昨年末(2009/12)、日経新聞などが、アルジェリアで高速道路を建設している日本のジョイントベンチャーに関する記事を掲載しました。記事はあまりにも短く情報不足だったので、情報収集しました。
追記(2011/1/16):現場で働いている方のブログ「親方への道」が参考になります。
【 ニュース 】
日経新聞(2009/12/25) の記事 [1]
鹿島、海外大型工事に遅れ 損失発生は見通し示さず
鹿島の中村満義社長は24日、2010年に完成予定のアルジェリア東西高速道路建設工事について「約1年遅れており、(工期や支払い条件などの)変更を認めてもらうように発注者と交渉している」と述べた。
これによる損失発生の可能性については「(交渉で)努力している段階」とした。アルジェリアの高速道路工事は鹿島など5社のJVが2006年に約5400億円で工事を請け負った。当初は10年1月に完成する予定だった。
【 解説 】
1.基礎情報 [2]
アルジェリア高速道路公団は、チュニジア国境からモロッコ国境までの約1,200kmに、高速道路を建設する計画を立てた。工事は①東工区(399km)、②中工区(169km,部分的工事)、③西工区(350km)に分割され、入札に付された。(下図)
中国、米国、イタリアのJVも入札したが、日本JV(鹿島、大成建設、西松建設、ハザマ、伊藤忠商事)は入札額は最も高かったが、耐震設計技術などが評価されて、落札することができた。
(参考)事業概要
・総事業費=3410億D.A.(受注時のレートで約5400億円)
・工期は2006年9月~2010年1月 (40ヵ月)であったが、約1遅れている。
・工事が遅れている理由 (末尾参照)
①アルジェリア側の設計の問題
②資材調達・通関が困難
③脆い地質(粘土岩、マール(泥灰岩))
④悪天候
⑤テロ対策により爆薬の利用が制限される。
なお、中国のJVが請け負った中工区と西工区は予定通り2009年12月に完成している。[3]
高速道路地図 & 写真
3.本事業の意義
日本とアルジェリアの継続的関係に寄与する事業である。
・日本の企業が外貨を稼ぐ案件である。道路建設では最大級の案件。
・日本と中国の技術力を比較する案件である。
・この事業は建設後も人材育成をすることになり、日本とアルジェリアの関係が継続する。(末尾参照)
【 コメント 】
1.新聞社の責任
日経新聞の記事を読んだ時、「日本の建設会社は工期を守れないのか!」と唖然としたが、情報収集したところそれなりの理由があることを理解した。新聞社は、会社の評判や株価に影響を与える記事であればあるほど、きちんと説明する義務があると考える。
2.政治家の役割
欧米の政治家(それもトップレベルの政治家)は、自国の会社のために、各国を訪問している。なぜならば、ビジネスに係る多くの場合において、最終的な判断はホスト国の大統領や首相が判断を下すケースが多いからである。
アフリカではないが、最近の例としてあげるならば、原子力発電の売り込みのため、韓国の李明博大統領がアブダビを訪問している。(日立製作所とゼネラル・エレクトリックを中心とする日米企業連合は敗退した。日本の首脳は訪問していない。)
本件(アルジェリアでの道路工事の納期遅延問題)の場合も、政治的決着になる可能性があるので、日本の政府による政治的支援が欲しいところである。
民間のことは民間にまかせるべきである、という意見もあるが、政治家が自国の国益を考えるのは当然のことである。そもそも日本企業が国外で仕事ができるようにしたり、あるいは日本企業の利益が犯されないようにするのが、政治家の役割の1つである。これが「世界の常識」、「世界のやり方」なのである。
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【 参考資料 】
[1] 「鹿島、海外大型工事に遅れ 損失発生は見通し示さず」 日経新聞(2009/12/25)
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20091225AT1D240BP24122009.html
[2] 事業概要
①COJAAL アルジェリア東西高速道路建設工事(東工事)のWeb Page
http://www.cojaal-project.com/
②アルジェリア東西高速道路建設工事(東工区)石田 稔
http://dokokyo.or.jp/ce/ce0901/kensetukigyou.html
③アルジェリア現地ルポ(1~9) by 中川美帆 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20090427/532309/
④アルジェリア現地ルポ
もろい地山やテロと闘う日本勢 by 中川美帆
石田所長インタビュー
日経コンストラクション(2009/4/24)
[3] 「China-built expressway opens in Algeria」(人民日報, 2009/12/21)
http://english.people.com.cn/90001/90776/90883/6848142.html
[4] 西日本高速会社・石田孝会長/アフリカで人材養成へ/トレセン設置構想表明
日刊建設工業新聞(2009/12/11)
発注者との折衝は今年が勝負 [上記 2-④]
石田 稔氏(アルジェリア東西高速道路建設工事JV総合事務所総合所長)─インタビュー
発注者との交渉や資材調達の難しさなどで、不採算が懸念される海外の土木工事。日本の建設会社にとって久々のアルジェリアでのプロジェクトとなるこの工事はどうなのだろうか。
─工期に間に合うのか。
工事の進ちょく率は2月時点で40%ほど。予定より遅れている個所がある。40カ月の契約工期は本体工事だけの分で、ほかにインターチェンジの設置や光ケーブルの敷設など様々な追加工事がある。
工事の半分は40カ月で終えるようにする。残り半分は、我々だけでは解決できないアルジェリア特有の問題があるので、工期延長を求めていく。今年は、工事と発注者との折衝で勝負の年になる。
─アルジェリア特有の問題とは?
