2010/03/25

Road to Rwanda (フツ族難民がルワンダに帰国する)

BBCは、2010年3月22日に「Road to Rwanda」という音声番組を放送しました。1994年のルワンダ虐殺事件の後に隣のコンゴ民主共和国に家族と共に逃れた当時16歳の女の子が15年後に祖国ルワンダに帰国した際に、ジャーナリストが同行して約20分の番組にまとめたものです。15年以上の難民生活と、被害者の少数派ツチ(tutsi)族と加害者の多数派フツ(hutu)族がどのような考えで同じ村に住んでいるのかが判る番組ですので、BBCにアクセスしてみて下さい。
http://www.bbc.co.uk/worldservice/documentaries/2010/03/100315_road_to_rwanda.shtml

なお、ルワンダ大虐殺とは、1994年4~7月にかけて、フツ族(hutu:多数派)が、ツチ族であるという理由だけでツチ族(tutsi:少数派)約80万人~100万人を殺害した事件であるが、事件の後、ツチ族の仕返しを恐れて、多数のフツ族が周辺国に逃れていました。


今回のエントリーでは、①その番組の概要と、②ルワンダの最近の出来事(虐殺事件に関連すること)を紹介します。

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【 ニュース 】

その女性の名前は、Vestine。ルワンダのフツ族で、1994年のルワンダ大虐殺の後に、一家でコンゴに逃れてきた。当時彼女は16才だった。父親が亡くなり、母親も1997年に行方不明になってしまった。コンゴ人の男性が彼女を養女として引き取った。その人の子供を身ごもり、結婚し、5人の子供を産んだ。

難民の多くは森の中に隠れるように住んでいる。食料事情が厳しい時には、カタツムリを食べることもあったし、服をはぎ取られ、鍋などが盗まれることもあった。もっとひどいめにあう場合もある。

Vestineは、難民達に「ルワンダに帰ると殺されるぞ」と、脅かされていた。帰るきっかけとなったのは、ルワンダに帰国していた姉(妹)が会いに来て、ルワンダに帰国しても殺されることはない、と連絡を受けたから。また、自然分娩で子供を生めないので、金がかかるという理由で離縁されたからである。

彼女は子供を連れて帰国することにしたが、子供全員を連れて帰ると、離縁された夫に何をされるか分からなかったので、身を守るために1人はコンゴに残した。

Vestineと子供達は、彼女が16年前まで住んでいた故郷に向かう。昔住んでいた家に住めるかどうか、父親が耕していた畑を所有できるかどうかが気になる。

コンゴを出発して数日後、故郷の村に着いたが、その家には老女が住んでいた。村長によると、畑は1年契約で貸与されており、村長が世話をして、公平な形でその畑がVestineに返還されるように取りはからってくれるとのこと。

インタビューしているジャーナリストは、シエラレオネ出身のSorious Samura氏だが、話はここで終わらない。ツチ族とフツ族が一緒に1つの共同体に一緒に住んでいることを不思議に思い、村長、ツチ族住民、フツ族住民に質問している。

村長によると、虐殺が起こる前、村には2,000人が住んでおり、ツチ族のうち205人が殺され45人が生存したが、今では平和的に共存しているとのこと。

加害者のフツ族の一人は、インタビューに「『殺せ』と言われたので殺してしまった」と告白した。殺人者は村の集会(裁判)で許しを乞うことで、減刑された。「村の一員として住んでいる。近所に病人がでれば病院に連れていくし、ツチ族とフツ族の結婚もある。」と話す。

被害者のツチ族もインタビューされている。彼女は当時10才だったが、12人家族のうち、生き残ったのは彼女の他一人だけだった。「毎年4月になると、事件のショックから精神的に不安的になり、入院する」と話す。「本当に殺人者を許したのか?」との質問に対し、「水も食べ物も分け合っている。心の底から許している。」と答えた。

コンゴには、現在ルワンダのフツ族難民が35,000人、そして、ルワンダ反政府兵士が5,000人いるが、国連、コンゴ、ルワンダは、難民に帰国を促している。その中には、虐殺とは無関係な、当時に子供だったVestineのような若者が多く含まれている。

