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2011/05/23

原油・LNGタンカーが爆破されるリスク

過去、「ソマリア沖の海賊」についての記事を書きましたが、今回は「原油・LNGタンカーがテロリストに爆破されるリスク」についてです。日本のエネルギーは原油とLNGに大きく依存していますが、万一、タンカーが爆破された場合の被害は甚大ですし、その発生確率が高くなっています。政府と船舶会社は対策を考えなければなりません。

過去の記事
2010/05/05 ソマリアの海賊
2010/08/29 ソマリア海賊:法的手続きの統一化
2010/10/17 ソマリアの海賊対策:今のやり方では永遠に税金が使われてしまう

【 ニュース 】

最初に記憶を新たにするために、10ヶ月前の出来事を紹介します。それから最新のニュースを2つ紹介します。

1.M.Star号に対するのテロ攻撃

2010/7/28:ホルムズ海峡で商船三井が保有する大型タンカーM.Star号が攻撃を受けて、船体後部が損傷した。
8/2:アルカイダ系テロリストグループ「アブドラ・アッザム旅団」(Brigades of Abdullah Azzam)が犯行声明を発表し、日本タンカーへの自爆攻撃を敢行したと主張。
8/6:UAE当局がテロ攻撃の痕跡を発見した。[1]
11/19:米運輸省の海事当局は警告書で以下を発表した。
①「アブドラ・アッザム旅団」が犯行声明を出したが、根拠がある(valid)。
②ホルムズ海峡やペルシャ湾南部、オマーン湾西部でさらなる攻撃を実行することが可能である。
③この海域を通行する船舶は特に、夜間に小型船の動きに注意すること。[2]

2.アルカーイダ、石油タンカー攻撃に関心(2011/5/21、産経新聞) [3] 
米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によると、米国土安全保障省の広報担当者は20日、国際テロ組織アルカーイダが昨年、石油タンカーや海上の石油施設を狙ったテロ攻撃に強い関心を示していたことを明らかにした。
アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者の隠れ家から押収した資料を分析した結果、判明したとしている。具体的なテロ計画は見つかっていないという。
同紙は、中東のホルムズ海峡で昨年7月に発生した日本のタンカー損傷に関し「捜査当局はテロ攻撃を受けたと結論付けた」と指摘。アルカーイダとの直接的な関係には言及していない。(共同)


3.国際海事機関(IMO)第89回海上安全委員会(MSC)の結果

IMO・MSCが、2011/5/11~20に開催された。民間の武装警備要員(PCASP: privately contracted armed security personnel)を乗船させることについて議論した結果、リスク評価を実施するという条件つきで、認めた。[4]


【 解説 】

1.テロリストには原油やLNGタンカーを爆破する「意図」と「能力」があるか?

商船三井のM.Star号がテロリストから攻撃を受けたので、「意図」があることは確実になった。これは憶測だが、M.Star号への攻撃は、外部からの攻撃がどの程度有効なのかを探る実験ではなかったのではなかろうか。ちなみに、M.Star号はダブルハル構造であったため、原油は流出しなかった。(写真1) 

5月21日、FBIとアメリカ国土安全保障省は、警察とエネルギー関係者に対し、内々に警告を発した。ビンラディンの自宅から押収した資料から、アルカイダは「内部から爆破するのが簡単であると考えている。(determined that blowing them up would be easiest from the inside…) 」----との分析を示した。[5]

海賊がタンカーに乗船できるのだから、テロリストも乗船する「能力」がある。

写真1 (クリックで拡大)


2.テロ行為を封じ込める方法はあるのか?

海賊は身代金が目的なので、その良し悪しは別にして、身代金を支払えばとりあえず問題は解決する。しかし、テロリストは、爆破することが目的なので、金銭では解決することはできない。

各国は戦艦をソマリア沖に派遣して警備行動をしているが、海賊の件数は増えるばかりである(グラフ参照)。

グラフ (クリックで拡大)

3.これまでIMOや船舶会社は海賊にどのように対応してきたか?

