2011/12/28

アフリカの森林破壊対策

日本の大部分の消費者は、安くて便利なものを求めている。その結果、「竹」の工芸品はほとんどなくなり、放置竹林が増えた。しかし日本で必要とされなくなっても、発展途上国では必要なものもある。

今回紹介する記事は、アフリカの農業、生活改善、BOPビジネスに関連するものである。

【 ニュース 】

竹は森林消失のアフリカを救えるか? 中国との連携で燃料化プロジェクトが進展 [1]
2011/12/08

いまでも木炭や薪(まき)を燃料に使うことが多いアフリカ。この習慣は森林破壊の原因の一つと指摘されている。そんななか、竹を代替燃料に利用することを通じて森林破壊を食い止めようとする活動が現地で進んでいる。

環境保全と竹および藤の公正な貿易を通じた貧困削減に努めている政府間組織、国際竹藤組織(INBAR)は前週(現地2日)、南アフリカ共和国で開催中の第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)に合わせ、アフリカの燃料不足と環境破壊の防止策として、竹をかまで焼いて炭にする技術への取り組み状況を発表した。これにはEU(欧州連合)と一次産品共通基金(CFC)が資金を出している。サブサハラ地域(サハラ砂漠以南の地域)の地方の人口の80%が燃料に用いている木炭の替わりに竹を利用するよう促すのが、このプロジェクトの狙いだ。

INBARが、新興国のために科学技術情報を提供する非営利組織のSciDev.Netに語ったところによると、2009-13年の間に総額200万ドルが投資される計画で、第1弾としてエチオピアおよびガーナでプロジェクトが09年に始動した。INBARは竹の栽培・炭化技術、竹由来のまきの生産法に関して人々を訓練している。INBARでは計画規模の拡大とこの技術の他のアフリカ諸国への移転を目指している。

竹は生長が速いので、伐採しても環境破壊へのマイナス影響が小さい。中国は竹の燃料利用で世界的にみて進んでおり、かま、(竹用の)粉砕機、ブリケティングマシン(造粒機)などの設備をアフリカ側が取り入れる手助けをしている。最近の中国が南北問題で言うところの“南”に該当するかは疑問だが、INBARの関係者が「これは“南”と“南”の協力の良い実例だ」と話す通り、新興国間ならではの技術協力として注目される。 (由谷順)


【 解説 】

1.アフリカにおける竹の植生

ナイジェリアやエチオピアでは日本を遥かにしのぐ竹林面積がある。タンザニア、ケニア、ウガンダは日本と同様の面積である。

図1:2005年のFAO統計[2]



















2.竹炭の利用法、作り方、種類

(1)竹炭の利用法
燃料、消臭、空気清浄、湿度調整、浄水、土壌改良、食用などに利用される。


(2)竹炭の作り方
窯焼き(土窯、機械窯、ドラム缶窯など)と、伏せ焼(野焼き)がある。

(3)竹炭の種類
a. 成形しない方法
竹の丸焼き、平板、粉砕、微粒粉(パウダー)がある。

b.成形する方法
①オガ炭(ちくわ炭とも言う):アフリカではこの方法を採用すると思われる。もともとは、木工工場ででるオガ屑を成形し、成型機で四角または六角の筒状に圧縮して押しだし、オガライトを作る。それを機械窯で製作する(木のオガ炭)。竹のオガ炭(Bamboo Briquette Charcoal)は、竹を粉状にして、同様に炭にしたものである。焼肉屋などで使われている。
②炭団(たどん)とは炭(木炭、竹炭)の粉末につなぎとなる素材と混ぜ合わせたもの。

(参考)練炭は石炭を粉末にして成型したもの。豆炭は、石炭を粉末して消臭材をブレンドして製造されるが、木炭を使う場合もある。


図2:竹炭の種類












図3:オガ炭の製造工程[3]













