テレビの映像では、そこら中に動物がいるように見えますが、実際は違います。特にBIG 5(ライオン、象、水牛、豹、サイ)を探すには、数時間かかることがあります。初めて象の群を見つけた時は感動ものでした。その大きさに圧倒され、群れのなかで子象が守られている姿を見ると、ほのぼのとした気持ちになりました。
写真:著者撮影
しかし、密猟者は象牙をとるために多くの象を殺しています。絶滅のおそれのある野生動植物を保護するための国際会議(ワシントン条約締約国際会議)が、2010年3月13~25日、カタールで開催されました。日本の新聞は「黒マグロ」について多くの紙面を割きましたが、「象」も議題になりましたので、このブログで取り上げます。
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【 ニュース 】
象牙在庫の輸出解禁案否決 ワシントン条約締約国会議 [1]
(CNN)ドーハで開催中のワシントン条約締約国会議は22日、タンザニアとザンビアが提出していた象牙の合法的在庫の輸出解禁案を否決した。ゾウの保護を求めている活動家らはこれを歓迎している。
会議は1989年、ゾウの生息数が密漁で劇的に減少した実態を受け、象牙の輸出入を禁止した。97年と2002年にボツワナとナミビア、南アフリカ、ジンバブエは、アフリカ南部の生息数が健全であるとの事実を踏まえ、日本への在庫輸出が限定的に解禁された。5年後には今後の在庫輸出について、9年間の猶予期間が設けられた。
タンザニアは90トン、ザンビアは21トンの象牙在庫を保有。両国は自国のゾウ生息数が増加に転じたとして、在庫輸出による収益金をゾウの保護計画に充てる案を会議に提出した。
しかしゾウが生息するアフリカ23カ国の1つであるケニアの専門家らは、前回の輸出解禁後にゾウの密猟が増加したとして、全面禁輸を主張。密猟されたゾウから採取した象牙は合法的な在庫分に偽装できるため、象牙の違法取引が利益を生むビジネスになっていると指摘した。
【 解説 】
1.これまでの経緯は末尾参照。
2.象の密猟の例
(1)ケニアの例 [2]
1963年: 167,000頭
1989年: 16,000頭← 年間約6,000頭が殺され、25年で10%になった。
1996年: 26,000頭
2009年: 32,000頭← 20年でやっと2倍になった。
(2)コンゴ民主共和国のヴィルンガ国立公園の例 [3]
1960年代: 2,889頭
2006年: 400頭
2008年: 200頭
【 コメント 】
1.現状分析
現状では、次のような方策で密猟をなくす努力をしている。
①需要:象牙を買わないようにする、あるいは象牙の利用をタブーとするようなキャンペーンをはっている。[4]
②供給:たとえ密猟しても、輸出できないようしている。
図
2。現状の問題
象牙の価格を上昇させてしまい、それが密猟を誘因していると考えられる。
①需要は減らない。
・中国の経済発展により、高価な象牙細工を購入できる購買層が増えている。
・象牙加工業者は次のように宣伝する。「象牙は古来より魔除けや繁栄の象徴として呼ばれ、象牙の品を持つことは健康長寿、財政到来、夫婦和合、家内繁栄の最高の吉運につながるものをされています。縁起のよさ、材質に必要な全ての条件を持っており、印材の中の大吉相印材となっています。」[5]
東洋にはこのような考えを持っている人が少なからず存在するので、西洋の環境運動家が「象牙を保有するな」という考えを広めようとしても、それは現実的ではないと思う。
②供給を減らすので、価格が上昇する。その結果、密猟が「魅力的なビジネス」になる。
3。代替案
密猟を「魅力のないビジネス」にしてしまうことである。要するに、①密猟をして捕まった時のリスクを大きくして(すなわち罰則を強化する)、また、②象牙の価格を下落させて、リターンを小さくすることである。そうすれば、密猟は「high risk, low return」になる。
①密猟のリスクを高める方法
・捕まえるために、レンジャーを増員する。
・罰則を強化する。
・費用については後述。
②密猟のリターンを低める方法
・象牙を市場に供給して、価格を下げる。具体的には、自然死した象の象牙を、政府の管理下におく。(象の平均寿命は60年として、たとえばケニアでは年間200~300頭が自然死すると推測する。)
・国内で象牙クラフト産業を育て、国内で象牙製品を制作して、観光客に販売する。(必要であれば、非加工象牙を輸出できるようにする。日本の税関に申告すれば、象牙製品を持ち込みできるように法改正する必要がある。)
・収入は密猟規制に使う。
4。まとめ
・象はサファリに欠かせない「資源」なので密猟防止を強化する。
・自然死した象の象牙を、有効利用(雇用創出、外貨獲得)する。その収入は密猟防止のために使う。
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【 参考文献 】
(引用文献)
[1] http://www.cnn.co.jp/science/CNN201003230006.html
[2]
http://www.kws.org/research/projects/elephant_programme.html
http://www.meshanet.org/bigfive.html
[3]
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=73614975&expand
[4]
http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=73614975&expand