(1)IMOの対応
IMOは、海賊を乗船させないような工夫をするように提案してきた。たとえ、船に武器があったとしても使用しないように指導している。(DO NOT use firearms, even if available. )[6]

別の資料において、①武器を領海内に持ち込む場合、その国の法律に従うことになること、②可燃性の貨物を運んでいる船舶に武器を持ち込むことは、災害を招くおそれがあることを注意喚起している。[7]

(2)日本の船舶会社の対応
現在、日本の原油タンカーは海賊に対処するための武器を保持していないようだ。

「アデン湾における海賊対処のための手引書」(09年8月 改訂版)が船主、海員組合、石油・LNG 業界や戦争委員会連合等によって作成された。典型的な攻撃事例と教訓が与えられている。船舶側の武器自衛論の是非について、国際海事機関(IMO)は、自衛のための武器持込は民間船にはかえって危険で、海賊側を挑発し、砲火を受けて危険物が爆発すれば油流出事故など2次災害の危険性が高まると警告した。」[8]


(3)外国の船舶会社の対応
2011/5/21付のBBCによると、ソマリア沖で航行する船舶の10%は、武器を携帯している警備員(armed guards)を乗船させている、と報道した。[9]


【 コメント 】

テロリストや海賊の攻撃を防ぐためには、個々のタンカー自らが護衛しなければならないと考える。武装した民間の警備員(傭兵)を乗船させて、自衛のために戦う以外の方法はないのではないか(写真2)。

将来、民間警備会社に警備を委託するタンカー会社は増えると予想される。テロリストは、攻撃しやすいタンカーを狙うはずだが、タンカーが爆破されて世界経済に影響を与えた場合、その船舶会社だけでなく、指導を怠った国の責任が問われることになるだろう。

福島原発の事故から学ぶべきことの1つは、『リスクマネジメント』である。あらゆるリスクを想定し、それぞれの発生確率と被害額を予想し、リスクを回避・低減・移転・保有する方法を考えることだ。原油・LNGタンカーがテロリストに襲われる確率は高くなっており、想定被害額も莫大なものになる。「テロリストの攻撃は想定外であった」という言い訳は通じないのである。

写真2 (クリックで拡大) 

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【 参考文献 】

[1]商船三井タンカーの損傷、テロ攻撃と判定=UAE報道(2010/8/6)
[2]VESSELS TRANSITING IN THE STRAIT OF HORMUZ, SOUTHERN ARABIAN GULF, AND WESTERN GULF OF OMAN.
自爆テロ声明は「根拠ある」 タンカー損傷で米海事当局(2010/11/22)
[3] 2011/5/21、産経新聞
[4] Interim guidance on use of privately contracted armed security personnel on board ships agreed by IMO Maritime Safety meeting
[5] Al-Qaida eyed oil tankers as bombing targets (2011/5/21、ABC3340.com)
[6] 40頁、「BMP3  Best Management Practices to Deter Piracy off the Coast of Somalia and in the Arabian Sea Area (Version 3 ? June 2010) Suggested Planning and Operational Practices for Ship Operators, and Masters of Ships Transiting the Gulf of Aden and the Arabian Sea」
[7] 第59項目「MSC.1/Circ.1334  23 June 2009  PIRACY AND ARMED ROBBERY AGAINST SHIPS」
[8]「産業振興基盤としての石油供給確保に向けた基礎調査報告書」(平成22年3月)by 財団法人 日本エネルギー経済研究所 中東研究センター
[9] Piracy: IMO endorses use of armed guards on ships (2011/5/21, BBC)

(その他資料)
海賊発生件数が4年連続で増加 ―2010年の海賊事件発生状況― (日本船主協会)
KIRK REPORT: OUT OF CONTROL SOMALI PIRACY HELPING TO FUND LARGEST TERRORIST TRAINING CAMPS ON EARTH (2011/5/10)

2010/01/31

北アフリカ地域の太陽熱発電プロジェクト

このエントリーでは、北部アフリカにおける太陽熱発電について 紹介します。プラント会社や商社にビジネスチャンスが広がると思います。

本件は、太陽熱発電であり、太陽光発電とは違います。太陽を利用した発電には2つの方法があります。
①太陽光発電(photovoltaic power plant:PV)は、最近では一般家庭の屋根の上に設置されるようになった方式です。
②集光型太陽熱発電(Concentrating Solar Power:CSP)は、地球上の日照時間の長い地帯(サンベルト)において、大規模な発電をする方式です。


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【 ニュース 】

2010年1月21日、モロッコは、太陽熱発電プロジェクトを正式に発表した。[1]