【 コメント 】


1.土壌改良

今回紹介したのは、竹を燃料として使うアイディアであるが、竹炭は土壌改良剤としても有効であり、穀物・野菜の生産量を増やすことができる。
①炭を使う方法
放置竹林の竹を使い「野焼き」で消し炭をつくり、畑にまく。アフリカに適した方法であると思うので、農業指導されている方は是非試して頂きたい。[4]

②生竹を使う方法
特別な機械を使って、粉あるいは繊維にして、畑にまく。ただし、機械が高価なのでこの方法はアフリカでは使えないであろう。[5]


2.竹林の管理


アフリカ諸国及びNGOなどの関係者は、以下のことに留意する必要がある。
①竹林は管理して初めて資源として利用できること。
②竹細工、建築材としても使用して、付加価値をつけること。
③中国などから安い輸入品(竹炭)と競争できるまで、自国産業を保護すること。


3.「調理用かまど」とビジネスチャンス

木炭でなく竹炭を使うことによって、森林破壊の防止に貢献する。また、現在、極めて原始的な調理用かまどが使用されているが、それを改良することによって、薪の量を少なくできるし、女性や子供がかまどの煙を吸わなくなるため、健康問題の解決にもなる。[6]

日本人はこれまで次のような「かまど」作りに貢献している。たとえば、
①岸田袈裟 氏(ケニア在住の食物栄養学者)の土製のかまど作り[7]
②日本国際民間協力会(NICCO)の改良かまど作り[8]
③本間 徹 氏(JICA国際協力専門員)による豆炭・七輪の開発・普及[9]

日本の取り組み方は、個人的な援助の意味合いが強く、ビジネス志向ではない。それはもちろん悪いことではないが、たとえば、日本のコンロ・七輪を製作会社が参加すれば、もっと大きな活動ができ、より多くの人々を助けることができるだろう。その会社にとってもビジネスになる。実際、調理用かまどを製作している中国企業は何千、何万のかまどを販売するのである。[10]

竹炭関連のビジネスでは、竹用鋸やチェーンソーなどが売れるであろう。また、農業関係のコンサルタントにもビジネスチャンスがあるはずだ。


【 参考文献 】

[1] Morning Star EMeye 
[2] World bamboo resources --- A thematic study prepared in the framework of the Global Forest Resources Assessment 2005 (FAO)
[3] 奈良炭化工業HP
[4] 月刊 現代農業「農業用に最適!ポーラス竹炭」
モキ製作所「無煙炭化器」
[5] 月刊 現代農業「竹の生長力と土着菌を呼ぶ力が野菜を変える!?」
[6] National Geographic News「アフリカで普及を目指す高効率コンロ」
[7] 第14回(2007年度)読売国際協力賞 岸田袈裟(けさ)氏 アフリカ民間ボランティア活動家 
「エンザロ村のかまど」
[8] 日本国際民間協力会(NICCO)
[9] 本間 徹 経済協力開発機構(OECD)アフリカ投資イニシアティブ
[10] Aprovecho and Shengzhou, mass producing efficient wood stoves - Ashden Award winner   ★必見★
Envirofit International -Product Overview

参考URL
International Network for Bamboo and Rattan (INBAR)


参考情報
国際炭やき協力会「世界の炭やき」 マリ、カメルーン、ザンビア、ケニアの炭焼きの写真あり。

アフリカ案内(TAROTAKOさん)
ザンビア   マラウィ 

世界のかまど  エチオピア、ニジェール、ガーナ、ケニア、マラウイのかまどの写真あり。

2011/12/08

HIV対策としての包茎手術(その2)

12月1日は「World AIDS Day (世界エイズデー)」である。以前「HIV対策としての包茎手術」[1] を書いたが、今回は続報として、数ヶ月前からVOA、NY Times、BBCなどで紹介されている画期的な包茎手術を紹介する。なお、本件は、BOPビジネスの代表例になる案件だと思う。


【 ニュース 】

いくつかの記事の要点を列挙する。[2]

