2010/09/25

偽造医薬品への対抗策 (BOPビジネスの事例)

ビジネスの基本は、人が必要としているものを供給し、人が困っていることを解決することです。その意味では、発展途上国には、無数のビジネスチャンスがあるはずです。

今回のエントリーは、世界中で問題になっている偽造医薬品の問題を取り上げます。根本的な解決策は製造工場を摘発することですが、その国の政府が本気にならなければどうしようもありません。次善の策は、消費する国で偽造医薬品を的確に見つけ出すことですが、それをビジネスにしている会社がアフリカに存在します。


【 ニュース 】

・マラリヤあるいは結核の偽造医薬品を飲んで年間70万人が死亡している。
・2010年7月、ナイジェリア政府は全ての医薬品にmPedigreeが提供する偽造品検証システムを採用することを決めた。[1] 


【 解説 】
(画像をクリックすると拡大。)

1.偽造医薬品の流れは?
図1


2.どの程度蔓延しているのか?
図2

3.どの程度の被害があるのか?
図3

4.検証方法
(1) 従来方式
図4

ビデオ1:偽造医薬品のサンプルテストの現場 (2分13秒)[2]

※医薬品の検査に使っている青色の装置は、TruScanという。[3]



(2)SMS方式
医薬品にスクラッチ印刷された固有の番号がついている。その番号を携帯電話のショートメッセージサービス(SMS)に送ると、正規医薬品か偽造医薬品かの返事がすぐに送られてくる。また、この方式をサプライチェーンの各段階で使うことができる。システムのセキュリティ・インフラストラクチャーはHewlett Packardが提供している。[1]

図5


ビデオ2:Mpedigree (1分)



5.開発者

このシステムを開発したのは、Bright Simons氏(ガーナ人、29才?)とAshifi Gogo氏(ナイジェリア人、28才?)である。現在、Simon氏はMPedigree [4]のディレクターであり、Gogo氏はSproxil [5]のCEOである。二人の考え方に違いが生じたため[6]、Gogo氏はスピンオフしてSproxilを設立した。

写真


【 コメント 】

1。「私の問題」

私はこのブログを書くまで、偽造医薬品について無関心だった。中国で偽造された粉ミルクを飲んだ赤ちゃんが死亡した、という記事[7]を読んだ記憶があるが、気にも止めなかった。なぜならば、それは「私には関わりの無い問題」だったからである。

9月22日、国連においてミレニアム開発目標(MDG)サミットが閉幕したが、世界の人々がMDGを「私の問題」と考えるようなキャンペーンをすることが重要だと思う。

2。MPedigreeに学んだこと

BOPビジネスをする際に重要なことを、二人のビジネスモデル(MPedigree)から学んだ。それは、
①解決しなければならない問題を実感し、「私の問題」として認識すること。そのために、実際に現地(アフリカ等)に滞在したり、現地の事情を周知している人物から教えてもらうことが必要である。
②既存の技術を最大限利用することにより、費用を最小化できる。
③先進国にとって最も良い方法が、発展途上国にとって最もよい方法とは限らない。

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【 参考文献 】

1.引用文献
[1]Africans text message to check if drugs are real (Yahoo News、2010/8/20)

[2] Counterfeit Prescription Drugs a Growing Threat (VIDEO) (2010/9/14)

[3] TruScanの紹介
ビデオ: http://il.youtube.com/watch?v=ivxZYSo6E4g&feature=related
製造会社: http://www.ahurascientific.com/material-verification/products/truscan/index.php
[4] http://www.mpedigree.org/home/
[5] http://sproxil.com/
[6] http://mobileactive.org/no-fake-drugs-battling-pharma-counterfeiting-sms-and-mobile-tech

Bright Simons氏のビデオ:http://www.weforum.org/en/ip/ittc/mHealthSummit/index.htm
Ashifi Gogo氏の録音:
http://www.podtrac.com/pts/redirect.mp3/div0of2fqb1zz.cloudfront.net/rice-2009-mpedigree-logistics.mp3

[7] 中国粉ミルク汚染問題 牛乳納入基準を満たすために集乳業者がメラミン添加 (農業情報研究所(WAPIC))


2.その他資料
COUNTERFEIT PRODUCTS (United Nations Office on Drugs and Crime)
粗悪ニセ薬、監視の目 (朝日新聞 as Para、2008/3/7)
強力なセキュリティ・チームを編成し偽造犯に立ち向かう (ノバルティス、2006/03/31)

文章に含まれないキーワード:
Counterfeit カウンターフィット fake 偽薬 Radio Frequency Identification (RFID)

1 件のコメント:

  1. Sato log - Buzzaholic Meeting (2010.11.30 偽医薬品を追い出せ)をご覧下さい。コメントのところも。
    http://buzzaholic.jugem.cc/?eid=1411

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