・ 発電能力:2020年まで全部で2,000MWを建設する。
・ 発電所数:5ヶ所
・ 最初のプロジェクト:Ouarzazate(モロッコ中部の都市)において500MWの発電所を建設する。
・ 総額:9,000百万ドル(8,100億円)
・ 資金源:電力公社、Hassan II Fund for Economic and Social Development(国王の経済社会開発財団) 日本、UAE、米国などが参加を希望している。
・ インパクト:国内需要の40%に相当する。また、原油輸入の12%を削減する。
入札:2010年2月実施予定



【 解説 】

1.CSP(Concentrating Solar Power)の方式

CSPには、トラフ式(trough)、タワー式(tower) 、ディシュ式(dish)、フレネル式(linear fresnel)4つの方式がある。現在のところトラフ型が一般的である(図1)。なお、コスモ石油がアブダビで実験している「ビームダウン式」は、タワー式を発展させたものである。[2]


図1:太陽熱発電の種類 (クリックで拡大)










2.北アフリカにおけるCSP

北アフリカは地球上でも有数な日照時間があるためCSPに適している(図2)。現在は、モロッコ、アルジェリア、エジプトで既に設置されているか、あるいは工事中である(図3)。欧州南部、MENA(中東・北アフリカ)における2050年までのCSP発電能力は、2020年頃から急激に拡大していき(図4)、北アフリカで10以上のCSPが実現すると想定されている(図5)。

(1)モロッコ
Ain Beni Matharにおいて、トラフ型太陽熱発電(20MW)と天然ガス発電を組み合わせたコンバインドサイクル発電所(総発電能力470MW)が操業を開始したばかりでありである。[3]

(2)アルジェリア
Hassi R'melにおいて、トラフ型太陽熱発電(25MW)と天然ガス発電を組み合わせたコンバインドサイクル発電所(総発電能力は130MW)が、現在工事中である[4]。その他、2つの70MWのCSP発電所が計画されている[5]。

(3)エジプト
コライマットにおいて、太陽熱(20MW)・ガス統合発電(総発電能力は150MW)が工事中である。  本事業は三井物産/Iberincoコンソーシアムが受注している[6]。


図2:サンベルト













図3:北アフリカのCSPの位置













 図4:欧州南部・MENAにおける発電能力の予想













図5: 高圧直流電流供給網

















【 コメント 】

モロッコだけなく、アルジェリア、リビア、エジプトでも同様の大規模プロジェクトがあるはずなので、巨額なプロジェクトになる。日本の企業(コスモ石油、三井造船)はアブダビでテストプラントを建設し、事業を検証しているし、その他の会社にもビジネスチャンスは十分にあるはずである。

アブダビで太陽熱発電に成功した場合、アブダビの投資ファンドは北部アフリカの発電事業に進出すると考えられる。

下の図6を見ると、CSPは高いように見えるが、本当だろうか。換言すれば、天然ガス発電や原子力発電の資本費用は安いように見えるが、実態を表しているのだろうか。例えば、天然ガス発電所の建設費用には、失敗したガス田の探鉱開発費用は含まれていないはずである。また、原子力も廃棄物処理に係る費用が含まれているのか、疑わしい。それを考えると、CSPは一見高そうに思えるが、石油ガスの上流事業のようなリスクがないし、CO2に係る「費用」がないので、実は安いのかもしれない。