・2007年に、WHO(世界保健機関)とUNAIDS(国連合同エイズ計画)は、包茎手術はHIV予防に有効であると発表した。東部及び南部アフリカの14ヶ国で、15才から49才の男性人口の80%が手術受けるならば、2025年までにHIV感染者数を22%減少させる可能性がある、と推定している。
目標は、それらの国で2000万人を手術することだが、まだ60万人しか受けていない。3%以下の進捗率である。

・PrePexは2つのリングを使って、包皮を締め付けて壊死させる大人ための包茎手術である。処置室は特に消毒されている環境でなくとも良いし、麻酔は不要だし、医者でなくとも実施できる。処置は1週間で終了する。

・ルワンダでは、今後2年間で、200万人が包茎手術をしてHIV感染を半減させるという国家目標がある。ルワンダの衛生大臣は、「この方法は安全で、効率的で、手術の方法より優れている」と発言している。なお、ルワンダでは 人口1000万人に対し医者は300人。


【 解説 】

1.包茎手術の有効性

米国やフランスの研究者の研究によると、《包茎手術をした男性がHIVに感染する件数は、しなかった男性のそれと比べると、60%以上減少した》 という結果が得られた[3] 。包茎手術をすることで、亀頭の皮膚が厚くなり強度が増すため、摩擦により生ずる細かい傷から感染する危険性が低下と説明されている。[4]

2.PrePex とは

・PrePexは Circ MedTech社(2009年設立、イスラエルが拠点)が開発した。2011年1月に国際特許出願(PCT出願)されている[5] 。世界保健機関(WHO)は、2012年前半には EU域内で販売を認める予定である。[6]


図 [7]





















【 コメント 】

PrePexは、麻酔不要、無痛、非手術(non-surgical)であり、必ずしも医者でなくともできる施術なので、アフリカだけでなく世界中に爆発的に普及するだろう。

困っている人が必要とするもの、人が欲しがるものを提供するのが商売の基本だが、まさに人口が多く、基本的な品物が不足しているアフリカ諸国は市場として無視できないのである。

私は日本の中小企業に期待している。大企業は、多くの投資案件を持っており、良い案件(利益率が高く、リスクが低い案件)から順番に投資していくので、アフリカを投資先として選択するのは稀である。一方、中小企業は、相対的に機動性があり、低価格の商品であっても利益があれば投資できるからである。

どんな商品を売るか、ということは重要だ。先進諸国だけに目を向けていると、それ以外の国々の人たちが求めているものが判らなくなる。今回紹介したPrePexは、包茎手術にはそれほど熱心でない日本人にとってあまり魅力的でないかもしれない。しかし HIV/AIDSという問題を抱えているアフリカ諸国にとっては、喉から手が出るほど魅力的な商品であるはずだ。中小企業が積極的にアフリカなどの発展途上国を訪問してリサーチしてもらいたい。

参考までに、過去の記事で、トイレ用品、安価なPC、偽造医薬品対策サービス、中古車などを紹介したが、飲料水ビジネスも有望であろう。[8]


【 参考文献 】

[1] HIV対策としての包茎手術
[2]
VOA
New York Times
BBC
GHD Project

[3] New Data on Male Circumcision and HIV Prevention: Policy and Programme Implications (2007/3)
[4] BBCのビデオ
[5] http://www.sumobrain.com/patents/wipo/Circumcision-device-method-mass/WO2011007358A2.pdf
[6] http://www.voanews.com/english/news/africa/decapua-aids-circumcision-1dec11-134816113.html

[7] 医学的関心がある方が更に拡大するには、
①一度クリックすると別画面が表示される。
②右クリックして、「名前をつけて画像を保存」。
③ペイントで保存したファイルを開く。

[8]
トイレ用品    
安価なPC       
偽造医薬品対策サービス   
中古車       
飲料水(日本ポリグル) 

参考URL

Circ MedTech のHP 
PrePexの簡単な説明 
PrePexの詳細な説明(詳しい写真あり)