2009/11/27

東アフリカ共同体 が 「共同市場」 をつくる

■ ニュース ■

2009年11月20日、「東アフリカ共同体」(East Africa Community:EAC) に加盟しているケニア、ウガンダ、ルワンダ、ブルンジ、タンザニアの各大統領は、『東アフリカ共同体共同市場の創設に係る議定書』(Protocol for the Establishment of the East African Community Common Market)[1] に調印した[2]。




■ 解説 ■

1999年11月30日、東アフリカ共同体創設のための条約(Treaty for the Establishment of the East African Community)[3] がケニア、ウガンダ、タンザニアによって調印された。2007年7月、ルワンダとブルンジがEACに加盟している。

次のような段階を経て、最終的に連邦政府体制( Political Federation)にすることを目標にしている。[4]
①Customs Union (関税同盟:2004年3月に議定書調印)
②Common Market  (共同市場:今回議定書に調印)
③Monetary Union(通貨・金融統合:2012年を予定)
④Political Federation(連邦政府体制:2015年を予定)

今回調印された議定書が批准(2010年7月1日が批准の期限)されると、域内の税金が撤廃され、物・人・労働力・サービス・資本は、原則自由に移動することができるようになる。

税金については、加盟国は、短期的には関税収入がなくなるが、長期的な利益が大きいという判断をしている。たとえば、ルワンダは年間12百万ドルの減収になると試算している。[5]

これまで、5ヶ国内で働く場合、労働ビザが発行される保証はなかったが、今後は域内で働く場合、労働ビザは迅速に発行されるようになる。

なお、加盟国以外の国からの安価な製品に対してはCommon External Tariffs が課税される。

<EAUについて>
面積(湖を含む): 182万Km2 (日本は37万Km2)
人口:   126百万人 (日本は127百万人)
GDP:    $60,000百万
平均 1人当たりGDP: $424
平均 GDP成長率: 6.8%
詳細は、統計資料『East African Community Facts & Figures - 2008』[6]を参照。

組織として、5ヶ国首脳会議(Summit)と事務局(Secretariat)以外に、行政・立法・司法機関として、大臣会議(Council of Ministers)、東アフリカ議会(East African Legislative Assembly)、東アフリカ裁判所(East African Court of Justice)がある。


■ コメント ■

・5ヶ国が共同体を形成することで、多くのメリットを享受できる。
①経済的な成長:
インフラ設備投資計画を立案することにより、資源の無駄を省き、効率的にインフラが整備される。人の移動を制約しないことにより、経済が活発化する。たとえばウガンダ、ルワンダ、ブルンジは、いわゆる内陸国ではなくなる。
②政治的な安定:
次のような簡単なロジックが考えられる。
経済が安定することで外国投資が増える。→雇用が増える→収入が増える→政治的に安定する。
治安については、小型兵器及び軽量兵器の拡散防止、東アフリカ混合部隊の創設が検討されている。[7]

・隣国(スーダン、ソマリア)が分裂する可能性がある(あるいは分裂している)ことを考えると、5ヶ国が共同体を実現していることは、画期的なことである。

・EACはホームページを開設し、合意書、共同宣言、統計資料など多くの資料が掲載されています[8]。また、外国からの投資家向けの小冊子(Guide for Investors)[9]に、EACが求めている投資内容が書かれているので、是非アクセスしてみて下さい。

・将来的には、EAC以外の経済共同体(COMESA、SADC)を刺激することが期待される。[10]


■ 参考資料 ■

[1]議定書の原文
『Protocol for the Establishment of the East African Community Common Market』


[2]ニュース記事
①「EAC states to open up labour markets as part of protocol」(Business Daily, 2009/11/27)
②「East African bloc sign common market treaty」(Kenya Broadcasting Corporation, 2009/11/20)

[3]『Treaty for the Establishment of the East African Community』(1999年11月30日付) 

[4]『EAC Development Stategy 2006-2010: Deepening and Accelerating Integration』

[5]「East Africa: At last, common market becomes reality」
(The East African (Kenya), 2009/11/23)

[6]『East African Community Facts & Figures - 2008』 

[7]「東アフリカ共同体、安全問題について討議」(CRI, 2009/10/6)

[8] EAC Documents and Publications のページ

[9] 『East African Community  Information Guide for Investors』

[10] 南部、東部アフリカの共同体

①東アフリカ共同体 
East African Community (EAC) 
拡大するにはそれぞれの図をクリック










②東南部アフリカ共同市場
Common Market for East and Southern Africa (COMESA) 










③南部アフリカ開発共同体
Southern African Development Community (SADC)










その他資料:
アフリカにおける主要地域機関の相関図(2009年9月現在)

東アフリカ5ヶ国の大統領の写真 (拡大するには写真をクリック)







 

出所: kilimanjaronewyorkconnections.com

・東アフリカ共同体と中国の関係

東アフリカ共同体、中国との関係強化を希望
2009-08-13 19:52:41

EAC・東アフリカ共同体のムワバチュ事務局長は12日、記者のインタビューを受けた際、「EAC は貿易や投資などの分野における中国とのパートナー関係を強化したい。EACは中国を真の経済協力パートナーと認める」と述べました。

東アフリカ地区に対する中国の投資問題に触れた際、ムワバチュ事務局長は、「この地区における中国の投資は主に鉱山や道路などのインフラ施設に集中している。中国はエネルギー開発で豊富な経験がある。東アフリカ地域のエネルギー投資には大きな潜在力がある。地熱や風力発電、太陽エネルギーの開発において、中国との協力強化を希望する」と述べました。

また、EACの一体化プロセスの問題について、ムワバチュ事務局長は「関係作業は順調に進められている。EACの5つの加盟国の首脳は今年11月に『EAC共同市場条約』に調印する予定だ。この共同市場は2010年に公式にスタートさせる」と述べました。(翻訳:トウエンカ)
http://japanese.cri.cn/881/2009/08/13/1s145245.htm


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