2009/09/24

マダガスカルの政情不安:二人の大統領

■ ニュース
マダガスカルでは、2009年3月、クーデターによる大統領交代があった。近隣諸国は新旧大統領が協力して国を運営していくよう仲介しているが、新旧大統領のどちらが実権をとるかについては合意されておらず、政治は混迷している。9月23~30日にニューヨークで開催される国連総会には、新大統領が招待された。[1]
(注:ここで「新大統領」というのは、現在、大統領職に就いているAndry Rajoelina氏を指すが、彼は国際的には承認されていない。)

■ 解説
マダガスカルで政権交代があって6ヶ月が経過した。これまでの経緯をまとめておく。


1.新旧大統領について[2]
(1) Marc Ravalomanana (元大統領)
1949年12月、貧農に生まれた。酪農事業を成功させ、
1999年~2002年、首都Antananarivo知事。
2001年12月、大統領選挙。23年間続いたRatsiraka大統領(マルクス主義者)に勝つ。
2002年5月、大統領に就任。市場経済を導入し、インフラを整備したが、貧富の差が大きくなった。
2009年3月、クーデターにより大統領職を辞任し、現在南アフリカに滞在中。

(2) Andry Rajoelina (現大統領、ただし国際的に承認されていない)
1974年5月生まれ。デイスクジョッキー、事業家(放送局などを持つ)。
2007年~2009年、Antananarivo知事。
2009年3月、大統領に就任したことを宣言した。当時34歳であり、憲法上大統領に就任できない。

2.経緯について [3]
2008年12月、政府はAndyが所有するViva TV局を封鎖。Andy Rajoelinaは大統領との対決路線を鮮明にしていく。
2009年1月31日、大統領を辞任するよう要求。
2009年2月、政府はAndry Rajoelinaを知事職を解任
2009年3月17日、Marc Ravalomanana大統領を追放し、Andry Rajoelina自ら大統領宣言。軍の支援を受け、高等裁判所も支持。議会閉鎖。国際的な反応として、African Union、SADCはマダガスカルの加盟停止にした。米国は人道的支援以外の援助は中止している。
2009年6月、Marc Ravalomananaの欠席裁判(禁固4年)
2009年8月、隣国が仲介し、Power Sharing Agreement(モザンビークの首都Maputoで協定に合意。)により、暫定的な連合(transitional coalition)の枠組みを作ることに合意した。その協定では、全ての関係者が合意することを前提で、現大統領に首相を任命する権限を与えた。
2009年9月、3つの野党もMarc Ravalomananaも合意していないにもかかわらず、Andry Rajoelinaは仲間を首相に添え、組閣した。野党は別の内閣をつくる、と主張している。

3.外国企業への影響など
韓国大宇ロジスティックスの農地開発契約が反故にされた[4]。また外国からの観光客が減少し、経済を悪化させている。


■ コメント
アフリカ諸国において、まともな選挙により政権交代するのは、極めて稀なことである。政権交代は、軍の支援をうけてクーデターによるものが多い。一方、国際社会はいつまでも放置できないので、国民の反応をみながら、新政権を承認するか決めることになる。マダガスカルにおいては、隣国による国際的な仲介は、誰が主導権をとるかということを決めることができないので、機能していないようだ。

■参考文献
[1] ニュース
  ①「Madagascar cabinet 'breaks deal' 」 (2009/09/08, BBC)
  ②「Madagascar Government Doesn't Oppose Negotiations, Says Minister」(2009/09/22, VOA)
[2] 新旧大統領の経歴
  ①BBC
  ②Wikipedia(Marc Ravalomanana)
  ③Wikipedia(Andry Rajoelina)
[3]マダガスカルの最近の経緯
[4]「『新植民地主義』を回避するCSR調達」(2008/12/08,藤井敏彦)


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1 件のコメント:

  1. FTによる「大宇ロジスティックス社」の記事は誤報だったようです。詳細は以下をご参照下さい。

    新国際情勢下の地下資源と農業資源:日本・アフリカ関係へのインプリケーション by 小松啓一郎 (53/66頁 農業分野での事例:「大宇ロジスティックス社」誤報問題)
    http://www.seijo.ac.jp/pdf/faeco/kenkyu/187/187-komatu.pdf

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