2010/06/03

CSR : 企業による寄付

今回のエントリーでは、「企業による寄付」についてまとめてみました。きっかけは、「会宝産業」という石川県の中古車、中古部品の輸出販売を行う企業が始めた『元気ライスプロジェクト』(Genki Rice Project)です。

会宝産業については、本年2月に、「自動車リサイクル業者がアフリカに進出する」 というエントリーでとりあげましたが、ユニークで魅力的な会社です。

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【 ニュース 】

2010年5月6日、会宝産業は『元気ライスプロジェクト』を開始した[1]。以下同社の説明を引用する。


●プロジェクトの簡単な流れ
①一般の方から「元気な笑顔の写真」をメールで送ってもらう。(入会金など無い。)
②集まった写真をお米に換算する。(1人の笑顔の写真1枚でお米1000粒。)
③お米がある程度の量になったら発展途上国へ送る。(第一候補はバングラディッシュ。送るお米は会宝産業が負担する。)
④将来的には現地の農業支援にも貢献したい。

●「元気な笑顔の写真」を送る理由
①発展途上国に馴染みのない方に、興味・関心を持って頂くため。
②一般の方と共にこのプロジェクトを広めていくことで、中小企業1社では成し得ない貢献に繋がると考えているため。


【 解説 】

1.「企業による寄付」は、図1&2のようなフローチャートに描けるが、ポイントは3つある。

(1)企業は何を寄付するのか?
(2)企業は消費者/一般大衆/社員を取り込むのか否か? 
(3)企業が消費者などを取り組む場合、消費者は何をするのか?



①企業が独自に、お金を寄付するケース
・コカ・コーラ社は、アフリカで飲料水を確保するプロジェクトに、6年間で3000万ドル(27億円)を寄付している。[2]
・武田薬品は、「世界エイズ・結核・マラリア対策基金」に、10年間で10億円(年間1億円)を寄付している。[3]
・パタゴニアは、「売上の1%か利益の10%の高いほう」を環境団体に寄付している。[4]

②企業が独自に、品物を寄付するケース
・ハインツ日本(HEINZ)は、通常のルートでは販売できないけれども食べるのに全く問題のない商品を寄付している。[5]
・住友化学は、タンザニアへ中古パソコン1,000台を寄付している。[6]

③企業が独自に、サービスを寄付するケース
・任天堂は、ゲームづくりに必要なプロのノウハウを伝えている。[7]

④企業が社員にお金を寄付してもらい、それにお金を寄付するケース
積水ハウスの社員が給与から1口100円で希望口数を積み立てた金額に、会社が同額の助成金を加えて寄付する。ニジェールの「栄養失調児治療プログラム」助成のため、国境なき医師団日本に寄付している。(マッチング寄付)[8]

⑤企業が一般大衆に特定の品物を購入してもらい、その売上代金の一部(あるいは全部)を、品物を寄付する活動に使うケース
ソニーは、“南アフリカの人形”の販売代金の全額を、アフリカの子供たちにサッカーボールを届けるEarth F.C.の活動に充てている。[9]

⑥、⑦ 事例が見当たらない。

⑧ 企業が一般大衆から品物を拠出してもらい、それらの品物に以外に、企業が独自に同様の品物を加えて、寄付するケース
米国の紳士服小売チェーンの「メンズ・ウェアハウス」は、綺麗に使われた古着の紳士服の寄付を募り、同社からも新品のネクタイやシャツなどをマッチング寄付し、「職業面接準備OK」の服装一式を貧困層の男性失業者たちに無償で提供している。[10]

⑨企業が一般大衆から品物を拠出してもらい、それを途上国に届けるというサービスを提供するケース
そごう・西武・ロビンソンは共同で、古い子供服を集め、ザンビアへ約6万点のこども靴を寄贈している。その他、サッカーボール・古靴も対象にしている。[11]