図6:発電原価比較
















(追加情報)2010/12/12:アルジェリアのソーラープロジェクト もご覧下さい。


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【 参考資料 】

[1] 「Morocco to invite bids for solar station in Feb」 (Reuters, 2010/1/7)
http://www.engineeringnews.co.za/article/morocco-to-invite-bids-for-solar-station-in-feb-2010-01-07
「Morocco's $9bn bid to capture sun's energy」 (International Construction Review,11/01/2010)
http://www.iconreview.org/news/view/1692
「Morocco hopes to shine in mega solar project」(SciDev.net 、2010/1/21)
http://www.environmental-expert.com/resultEachPressRelease.aspx?cid=33596&codi=79567&lr=1
[2] 「新技術取り入れた太陽熱発電所で世界市場へ参入・三井造船」(日経エコロミー、2009/09/29) ★ ご覧ください。
http://eco.nikkei.co.jp/special/ecopro/article.aspx?id=MMECf2000019092009
[3] 「Morocco commissions solar/CCGT hybrid power plant」(Power Engineering, 2010/1/26)
http://pepei.pennnet.com/Articles/Article_Display.cfm?Section=ONART&PUBLICATION_ID=6&ARTICLE_ID=372687&C=PRODJ&dcmp=rss
[4] Wikipedia   http://en.wikipedia.org/wiki/Hassi_R%27Mel_integrated_solar_combined_cycle_power_station
[5] 「Concentrating Solar Power Global Outlook 09: Why Renewable Energy is Hot」
★ ご覧ください。
http://www.greenpeace.org/raw/content/international/press/reports/concentrating-solar-power-2009.pdf
[6]「エジプト新・再生可能エネルギー庁向け太陽熱・ガス統合発電設備建設契約受注」(三井物産プレスリリース、2007/10/01)
http://www.mitsui.co.jp/release/2007/1177577_1767.html

その他資料

CLEAN TECHNOLOGY FUND: CONCEPT NOTE FOR A CONCENTRATED SOLAR POWER SCALE-UP PROGRAM IN THE MIDDLE EAST AND NORTH AFRICA REGION (世界銀行気候変動投資基金、2009/4/27)
http://www.climateinvestmentfunds.org/cif/sites/climateinvestmentfunds.org/files/CSPConceptNoteApril27.pdf

2010/01/15

アルジェリアの東西高速道路建設工事

このエントリーでは、「国際的なビジネスを行っている日本の民間企業に対し、日本政府がどの程度支援すべきか」---という問題を考えてみます。

昨年末(2009/12)、日経新聞などが、アルジェリアで高速道路を建設している日本のジョイントベンチャーに関する記事を掲載しました。記事はあまりにも短く情報不足だったので、情報収集しました。

追記(2011/1/16):現場で働いている方のブログ「親方への道」が参考になります。


【 ニュース 】

日経新聞(2009/12/25) の記事 [1]

鹿島、海外大型工事に遅れ 損失発生は見通し示さず

鹿島の中村満義社長は24日、2010年に完成予定のアルジェリア東西高速道路建設工事について「約1年遅れており、(工期や支払い条件などの)変更を認めてもらうように発注者と交渉している」と述べた。
これによる損失発生の可能性については「(交渉で)努力している段階」とした。アルジェリアの高速道路工事は鹿島など5社のJVが2006年に約5400億円で工事を請け負った。当初は10年1月に完成する予定だった。


【 解説 】

1.基礎情報 [2]
アルジェリア高速道路公団は、チュニジア国境からモロッコ国境までの約1,200kmに、高速道路を建設する計画を立てた。工事は①東工区(399km)、②中工区(169km,部分的工事)、③西工区(350km)に分割され、入札に付された。(下図)

中国、米国、イタリアのJVも入札したが、日本JV(鹿島、大成建設、西松建設、ハザマ、伊藤忠商事)は入札額は最も高かったが、耐震設計技術などが評価されて、落札することができた。

(参考)事業概要
・総事業費=3410億D.A.(受注時のレートで約5400億円)
・工期は2006年9月~2010年1月 (40ヵ月)であったが、約1遅れている。
・工事が遅れている理由 (末尾参照)
①アルジェリア側の設計の問題
②資材調達・通関が困難
③脆い地質(粘土岩、マール(泥灰岩))
④悪天候
⑤テロ対策により爆薬の利用が制限される。

なお、中国のJVが請け負った中工区と西工区は予定通り2009年12月に完成している。[3]


高速道路地図 & 写真



3.本事業の意義

日本とアルジェリアの継続的関係に寄与する事業である。
・日本の企業が外貨を稼ぐ案件である。道路建設では最大級の案件。
・日本と中国の技術力を比較する案件である。
・この事業は建設後も人材育成をすることになり、日本とアルジェリアの関係が継続する。(末尾参照)


【 コメント 】

1.新聞社の責任

日経新聞の記事を読んだ時、「日本の建設会社は工期を守れないのか!」と唖然としたが、情報収集したところそれなりの理由があることを理解した。新聞社は、会社の評判や株価に影響を与える記事であればあるほど、きちんと説明する義務があると考える。