設計・施工の元になる図面が10年以上前のもので、正確さに欠けていたので、長さ400kmの航空測量から始めた。しかし、テロの危険があるからと、なかなか許可が下りない。ボーリング調査をするにも機械を集めるだけで苦労した。
工事が始まっても、発注者側の現場監理者が2008年10月まで不在で、権限のないアルジェリア人がその立場にいた。その間、我々にとっての意思決定者がいなかったが、仕事を進めないわけにはいかない。やり直し覚悟で進めた。追加変更はなかなか承認されず、工期を食った。
─自然条件も厳しい。
土工事は、少ない雨量ですぐできなくなる。特に2008年10月からは悪天候が続き、2009年1月~2月の稼働率は10%ほどだった。
トンネル工事は、すべり面にある膨張性地山を掘削する難工事だ。地山が変われば工法も変えないといけないことを発注者に分かってもらうのもひと苦労だった。
─資材は調達できるのか。
品不足の国で400km分の資材を調達するのは大変。特に火薬は、テロにつながる危険があるので、取り扱いに非常に敏感だ。
アスファルトとセメントもタイムリーに手に入らない。石油は出るが、ガスが多すぎてアスファルトに向かないので輸入している。しかも中工区と西工区を請け負う中国連合との取り合いだ。セメントは工場によって品質が異なり、良いものを確保するには200km離れた場所からでも持って来ないといけない。
─資材価格の変動の影響は。
セメントと燃料の価格は統制されているので、ほとんど一定。輸入している一般資材は、世界の動きに連動していて、鉄筋は2008年の4月~9月に40%ほど上がった。だが、インフレ率を補てんする、日本で言うエスカレーション条項が契約に入っている。
─追加変更分の代金はもらえるか。
どれだけ数量が増えるかで異なるが、ある程度は。ランプサム契約(固定価格での契約)ではなく単価契約なので、例えば1が10の量になれば代金は10倍になる。
─このプロジェクトが業績に与える影響は?
大きな影響はないとみている。数量がどれだけ増えて、工期がどこまで延びるかで多少の変動はあるが、リスクを回避しながら契約している。しかるべき利益を出していく。
─南に2本目の東西高速道路を造って、それを南北に結ぶ計画もある。この工事の受注も狙うのか。
発注者はニンジンをぶら下げて「次がある」と言う。我々は「契約を守ってくれないと、やらない」と言っている。適切な代金が支払われて、きちんとした仕様があることが大前提だ。将来はトルコを通って欧州諸国とつなぐ構想もある。このプロジェクトが先駆けになって、早く開通できるように貢献したい。
いしだ・みのる
1947年東京生まれ。69年鹿島入社。最初の海外赴任地はイラン。以後、東南アジアを中心に約35年間、海外で仕事をしている
アフリカで人材養成へ [上記 4]
西日本高速道路会社の石田孝会長は、9日に東京都内で行った記者会見で、「近い将来、高速道路の維持・管理業務を教えるトレーニングセンターをアフリカにつくり、現地人によるマネジメント、メンテナンスができるよう養成したい」との構想を明らかにした。同社は海外への事業展開の一環として、アルジェリアの東西高速道路建設工事の施工JVに職員を派遣しており、石田会長は「道路建設をサポートするだけでなく、ワーカーを育てるのも責務だ」との考えを示した。トレーニングセンターの具体的な設置時期や国・地域は決まっていないという。
石田会長は、先にアルジェリア東西高速道路建設工事の現場を訪問した感想を踏まえ、「メンテナンスの仕事は50年後もあり、そのころには現地の方にやってもらえるよう技術指導しなければならない」と指摘。今後、国際貢献の取り組みの中で訓練施設を設置する方針を示した。
石田会長によると、現在の高速道路計画だと、2020年以降、同社が新たに建設する道路は無くなる見通しで、「(同社が保有する)道路建設技術が陳腐化する恐れがある」と懸念を表明。その上で、「新しい技術でつくられた道路を維持・保全するには、それに対応したレベルの技術力が求められる。道路を必要とする国に技術的な支援をしたい」と述べ、技術レベルの維持と国際貢献の両面から今後、海外展開に積極的に取り組んでいく方針を示した。
アルジェリア東西高速道路工事は全長1200キロのうち東側の400キロを鹿島・大成建設・西松建設・ハザマ・伊藤忠JVが施工。契約工期は10年1月18日までの40カ月。

