■ ニュース ■
日経新聞[1] を引用します。
気候変動作業部会、アフリカがボイコット 発言力強化狙う?
スペインのバルセロナで開かれている気候変動枠組み条約作業部会で2日、アフリカ諸国が会議への参加をボイコットし、同日夜には一部の会合が開けない事態になった。AP通信などが伝えた。アフリカ諸国は先進国による温暖化ガス排出削減の上積みなどを求めているという。年末の合意を目指すポスト京都交渉で、先進国と途上国の溝の深さが改めて浮き彫りになった。
コンゴの代表はボイコットの理由について「アフリカ以外の交渉グループは(排出削減問題を)真剣に検討していない」などと語った。アフリカは気候変動によって最も被害を受けやすい地域とされる。
途上国は中国をリーダーとして交渉にのぞんできた。ただ交渉が進み新議定書案が具体化するのにあわせ、途上国グループの中でも利害対立が発生しつつある。アフリカ諸国は独自の主張を強めつつあり、今回のボイコットもアフリカの存在感を示し、発言力の強化を狙ったとみられる。
(パリ=古谷茂久)(07:00)
■ 解説 ■
①「長期的協力の行動のための特別作業部会(AWG-LCA)」---Ad Hoc Working Group on Long-term Cooperative Action under the Convention (AWG-LCA)
この作業部会では、共有のビジョン、緩和、適応、資金、技術、キャパシティ・ビルディング(人材育成)について議論する。
②「京都議定書の下での附属書I国の更なる約束に関する特別作業部会(AWG-KP)」---Ad Hoc Working Group on Further Commitments for Annex I Parties under the Kyoto Protocol (AWG-KP)
京都議定書の附属書B には温室効果ガス削減義務を負う先進国のリストと各国の削減目標値が掲載されており、この作業部会では、この改訂について議論する。
アフリカ諸国がボイコットしたのはAWG-KPだが、彼らは、附属書Ⅰ国(先進国)が十分な削減目標を設定しない限り他の分野での議論を拒否するとの態度を示した。具体的には、1990年を基準年として2020年までに最低でも40%を削減すべきである、というものである。[3]
鳩山首相が2009年9月22日に、国連・気候変動首脳会合で発表したのは、「2020年までに1990年比25%削減」[4]であるので、アフリカ諸国は先進国に対し如何に高いハードルを主張しているかが分かる。[5]
■ コメント ■
環境問題をめぐる対立関係を大きく分類すると3つの図式(次元)になっているのではないだろうか。COP15では違った次元のものが議論されるので、合意形成は非常に困難であると考える。
①先進国 vs. 先進国
②先進国 vs. 発展途上国のうち中国・インド等
③後発開発途上国(Least developed countries) vs. その他
先進国各国は、負担をできるだけ低くすることを主張する。中国やインドも同様だがそれに加え、経済発展するために将来にわたり排出する権利を確保しながら、先進国から資金を受け取りたいと主張する。そして後発開発途上国は、経済発展とは程遠い現状にあり、「生きる」ための援助を求めている。
前国連事務総長コフィー・アナン氏は、「Climate Justice(気候正義)」という概念[6]を積極的に主張しているが、これは貧困の問題と密接に結びついている。 アナン氏は次のように発言している[7]。 「For it is a tragic irony that the countries which have done least to cause climate change are those which are suffering and will suffer most from its impact. (気候変動に最も関係していなかった国々が、いま一番苦しんでおり、今後最大の影響を受けるというのは、悲しい皮肉である。) 」
アナン氏は、音楽を通して地球温暖化対策を訴えている[8]。
<ビデオ>Beds Are Burning - TckTckTck Campaign (time4climatejustice)
■ 参考資料 ■
[1] 「気候変動作業部会、アフリカがボイコット 発言力強化狙う?」(日経新聞、2009/11/4)
[2]「国連気候変動枠組条約交渉 バルセロナ会合:議論の概要」 (外務省、2009/11/6)
(AWG-LCA)
(AWG-KP)
国連気候変動バルセロナ会議報告(WWF、2009/11/19)
[3] ボイコットに関する報道
「African nations resume talks in Barcelona」(COP15のHP、2009/11/4)
「Rich countries call on African bloc to keep climate talks on track」(Guardian、2009/11/4)
「Rich-poor divide obstructing negotiations」(COP15のHP、2009/11/5)
[4]「鳩山国連演説『25%削減』の舞台裏」 (日経ビジネス、2009/11/24&25)★お勧めの記事です。
[5]Countries' negotiating positions (各国の交渉スタンス) Guardian紙作成
[6] Climate Justiceという用語が最初に使われたのは、『Greenhouse Gangsters vs. Climate Justice』by Kenny Bruno, Joshua Karliner & China Brotsky, CorpWatch November 1st, 1999 ではないかと思われる。
[7]“From Kyoto to Copenhagen”- Address at the opening of the Global Editors' Forum アナン氏スピーチ
[8]音楽で意思表示を。地球温暖化対策を訴える「Beds Are Burning」無料配信中(Livedoorニュース、 2009/10/20)
図: 世界の二酸化炭素排出量に占める主要国の排出割合と各国の一人当たりの排出量の比較(2006年) (画像をクリックすると拡大)
出典:全国地球温暖化防止活動推進センター (http://www.jccca.org/)
続報あり:2009/12/23、COP15 コペンハーゲン協定
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2009/12/cop15.html
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