インタビューアーは、「ルワンダはデリケートな問題を抱えている」とコメントしながらも、Vestineが親類に囲まれている姿を伝えて、このインタビュー番組を終えた。



【 解説 】

1.インタビューしているSorious Samura氏は、ドキュメンタリー映画などを制作しているが、BAFTA賞、Emmy賞2つ、Amnesty International Media賞3つなどを受賞している。レオナルド・ディカプリオが主演した Blood Diamondの助言を(コンサルタント)している。

2.ルワンダ虐殺の規模

1994年当時、ルワンダの人口は8,200,000人。800,000人が殺されたとすると、国民の10人に1人が殺されたことになる。

民族構成は、フツ族85%、ツチ族14%、トウク族1%なので、ツチ族の人口は1,150,000人。800,000人が殺されたとすると、ツチ族の70%が殺されたことになる。

また、800,000人が100日間で殺害されたということは、1日8,000人の虐殺が100日続いたということである。


【 コメント 】

1.ルワンダのポール・カガメ(Paul Kagame)大統領は、村の裁判で告白/懺悔することで減刑される「Gacaca」と呼ばれる方法を作った。恐らくこの方法が最善の策なのだろう。


2.ルワンダでは、日本・日本人と同じで、「水に流す」という文化があるのかもしれない。

3.東アフリカ共同体が数年後にできた段階で、物・人・労働力・サービス・資本は、原則自由に移動することができるようになるので、人口密度が高いルワンダに変化が生じる可能性があると思われる。


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【 参考文献 】

ルワンダの大虐殺 ~恐怖が現実になる瞬間、3か月間で100万人が殺された!~
http://members.jcom.home.ne.jp/invader/works/works_8_m.html

ルワンダにおける1994年のジェノサイド ― その経緯,構造,国内的・国際的要因 ―  饗場和彦
http://web.ias.tokushima-u.ac.jp/bulletin/pdf/soc-19-3.pdf

人道的介入の事例  上野友也
http://www2.odn.ne.jp/kamino/hi4.html


(参考)虐殺事件に関係する近年出来事

2006/11:フランス司法当局が、当時の反政府勢力指導者だったカガメ現大統領(ツチ)が、ハビャリマナ(Habyarimana)大統領(当時)らが搭乗した航空機の撃墜を命じたと認定した。ルワンダはフランスとの国交を断絶した。

2008/8/5:ルワンダ政府は、1994年のルワンダ大虐殺にフランスが積極的に加担したとする報告書を発表した。報告書は、フランスの複数の政治家や軍幹部の氏名を挙げ、彼らは訴追されるべきとしている。それに対し、フランス国防省のスポークスマンは、報告書はフランスの関与に関する証拠を寄せ集めたに 過ぎず、「独立性と公平性」に欠けるとの談話を発表した。

2008/11:ドイツ警察がフランス当局の逮捕状に基づき、カガメ大統領の長年の側近で、カガメ政権で儀典長を務めているカブイエ容疑者をフランクフルトの空港で拘束。その後、カブイエ容疑者の身柄はフランス当局者に引き渡され、パリへ移送された。

2009/11/28: ルワンダは54番目の英連邦の加盟国になる。

2009/11/29:ルワンダ政府は、フランスとの国交を回復する決定を発表した。

2010/1/6:ルワンダ政府による報告書が発表される。(少数派ツチ人との和解を模索していたハビャリマナ大統領に反対する多数派フツ人主体の政府軍が首謀した、という内容。)
Report of the Investigation into the Causes and Circumstances of and Responsibility for the Attack of 06/04/1994 Against The Falcon 50 Rwandan Presidental Aeroplane Registration Number 9XR-NN  通称:Mutsinzi Report http://mutsinzireport.com/

2010/1/26:クシュネル(Bernard Kouchner)仏外相が、国交再開後初めて、ルワンダの首都キガリを訪問。

2010/2/25:サルコジ大統領は、ルワンダの首都キガリでカガメ大統領と会談し、1994年の大虐殺を防げなかった責任の一端が仏にあったと認めた。

2010/3/2:フランス政府は、アガト・ハビャリマナ氏(67)を一時拘束し、尋問した。彼女はルワンダの元大統領夫人で、1994年の大虐殺の首謀者の1人とされる。2008年から、仏大使館の保護を得てルワンダ国内法廷から国際手配を受けていた。

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