2.政治家の役割

欧米の政治家(それもトップレベルの政治家)は、自国の会社のために、各国を訪問している。なぜならば、ビジネスに係る多くの場合において、最終的な判断はホスト国の大統領や首相が判断を下すケースが多いからである。

アフリカではないが、最近の例としてあげるならば、原子力発電の売り込みのため、韓国の李明博大統領がアブダビを訪問している。(日立製作所とゼネラル・エレクトリックを中心とする日米企業連合は敗退した。日本の首脳は訪問していない。)

本件(アルジェリアでの道路工事の納期遅延問題)の場合も、政治的決着になる可能性があるので、日本の政府による政治的支援が欲しいところである。

民間のことは民間にまかせるべきである、という意見もあるが、政治家が自国の国益を考えるのは当然のことである。そもそも日本企業が国外で仕事ができるようにしたり、あるいは日本企業の利益が犯されないようにするのが、政治家の役割の1つである。これが「世界の常識」、「世界のやり方」なのである。


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【 参考資料 】

[1] 「鹿島、海外大型工事に遅れ 損失発生は見通し示さず」 日経新聞(2009/12/25)
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20091225AT1D240BP24122009.html

[2] 事業概要

①COJAAL アルジェリア東西高速道路建設工事(東工事)のWeb Page
http://www.cojaal-project.com/

②アルジェリア東西高速道路建設工事(東工区)石田 稔
http://dokokyo.or.jp/ce/ce0901/kensetukigyou.html

③アルジェリア現地ルポ(1~9) by 中川美帆 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20090427/532309/

④アルジェリア現地ルポ
もろい地山やテロと闘う日本勢 by 中川美帆
石田所長インタビュー
日経コンストラクション(2009/4/24)

[3] 「China-built expressway opens in Algeria」(人民日報, 2009/12/21)
http://english.people.com.cn/90001/90776/90883/6848142.html

[4] 西日本高速会社・石田孝会長/アフリカで人材養成へ/トレセン設置構想表明
日刊建設工業新聞(2009/12/11)



発注者との折衝は今年が勝負 [上記 2-④]

石田 稔氏(アルジェリア東西高速道路建設工事JV総合事務所総合所長)─インタビュー

発注者との交渉や資材調達の難しさなどで、不採算が懸念される海外の土木工事。日本の建設会社にとって久々のアルジェリアでのプロジェクトとなるこの工事はどうなのだろうか。

─工期に間に合うのか。

工事の進ちょく率は2月時点で40%ほど。予定より遅れている個所がある。40カ月の契約工期は本体工事だけの分で、ほかにインターチェンジの設置や光ケーブルの敷設など様々な追加工事がある。
工事の半分は40カ月で終えるようにする。残り半分は、我々だけでは解決できないアルジェリア特有の問題があるので、工期延長を求めていく。今年は、工事と発注者との折衝で勝負の年になる。

─アルジェリア特有の問題とは?

設計・施工の元になる図面が10年以上前のもので、正確さに欠けていたので、長さ400kmの航空測量から始めた。しかし、テロの危険があるからと、なかなか許可が下りない。ボーリング調査をするにも機械を集めるだけで苦労した。
工事が始まっても、発注者側の現場監理者が2008年10月まで不在で、権限のないアルジェリア人がその立場にいた。その間、我々にとっての意思決定者がいなかったが、仕事を進めないわけにはいかない。やり直し覚悟で進めた。追加変更はなかなか承認されず、工期を食った。

─自然条件も厳しい。

土工事は、少ない雨量ですぐできなくなる。特に2008年10月からは悪天候が続き、2009年1月~2月の稼働率は10%ほどだった。
トンネル工事は、すべり面にある膨張性地山を掘削する難工事だ。地山が変われば工法も変えないといけないことを発注者に分かってもらうのもひと苦労だった。

─資材は調達できるのか。

品不足の国で400km分の資材を調達するのは大変。特に火薬は、テロにつながる危険があるので、取り扱いに非常に敏感だ。
アスファルトとセメントもタイムリーに手に入らない。石油は出るが、ガスが多すぎてアスファルトに向かないので輸入している。しかも中工区と西工区を請け負う中国連合との取り合いだ。セメントは工場によって品質が異なり、良いものを確保するには200km離れた場所からでも持って来ないといけない。

─資材価格の変動の影響は。

セメントと燃料の価格は統制されているので、ほとんど一定。輸入している一般資材は、世界の動きに連動していて、鉄筋は2008年の4月~9月に40%ほど上がった。だが、インフレ率を補てんする、日本で言うエスカレーション条項が契約に入っている。

─追加変更分の代金はもらえるか。

どれだけ数量が増えるかで異なるが、ある程度は。ランプサム契約(固定価格での契約)ではなく単価契約なので、例えば1が10の量になれば代金は10倍になる。

─このプロジェクトが業績に与える影響は?

