2009/12/23

COP15 コペンハーゲン協定

COP15(12月7~18日@コペンハーゲン)が終わりました。私は以前「Climate Justice (気候正義)」のエントリーにおいて、「合意形成は非常に困難であると考える。」と書きましたが、やはり京都議定書のような拘束力がある条約は採択されませんでした。しかし、米国、中国、インド、ブラジルなど26ヶ国が「コペンハーゲン協定」(Copenhagen Accord)という協定に合意し、閉会式において他の国が「留意」(take note)しました。協定書には、先進国は発展途上国に資金援助ことが盛り込まれましたので、日本人一人あたりでいくらの負担になるのか試算してみました。


【 ニュース 】

コペンハーゲン協定(第8条)の要約は次のとおり。[1]
・先進国は、2010年~2012年にかけてUS$30 billion(3年間で2,700億円)を負担する。その金額は、緩和策(mitigation)と適応策(adaptation)のために使われるが、その内、適応策のために配分される金額は、気候変動に最も脆弱な発展途上国(最貧国、島嶼国、アフリカなど)に優先的に使われる。
・さらに、先進国は、2020年まで年間USD 100 billion (毎年9兆円)を負担する。
・「コペンハーゲン緑・気候基金」(Copenhagen Green Climate Fund)を通じて、使われる。












【 解説 】

・協定の原文の冒頭に「The Conference of the Parties, Takes note of the Copenhagen Accord of 18 December 2009」に書かれており、take noteというのは留意という意味であり、承認した訳ではない。各国は議会で議論することになる。

・報道によると、先進国による援助は次の3つの段階に分かれる[2]。
①2010~2012年:3年間で30,000百万ドル
②2013~2015年:毎年50,000百万ドル
③2016~2020年:毎年100,000百万ドル 
(総額:680,000百万ドル)(下図参照)

・合意書には、どの国が、いくら負担するのか書かれていないが、日本人一人あたりの負担金を試算してみた。前提は、
①京都議定書附属書Ⅰ国(先進国)が負担し、
②GDP比率で分担(日本は11.3%)し、
④為替レートは90円/ドルとした。

結果は、日本の負担金は、赤ん坊から老人まで、約54,000円/人になった。総額では、日本の負担金総額は6兆9000億円になる。(下図クリックで拡大)












・協定は、法的拘束力がないので、スーダンの大統領補佐官 Nafi Ali Nafi氏が、先進国の約束を拘束力をもたせるために、書面に署名するようにせまったが、受け入れられなかった[3]。

・当初アフリカ諸国は、毎年400,000百万ドルを要求していたが、減額に応じた。アフリカ諸国の交渉を任されているエチオピアのMeles Zenawi首相は、この金額は公平であると発言している[4]。

・コロンビア大学のジェフリー・サックス教授とは次のように発言している[5]。
①この協定には法的拘束力がない。同様に、先進国がこれまで開発援助をコミットしてきたが、多くのケースは口約束であった。
②オバマ大統領は、米国民に対し発展途上国を援助する責任があると説明したことがないことから判断すると、彼には政治的決意がない。
④クリントン国務長官が、先進国が毎年100,000百万ドルを支出することを発言したところ、米国議員やメディアは反対した。


【 コメント 】

COP15が完全な失敗だったのか、失敗でなかったのか? 個人の認識の違いであろう。コップ(COP?!)の中にある水を見て、「半分しか入っていない」と考えるのか、それとも「半分も入っている」と考えるのかである。いわゆる「half full or half empty」の問題だ。

日本政府と産業界はこの資金の使い方について、早急に戦略をたてるべきである。
①発展途上国にとって、気候変動がどのような悪影響を及ぼしているのかを把握する。
②適応策として、どのようなプロジェクトが必要なのかをリストアップして、優先順位をつける。
③「ひも付き」にするかどうかを判断する。「コペンハーゲン緑・気候基金」が資金の流れを管理するはずだが、もし日本が分担金の請求書を受け取り、そのまま送金するならば、それはあまりにも馬鹿馬鹿しい。金額が大きく、日本の財政に余裕がないことを考えれば、背に腹は変えられないので、「ひも付」にするのもやむを得ないのではないか。「災い転じて福となす」戦略を考えるべきである。もちろん、透明性確保し、日本企業間の入札が必要なことは言うまでもない。

菅直人副総理は2009年11月に、次のように発言されている[6]。
「外需を内需に結びつけることが重要だ。幹線道路網をつくろうとしているインドのように、経済成長している新興国はインフラ整備を必要としている。相手国に政府として経済援助をしたうえで、事業は日本の企業が受注する。そうすれば収益として国内に戻ってくる。そういう内需拡大もある。単に製品を輸出するだけではなく、日本が最も得意とするインフラ整備、まちづくりで外国を手伝うこともできるのではないか。今後策定する成長戦略にはこうした分野も入る可能性がある」

中国やインドなどは自らを発展途上国として位置付けているので、資金負担しないと思われる。そうであるならば、日本がアフリカ諸国などで行うプロジェクトに口をはさんで欲しくないし、援助に係る事業にも参加する資格はないものと私は考える。

気候変動に関する全てのプロジェクトが対象になるはずなので、植林、太陽光発電、風力発電、水不足対策など全て含まれる。そのため、これまでJICAが無償援助として実施していたものは、有償にできるのではないだろうか。


【 資料 】

[1] コペンハーゲン協定(Copenhagen Accord)
[2] 資金援助の年別金額
①「Africa sought real climate funds in Copenhagen」(Sudan Tribune, 2009/12/19)
②「Copenhagen talks: Update on the positions」(Space Daily, 2009/12/16)
[3] 「African Leaders Renew Call for Binding Climate Deal」(Journal of Turkish Weekly, 2009/12/21)
[4] 「Copenhagen: Africa picks up the tab」(The East African, 2009/12/21)
[5] 「Obama as Climate Change Villain (by Jeffrey D. Sachs)」(Journal of Turkish Weekly, 2009/12/21)
[6] 「デフレ日本、どう打開 菅副総理に聞く」(朝日新聞, 2009/11/23) (ネットでは見られない。)

その他
COP15のホームページ 
気候変動枠組条約(UNFCCC)のホームページ 
「山本敏晴の日記」(2009/12/20) ★ お勧め


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