⑩企業が一般大衆から品物を拠出してもらい、量に応じてお金を寄付するケース
ブラザー、キヤノン、デル、エプソン、日本HP、レックスマークが使用済みインクカートリッジを回収し、1個につき3円を国連環境計画(UNEP)に寄付する。[12]

⑪企業が一般大衆から援助と関係のない品物を受け取り、別の品物を寄付するケース
会宝産業が、笑顔の写真を受け取り、お米を寄付する。

⑫企業が一般大衆から援助と関係のない品物を受け取り、サービスを提供する寄付するケース
会宝産業が、笑顔の写真を受け取り、農業指導する。(今後検討)

⑬企業が社員が提供するボランティアの仕事(=サービス)を評価して、お金を寄付するケース
損保ジャパンは、「E-ことCSRポイント制度」を実施している。社員の日頃の行動を、「CSRの基本行動」、「職場でのエコ活動」、「社会貢献活動」、「家庭での取り組み」の4つの切り口からなる20項目について、日常の行動を自己チェックし、そのチェック結果をもとに、会社が取り組みに応じたポイントを金額に換算し、NPOなどの団体へ寄付する。[13]

⑭、⑮ 事例が見当たらない。



2。会宝産業の『元気ライスプロジェクト』

このプロジェクトのユニークなところは、
・同社とは関係ない(消費者でも社員でもない)一般大衆に笑顔の写真を送ってもらい、
・同社の事業(中古自動車部品の輸出・国内販売など)とは関係ない品物(お米)を途上国に寄付することと、
・一般大衆から集めたもの(写真)と、途上国に送るもの(お米)が関係ない
----というところである。

同社は、一般大衆を関与させなくとも利益の一部を使ってお米を寄付することができるが、一般大衆にもっと笑顔になってもらい、かつ 発展途上国に、興味・関心を持ってもらう、という一石二鳥を狙っている。


【 コメント 】

・会社が利益の一部(例えば1%)を社会貢献のために使うようにすると、世の中は良くなるはずである。企業が「何に対して寄付するか」を事前に決めておき、消費者に明らかにしておけば、賛同する消費者はその会社の製品を購入する。

・企業が独自に寄付することもできるが、一般大衆を何らかの形で関与させて発展途上国へ目を向けさせるという仕組みを取り入れるのは重要なことだと思う。

・私はNGOへの寄付については躊躇している。なぜならば、1万円を寄付したとして、どの程度がそのNGOの一般管理費のために使われ、どの程度が途上国のために使われるのか、ということが分からないからである。NGOが分かりやすく情報開示をしてくれれば、寄付ができるのに、と残念に思う。





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【 参考資料 】

[1]
プロジェクトのサイト:http://www.kaiho.co.jp/jp/sp/project/project.html 
会社発表:http://www.kaiho.co.jp/jp/news/2010/05/news-485.html
2010/4/30に英文ニュースレターで募集開始:http://www.kaiho.co.jp/kaiho/pdf/37.pdf

[2]http://www.businesswire.com/portal/site/home/permalink/?ndmViewId=news_view&newsId=20090315005039&newsLang=ja
[3]http://www.takeda.co.jp/press/article_36014.html
[4]http://ekojin.com/?p=5199
[5]http://www.heinz.jp/about/csr/secondharvest.html
[6]http://www.sumitomo-chem.co.jp/csr/africa/topics/news20090223.html
[7]http://www.nintendo.co.jp/corporate/csr/report2009/07/
[8]http://www.sekisuihouse.co.jp/sustainable/2009/social/activity/volunteer/02.html
[9]https://playstationhome.jp/market/special/earthfc.html
[10]http://www.social-market-press.jp/column/84/index.html
[11]http://www2.seibu.jp/shitadori/
[12]http://cweb.canon.jp/newsrelease/2010-03/pr-satogaeri.html
[13]http://www.sompo-japan.co.jp/news/download/20100324_1.pdf

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