大きな影響はないとみている。数量がどれだけ増えて、工期がどこまで延びるかで多少の変動はあるが、リスクを回避しながら契約している。しかるべき利益を出していく。

─南に2本目の東西高速道路を造って、それを南北に結ぶ計画もある。この工事の受注も狙うのか。

発注者はニンジンをぶら下げて「次がある」と言う。我々は「契約を守ってくれないと、やらない」と言っている。適切な代金が支払われて、きちんとした仕様があることが大前提だ。将来はトルコを通って欧州諸国とつなぐ構想もある。このプロジェクトが先駆けになって、早く開通できるように貢献したい。

いしだ・みのる
1947年東京生まれ。69年鹿島入社。最初の海外赴任地はイラン。以後、東南アジアを中心に約35年間、海外で仕事をしている



アフリカで人材養成へ [上記 4]

西日本高速道路会社の石田孝会長は、9日に東京都内で行った記者会見で、「近い将来、高速道路の維持・管理業務を教えるトレーニングセンターをアフリカにつくり、現地人によるマネジメント、メンテナンスができるよう養成したい」との構想を明らかにした。同社は海外への事業展開の一環として、アルジェリアの東西高速道路建設工事の施工JVに職員を派遣しており、石田会長は「道路建設をサポートするだけでなく、ワーカーを育てるのも責務だ」との考えを示した。トレーニングセンターの具体的な設置時期や国・地域は決まっていないという。

石田会長は、先にアルジェリア東西高速道路建設工事の現場を訪問した感想を踏まえ、「メンテナンスの仕事は50年後もあり、そのころには現地の方にやってもらえるよう技術指導しなければならない」と指摘。今後、国際貢献の取り組みの中で訓練施設を設置する方針を示した。

石田会長によると、現在の高速道路計画だと、2020年以降、同社が新たに建設する道路は無くなる見通しで、「(同社が保有する)道路建設技術が陳腐化する恐れがある」と懸念を表明。その上で、「新しい技術でつくられた道路を維持・保全するには、それに対応したレベルの技術力が求められる。道路を必要とする国に技術的な支援をしたい」と述べ、技術レベルの維持と国際貢献の両面から今後、海外展開に積極的に取り組んでいく方針を示した。

アルジェリア東西高速道路工事は全長1200キロのうち東側の400キロを鹿島・大成建設・西松建設・ハザマ・伊藤忠JVが施工。契約工期は10年1月18日までの40カ月。

2010/01/07

リビア Energy Cities 建設計画

リビアで、新しい都市(Energy Cities)を2つ建設することが決定しました。都市建設に関して全て需要(物とサービス)が発生します。たとえば、事務所、住宅、病院、学校、水処理施設、石油化学プラント、道路、電力設備、通信設備などです。ビジネスチャンスです。


【 ニュース 】

1.2009年10月、リビアの経済社会開発基金(Economic and Social Development Fund)は2つの都市を建設 することを最終決定したと発表した。[1]

地中海沿岸に建設される都市は、Ras Lanuf とal Brega と呼ばれる。事業期間は 2010年~2024年、総事業費は548億ドル(5兆円)である。(図1, 表1&2) 。[2]

2.2009年12月、積水化学工業はリビアに進出すると発表した[3]。日本の製造業として初めてのケースである。(写真1)

図1:地図




【 解説 】

1.Energy Citiesについて [4]

2007年7月、リビア経済社会開発基金(ESDF)は、米国のFluor Corporationに対し、マスタープランを描くよう要請した。
2008年2月、ESDFは、Gulf Finance House (ドバイの投資銀行でロンドン証券取引所に上場)との間でEnergy City Libya開発のMOUを締結し、資金調達の目途をつけた。
2009年7月、マスタープランの最終計画が承認された。
2009年10月、2都市の開発が正式に公表された。
新しい都市ができることにより、約12万人の人口を吸収でき、32,000の雇用が確保できる。2つの都市の間(Al Egaila)にはリゾートタウンを建設する。