http://www.cop10.com/species-forest/000034.html ← ビデオ日本語字幕付き
[5] http://inkan.hankodo.com/Archive/Details_Material_01
[6] http://www.jtef.jp/view_citescop15.html
(参考資料)
ワシントン条約事務局
http://www.cites.org
ワシントン条約の説明:
NHK http://www.nhk.or.jp/bsdebate/0411/data3.html
外務省 http://www.mofa.go.jp/mofaj/Gaiko/kankyo/jyoyaku/wasntn.html
経済産業省 http://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/boekikanri/cites/index.html
野生生物の取引をモニタリングする世界最大のNGO
http://www.traffic.org/
http://www.trafficj.org/ (日本)
African Elephant Status Report 2007
http://www.african-elephant.org/aed/pdfs/aesr2007-20.pdf
象牙その他のゾウ標本の違法取引の監視に関する概要 -ゾウ取引情報システム(ETIS)-
http://www.trafficj.org/publication/Cop14Doc.53.2_ETISj.pdf
密輸象牙の行く先は日本 - 日本における象牙の国内取引管理に対する提言(要約) - by 坂元雅行
http://www.jwcs.org/data/ivory_1-1.pdf
(経緯)
1970~80年代:個体数急減
20世紀初頭、1000万頭がいたといわれるアフリカゾウ。象牙を目的とした狩猟により、48万頭あまりにまで激減した。
1989年:第7回ワシントン条約締約国会議において、象牙の国際取引は実質的に禁止。全てのゾウの個体群はワシントン条約の附属書Ⅰに掲載され、ゾウ製品の商業目的による国際取引は世界的に禁止された。
1997年:第10回ワシントン条約締約国会議において、南部アフリカ3カ国(ボツワナ、ナミビア、ジンバブエ)の個体群が附属書IからIIに戻された。3ヶ国では象が増加傾向にある。2年後(1999年)に日本に一度だけ売ることが許可された。
1997年:ETIS(ゾウ取引情報システム:Elephant Trade Information System)設立。目的は、ゾウ製品の違法な取引を追跡するための、広範囲に及ぶ国際的なモニタリングシステム。ETIS は、象牙取引の条件付き再開が、ゾウの個体群に悪影響を与えるかどうかをモニターするために設けられたものである。
ETIS レポートは、押収される象牙の量は、1989 年から1994 年にかけてはめざましく減少し、その後1998年までは横這いであったにもかかわらず、それ以降はずっと増加しつつあることを示している。また、その主要な原因は、1998 年以降、中国における象牙需要が急激に高まっているためと分析している。
1999年:3カ国の在庫象牙約50トンが、日本に向けて試験的に輸出された。
2000年:第11回ワシントン条約締約国会議において、南アのアフリカゾウ附属書 II への移行提案採択された。
2002年:第12回ワシントン条約締約国会議において、ボツワナ、ナミビア、南アのアフリカゾウの象牙の在庫の1回限りの輸出の条件付承認。ジンバブエとザンビアによる輸出は認められなかった。
2004年以降:象牙の不法取引は、急激に増加している。
2007年:南アフリカなど4カ国が、9年間、新たに象牙取引再開を提案しないという条件で一回限りの輸出が認められた。
2008年:ワシントン条約の常任委員会は先月(2008/7)、中国に対する一時的な象牙の売買を認めた。南アフリカの4カ国(ボツワナ、ナミビア、南アフリカ共和国、ジンバブエ)の政府が貯蔵する108トンの象牙の競売への参加を許可した。なお、この競売には日本も参加を認められている。
2009年11月:タンザニアとザンビアは、ワシントン条約附属書ⅠおよびⅡの修正を求める提案を行った。
2010年:第15回ワシントン条約締約国会議 [6]
1.タンザニアとザンビアによる提案
タンザニアとザンビアは自然死した象の象牙を保有しており、1回限りで中国と日本に輸出し、代金を象の保護に充てる案を提出した。しかし、「密猟が助長される」と懸念され、否決された。
2.ケニアガーナなど8カ国などによる提案
象牙取引は、現在9年間禁止されているが、それを20年間凍結すよう提案した。しかし、「前回議論を尽くして9年と決めたばかりだ」などと反対が大勢を占め、自ら提案を取り下げた。
ジンバブエ政府は、保管している50トンの象牙を入札にかけて、その売り上げを象の保護のために使えるよう、Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora (CITES)に申請した。
返信削除http://www.newsday.co.zw/article/2012-08-24-zimbabwe-seeks-permission-to-sell-ivory-stocks/
http://japanese.ruvr.ru/2012_08_23/jinbabue-yaseizouhogo-zouge-oukushon/