2011/09/03

新しい段階に入った中国とアフリカ

中国とアフリカの関係が新たな段階に入りました。これまで中国政府は、アフリカの資源や市場を確保するため、相手国政府との関係を築き、企業が容易に進出できるようにしてきました。アフリカ諸国からみれば、中国の役人や企業人と交流はあったのですが、個人としての中国人との交流の度合いは小さかったと思われます。これからは、中国政府は中国NGOとアフリカNGO間との交流を促進するように後押し、中国・アフリカの関係を更に密接化させることでしょう。


【 ニュース 】

中国・アフリカ民間フォーラム「ナイロビ宣言」を発表 [1]

第1回中国・アフリカ民間フォーラムが30日、ケニアの首都・ナイロビで閉幕し、代表らは2日間にわたる会議で「ナイロビ宣言」を起草、発表しました。

フォーラム開催期間中、代表らは「中国とアフリカ間の民間対話と協力」、「中国とアフリカの気候変動と食糧安全」、「中国とアフリカの非政府組織の公信力と透明性」、「中国とアフリカの伝統文化の保全と教育の発展をいかに進めるか」などの議題について踏み込んだ交流を行い、出席者らは「第1回中国・アフリカ民間フォーラムは目覚しい成果を収めた。双方の非政府組織の共同努力の下、中国とアフリカの民間レベルの友好交流はより緊密になるだろう」との考えを示しました。

また、フォーラム後に発表された「ナイロビ宣言」は、フォーラムの成果を全面的に示し、高く評価するものとなりました。宣言は「今後も絶えずメカニズムの健全化を図り、同時にフォーラムの内容を充実化し、実務協力を着実に推進して、中国・アフリカ民間フォーラムを成果ある交流と協力のプラットフォームとして作り上げ、中国とアフリカの友好協力のために活力を注ぐ」とした上で、「新しい時代背景の下、中国とアフリカの伝統的な友情は新しいチャンスと試練を迎えることとなり、双方の民間交流はすでに中国とアフリカの友好交流の重要な一部となっている。中国とアフリカのすべての民間組織は『民間の友好交流と実務協力を促進する』原則に基づき、中国とアフリカの民間交流を進め、中国とアフリカの人民が真の意味で『全天候の友人』になり、『良きパートナー』になるという目標を、実際の行動を以って実現する」としました。

写真(クリックで拡大)


【 解説 】

この項においては、フォーラムの概要と背景、そして「ナイロビ宣言」の概要を書く。

1.「第1回中国・アフリカ民間フォーラム」の概要 [2]

開催日:2011年8月29~30日
場所:ケニア、ナイロビ
主催:
  ・中国民間組織交流促進会(CNIE: China NGO Network for International Exchanges) [3]
  ・Kenya Non-Governmental Organizations Coordination Board [4]
テーマ:
中国とアフリカのNGOがパートナーシップを発展させ、友好を促進させること。
参加者数:200名以上
  ・中国から(18のNGO):50名
  ・ケニアから:100名
  ・ケニア以外のアフリカ諸国(18ヶ国)から:50名


2.経緯

(1) 基本的方向性

民間交流の重要性は、2006年1月に発表された「中国の対アフリカ政策文書」[5]において示されているので、関連箇所を引用する。

(三)文化交流
アフリカ各国と締結した文化協力協定と関連の執行計画を実行に移し、双方の文化主管官庁の日常的往来を続け、双方の文化人・芸術家及びスポーツ選手の交流を深める。双方の文化交流計画と市場の需要に基づいて、民間団体や機関によるさまざまな形の文化交流イベントを積極的に誘致、推進する。(中略)
(八)民間交流
中国アフリカの民間団体の交流を奨励するとともに積極的に指導する。特に青年、女性の交流に力を入れ、双方の人民間の理解、信頼と協力を増進する。ボランティアによるアフリカ諸国での奉仕を奨励し、指導する。

(2)最近の動き

フォーラムの中国側の主催者である中国民間組織交流促進会(CNIE)は、2009年からアフリカ諸国を訪問し、2010年には数回お互いを訪問し[6]、今年2011年に、このフォーラムの共同主催した。また、China-Africa Brightness Actionという医療プログラム(=20人以上の中国人医師がアフリカ諸国を訪問し、無料で500~1000人白内障の手術をするプログラム)を支援をしている。


3.「ナイロビ宣言」の概要

宣言の全文がChina Dailyに掲載されているが[7]、(1)今回、何が話題になったのか、(2)こらからの対話の枠組みについて、合意された。なお、第2回中国・アフリカ民間フォーラムは2012年に北京において開催される。

(1)議題になったこと

①民間人の対話と協力
②気候変動と食料安全保障
③NGOの信頼性と透明性
④NGOと政府の関係
⑤組織と社会
⑥伝統文化の保存と、教育開発の促進
⑦開発女性と若者の役割と、HIV/AISとの闘いの経験の共有

(2)対話の枠組み

農業、衛生、環境、教育、文化、起業、女性・若者の権利拡大の分野について話し合う。


【 コメント 】

日本にはアフリカに関係したNGOが多数存在しているので[8]、民間の交流に関しては中国のNGOよりは活動している---と言い切っても間違いないであろう。

中国はNGOを積極的に資金的に支援することが予想される中で、日本のNGOが今後も活発な活動ができるかどうかは、結局のところ、資金があるかどうかによる。NGOの収入源は、事業収入、個人や企業の寄付金、政府の補助金であるが、事業収入や寄付金の増額は現実的でないので、やはり政府補助金の増額に期待するしかないだろう。

政府がODAなどを実施する政策的目標は、「日本のプレゼンス」を高めて、国際社会における「発言力」を高めることだと思うが、①現地政府へのODA、②国際機関への拠出金、③NGOへの補助金などに資金を配分するにあたっては、費用対効果が高いものを優先することが肝要である。さらに、評価レポートを公表して、透明性を確保すべきであると考える。

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【 参考文献 】

[2]

2 件のコメント:

  1. MIYAさん、お久しぶりです。今日は、世銀が中国にアフリカに生産拠点を移すよう提言したというニュースをエントリーしました。私には、どうも世銀の動きがうさんくさく感じられるのですが、いかがお考えでしょうか。

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  2. 先生のブログを毎日拝読しています。参考になります。お問い合わせ頂いた件、先生の記事のコメント欄に書き込みました。
    http://africaryu-kon-roku.blogspot.com/2011/09/blog-post_07.html

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