2.積水化学工業のリビア進出について
樹脂製の水道管を生産・販売するため、事業会社「リビア エスロン」を現地メーカーと合弁で設立する。資本金は1,200万ドル(約11億7600万円)で、積水化学工業が60%、現地メーカー(リビア・アフリカ投資ファンド傘下の国営企業)が40%出資する。生産能力は年産6,000トン。従業員は約100人。2010年に生産を始め、2013年度に30億円の売上を目指す。[5]




【 コメント 】

リビアには経済が「離陸」するための条件が整っている。これは25年前のアラブ首長国連邦の首都アブダビと同じ状況である。
・ 巨額の石油収入がある。
・ インフラ設備を必要としている。
・ 人口が多くない。
・ 強力なリーダーがいる。

ただし、ビジネスチャンスにはリスクがつきものであり、リビアも例外ではない。
・法律や裁判制度が未整備である。
・統治者の考え次第で、投資環境が変化する可能性がある。
・失業率が高いため、リビア人を雇用することが求められる。ジョイントベンチャーを組む場合は、マネージャー職をリビア人にすることが求められている。

リビアに進出する際は、頭の切り替えが必要である。先進国においては、外国企業は地元企業と差別されることなく経済活動ができる。しかし、リビアにおいては、「リビアは江戸時代の領主であり、外国企業は庭師である」と覚悟しておいたほうが無難である。基本的には、外国企業はコントラクターであり、大きな利益を得ることはできないのである。

既に前例がある。リビアには外国の石油会社が進出しているが、油価が高騰した時期に、リビアは石油会社の取り分を制限した。要するに、リビアの立場で考えると、「自分の領土から産出された石油は基本的にはリビアのものであり、油価の高騰による恩恵はリビアが受け取る。」という認識なのである。

リビアが求めているのは、基本的には、外国の技術移転と雇用であるので、それを提供できるのであれば、薄利かもしれないが長期にわたりビジネスができるはずである。

日本とリビアとの関係については、石油開発会社を除き、日本企業はほとんどリビアに関心がなかったし、リビアも日本のことは眼中になかった。しかし、昨年12月にカダフィは明治大学の学生とサテライト対話をしたが、カダフィは日本に目を向けたと思われるし、サテライト対話がリビアで放映されたことで、一般国民も日本を身近に感じたと考えられる。日本企業のリビアへの投資環境は上向いていると考えられる。

7大総合商社の内、リビアに事務所を構えているのは、三菱商事、三井物産、丸紅、双日の4社であるが、積水化学工業に続いて日本企業が誘致されることを期待する。

The early bird catches the worm !


【 参考資料 】

[1]「Libya to Launch Mega-Billion Energy Cities」(Petroleum Africa、2009/10/20)
http://petroleumafrica.com/read_article.php?NID=8500
[2] Energy Cities Master Plan の説明用HP
http://www.energycitiesmasterplan.com/
[3]同社プレスリリース(2009/12/17)
http://www.sekisui.co.jp/news/2009/1196641_2241.html
[4]「Libya to Launch Mega-Billion Energy Cities」(Petroleum Africa、2009/10/20)
http://petroleumafrica.com/read_article.php?NID=8500
[5] 日経産業新聞、化学工業日報、日刊工業新聞より


過去のリビアに関するエントリー:
①小池百合子議員、カダフィと面談する
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2009/11/blog-post_22.html
②カダフィ大佐と明治大学学生とのサテライト対話集会
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2009/12/blog-post_15.html


ビデオ
Energy Cities Master Plan の説明用HPに入り、左側にある Project Video をクリック
http://www.energycitiesmasterplan.com/














その他のビデオ

New Construction Projects Libya - Part 1
http://www.youtube.com/watch?v=0ZA5ml5NB7I

New Construction Projects Libya - Part 2
http://www.youtube.com/watch?v=bu8cq-ydP4Y&feature=related

New Construction Projects Libya - Part 3
http://www.youtube.com/watch?v=Yh3KhNetDmo

New Construction Projects Libya - Part 4
http://www.youtube.com/watch?v=ikX2Xq72DII&feature=related



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