2010/09/12

目的をもった援助には、終わりがある

今回のエントリーは、「国の予算は効率的に使わなければならない」、ということがテーマです。いつか書いてみようと考えていたのですが、そのテーマに結び付くようなアフリカのニュースが見つかりました。


「援助」といってもいろいろあり、官が民を援助したり、先進国が発展途上国を援助しています。気をつけなければならないことは、
①援助することが「目的」になってはいけませんし、
②援助は期間限定であるべきです。

もし官が民を援助することが目的ならば、官は民に天下りを送り続けるでしょうし、官(=特殊法人など)は永久に存続し、民は官に依存するようになり競争力がつきません。

もし先進国が発展途上国を援助することが目的ならば、援助は永遠に続くことになり、発展途上国は自立の機会を逃すことになりかねません。

もし私が「事業仕訳人」だったら、行程表(road map)を作らせます。特殊法人の存在に係る行程表、補助金にかかる行程表、あるいは、個別の援助プロジェクトに係るの行程表です。検証する項目は5つです。
①目的:何を達成したいのか?
②手段:その目的を達成するための最善の手段か?別の手段はないか?
③期間:その目的を何年で達成したいのか?
④予算:その目標を達成することにより得られる利益(メリット)と費用(コスト)を比較して、利益のほうが大きいか?
⑤実現可能性:その目的は、想定している手段、期間、予算で達成することができるか?

こうすれば、「事業仕訳」をシステマティックにできるでしょう。

さて、今回紹介するのは、「国境なき弁護士団」(Avocats Sans Frontieres) です[1]。「国境なき医師団」(MSF)は有名ですが、これは弁護士/法律家の話です。私は、援助の期限を設定していることに、注目しました。
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【 ニュース 】

VOA「Rwandans Receive Free Legal Aid」(2010/9/1) [2] の要約

「国境なき弁護士団」(本部:ベルギー、1992年設立)は、4年間の『ルワンダ法律援助プロジェクト』を任されており、50人以上の弁護士が貧しい人々のために法律相談を受けている。

相談者の80%は、土地の所有権に関する相談である。1994年のルワンダ虐殺事件の時に隣国に逃げた人が、帰国してみると昔住んでいた住居に他人が住んでおり、土地を耕している----という問題である。その他に、未婚女性が子供の養育費を同居していた男性に請求するような案件もある。

2012年にルワンダの事務所を閉鎖した後は、政府が運営する法律事務所に引き継ぐ予定である。「国民が法律相談できるようになったことは、国が発展している兆しである」、と法律事務所長は述べた。



【 解説 】

1.「国境なき弁護士団」について

・「国境なき弁護士団」は、現在、ルワンダ以外に、アルジェリア、ブルンジ、コンゴ民主共和国、東チモール、イスラエル/パレスチナにおいて事務所を開設している。ルワンダ、アルジェリア、ブルンジ、コンゴ民主共和国では、フランス語が公用語である(公用語であった)ので、ベルギーの団体が援助しやすい環境にある。

・年間の予算は520万ユーロ(約560百万円)で、数カ国から資金を拠出してもらっている。(図1)
・参議院憲法調査会は、2002年に「国境なき弁護士団」を訪問しているので、その報告書が読める。[3]
・今回紹介した「国境なき弁護士団」は、ベルギーを本部に置く Avocads sons border であるが、その他に、米国に本部を置く Lawers without Border [4]がある。




2.日本の法制度整備支援

JICAは、中国、モンゴル、カンボジア、インドネシア、ラオス、ベトナム、ウズベキスタンにおいて、「法制度整備支援」を実施している。ベトナムにおいては、裁判官、検事、弁護士各1人を常駐させたほか、法学者も短期派遣した。ベトナムの起草グループが作った民事訴訟法、改正民法、改正破産法のたたき台に対し、日本側が助言を行い、完成させた。また、カンボジアにおいては、「民法と民事訴訟法は日本の裁判官や弁護士、学者など専門家が99年から現地に赴き、現地の事情を勘案しながらイチから作成し、カンボジア側と協議を重ねて作り上げた。[5]

3.中国の取り組み

中国もアフリカ諸国と法律の協力を強化するため、「中国アフリカ協力フォーラム」(“Forum on China-Africa Cooperation - Legal Forum”)を開催している。一回目は、2009年12月にカイロで開催しており[6]、二回目は2010年9月に北京で開催される。[7]


【 コメント 】

外国のNGOが実施している援助の費用を調べるのは比較的簡単である。例えば、「国境なき弁護士団」は年次報告書を公開しており、経費が公開されている。

一方、日本の援助の費用を調べるのは、相当困難である。例えば、外務省は「法制度整備支援」に関する説明書[8]を公開していても、費用については、何も書いてないのである。


【 参考文献 】 
[1] Avocats Sans Frontieres
http://www.asf.be/index.php?module=home〈=en
[2] VOA「Rwandans Receive Free Legal Aid」(2010/9/1)
http://www.voanews.com/english/news/africa/central/Rwandans-Receive-Free-Legal-Aid-101944468.html
[3] 参議院 イタリア・ベルギー・フランスにおける憲法事情に関する実情調査
http://www.sangiin.go.jp/japanese/kenpou/ibf/ibf_chosa01.htm#mokuji
http://www.sangiin.go.jp/japanese/kenpou/ibf/ibf_chosa08.htm
[4] http://www.lawyerswithoutborders.org
[5]
松島みどりコラムより
http://www.matsushima-midori.jp/column/2007/070319.html
財団法人国際民商事法センター(カンボジア法整備支援)
http://www.icclc.or.jp/greet/index.html
[6] http://www.focac.org/eng/dsjbzjhy/hxxd/t648400.htm
[7] http://japanese.cri.cn/881/2010/09/10/141s163624.htm
[8] 法制度整備支援に関する基本方針 (外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/keitai/gijyutsu/houseido.html

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