自身も講師の一人として教鞭をとって授業を行っている。中国などから、延べ16 人の研修生を受け入れてきた。2 月には各国の大使などを招いて2回目となる「国際リサイクル会議」を開いた。こうした取り組みを通じて、意識改革や業界全体の底上げを図る」


参考2:会宝お客様通信(2009/3/1) [7]

ケニア当局は1月に中古部品の輸入禁止を発表しました。即日実施としたのですが、その影響の大きさからか、暫定的に延長となっています。私は絶好の機会と考え、「なぜ、輸入禁止の措置を取るのか」と、聞きました。「ケニアには現在、毎月約25億円の新品・中古部品が輸入されている。中古部品の中にはゴミと思われるようなものも多々混じっている。先進国の不用品の捨て場所になっているのではないか」との答え。
アフリカに自動車リサイクル工場を作ろう、静脈産業はそこまでしてはじめて産業としての地位を確立する、というのが私の持論、直ちにそのことを訴えました。「その考えは納得できる、すぐにでもプランを持ってきて欲しい」と驚くような返答を得ました。


参考3: 「NPO金沢マチナカ大学」のブログ引用 [8]

ケニアでは日本や海外から多くの中古車を輸入しているそうです。その中古車に粗悪品が混ざっていてすぐ使えなくなり、廃車がどんどん増えているそうです。中古車の輸入禁止に踏み切ろうとしていたケニア政府を近藤社長は思いとどまらせたうえ、まったくあたらしい提案をしました。
輸入する中古車にリサイクル税を課しましょうと勧めたのです。たとえばケニアでは日本から毎年4万台の中古車が輸入されます。それに1台1万円の税金を徴収すればぜんぶで4億円の資金が生まれる。4億円あれば廃車を処理する工場をつくることができる。工場をつくれば雇用が生まれる。
人びとは経済的に自立し、町からは廃車が消える。廃車を資源へと生き返らせる循環型社会が実現できるのです。
このアイデアをケニア政府は歓迎し、ぜひ近藤社長から大統領に話してほしいと頼まれたそうです。


[1] 北國新聞 (2010/2/23)
http://www.hokkoku.co.jp/subpage/K20100223302.htm
[2] 売上と利益の推移
http://www.kaiho.co.jp/jp/profile/results.html
[3]「インターネットで国際リサイクルネットワークを構築」(テレコム・フォーラム、2007/12)
http://www.jtua.or.jp/telecomforum/PDF/0712/200712senrya02.pdf

[4]2003年9月、RUMアライアンス(ReUseMoterizationAlliance)を設立し、代表理事に就任。自動車リサイクル技能士制度を創設するなど、環境・自動車リサイクル推進の啓蒙活動を行っている。国際リサイクル教育センター(IREC)を2設立し、2007年8月より研修を開始した。
URL:http://www.rum-alliance.com/
プロモーションビデオ:http://www.rum-alliance.com/profile/video/
近藤典彦社長の発言:末尾参考1参照

[5] 技術者のブログ http://www.kaiho.co.jp/jp/blog-staff/kenya/
[6]会宝お客様通信(2008/5/1)
http://www.kaiho.co.jp/jp/kaiho/pdf/kaihonews0805.pdf
[7]会宝お客様通信(2009/3/1)
http://www.kaiho.co.jp/jp/kaiho/pdf/kaihonews0903.pdf
[8]タテマチ大学ブログ
2009/9/13: 会社の社員トイレを毎日1人で掃除する社長
2009/9/13: 人生がちょっと変わった気がします
http://www.tatemachidaigaku.jp/blog/2009/09/post_77.html
http://www.tatemachidaigaku.jp/blog/2009/09/post_79.html

[9] http://www.sumitomo-chem.co.jp/csr/africa/
[10] http://www.aots.or.jp/jp/kikanshi/pdf/303_05.pdf
[11] http://www.path.ne.jp/t-gaigo/kaiho114/1.pdf



その他 参考文献

「リスクこそ大きな利益を生み出す! クルマのリサイクルで年30%成長」 (日経ビジネス On Line、2007/6/1)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20070531/126062/?P=1&ST=spc_smb

「【隠れた世界企業】58カ国に中古エンジン売る」 (日経ビジネス On Line、2009/6/12)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090609/197117/?P=1

自らITを活用 独自の道を切り開く中小企業 (IT Leaders、2009/6/24)
http://it.impressbm.co.jp/e/2009/06/24/891

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