2009年11月16から19日にかけて、小池百合子衆議院議員が日本リビア友好協会の会長として、リビア・ビジネス・ミッションを率いてリビアを訪問した。11月19日には、カダフィと面会した。
<産経新聞11月20日より引用>
カダフィ大佐が小池百合子氏と会談 日本との協力強化を表明 [1]
カダフィ大佐が小池百合子氏と会談 日本との協力強化を表明 [1]
2009.11.20 09:01
日本リビア友好協会の経済使節団を率い、リビアを訪問した小池百合子元防衛相(同協会会長)は19日、首都トリポリ市内で最高指導者カダフィ大佐と会談。関係者によるとカダフィ氏は、アフリカ開発などにおける両国の協力強化を表明した。
世界8位の原油確認埋蔵量を誇るリビアは2003年、大量破壊兵器の開発計画放棄を表明し国際社会に復帰、欧米など外資参入が進んでいる。カダフィ氏が日本の要人と公に会談するのは06年の松田岩夫科学技術担当相(当時)以来で、両国の経済関係拡大に好材料となりそうだ。
会談はテントで行われ、カダフィ氏は黒の民族衣装姿で小池氏らを歓迎。関係者によると、カダフィ氏は終始、友好的で「日本の技術力を高く評価する」と述べ、原油や天然ガス関連、太陽光発電などでの関係強化に期待を示した。(共同)
----- 解説 -----
1.ニュースの補足
このニュースは共同通信が提供したものであるが、大手の新聞は産経新聞だけが報じている。その他、地方新聞は北海道新聞、東京新聞など5社以上が報じている(11/22現在)。共同新聞(英文)[2] には日本語の記事に書かれていないことがあるので、以下補足する。
Koike, who also served as environment minister under Koizumi, proposed that Japan and Libya cooperate to build environmentally-friendly cities in Libya. Qaddafi responded positively to Koike's proposal, the sources said.
小池議員は、日本とリビアが共同でリビア国内に環境保全型の都市を造ることを提案し、カダフィは前向きの反応を示した。The Japanese delegation, comprising about 30 representatives of 16 oil firms and trading houses, arrived in Libya on Monday for talks with Libyan officials.
経済ミッションは約30社で構成され、16社の石油企業と商社などが含まれていた。2.小池百合子議員とリビアとの関係 [3]
1971年9月 関西学院大学 社会学部中退
1973年夏 リビア訪問(日本商社の通訳として)
1976年10月 カイロ大学卒業
1977年 アラビア語通訳、講師(日本アラブ協会事務局長)
1978年 リビア訪問(日本TVコーディネータ・インタビュアとして)
1979~1992年 TVキャスターなど
1992年7月 参議院議員初当選
1993年 日本アラブ協会顧問就任
2006年12月 リビア訪問(内閣総理大臣補佐官として。カダフィと面談していないと思われる。)
2009年6月 日本リビア友好協会会長就任。(2009年1月に逝去された柿澤弘治氏(元外相)の後任。)
2009年7月 『南地中海の新星リビア―高まる日本への期待』(共著、同友館 )出版 [4]
2009年11月 リビア訪問(日本リビア友好協会会長として。カダフィと面談。)
3.政府 及び 日本リビア友好協会によるリビア要人往来 [5]
2004年6月 逢沢一郎外務副大臣リビア訪問(小泉首相の親書を携えて、カダフィ指導者と会談)
2004年12月 福島啓史郎外務大臣政務官リビア訪問
2005年3月 柿澤弘治会長:エネルギーミッション
2005年4月 リビア Salf al-Islam氏 来日
2006年4月 町村信孝前外務大臣、柿澤会長:エネルギーミッション
2007年6月 柿澤会長:リビア・ビジネス開発ミッション
2009年11月 小池百合子会長:リビア・ビジネス・ミッション
----- コメント -----
1.リビアに進出できそうな業種
リビアへの投資の問題は、①リビアの官僚組織が未熟で手続きに時間がかかること、②ジョイントベンチャーを組んだ場合、マネージャークラスをリビア人にするようリビア政府が要求しているなど、必ずしも投資がやり易いということではないようだ。しかし、リビアには、石油収入があり、インフラ整備などの国造りはこれからであるので、ビジネスチャンスはいくらでもある。特に、建設業界などにとって可能性が高いと思われる。
2.日本政府の関与
(1) 課題1:日本政府のトップが訪問していない。
リビアの国際復帰後、各国は大統領・首相あるいは大臣クラスがリビアを訪問しているが、日本の首相、あるいは現職大臣は訪問していない。今回訪問した小池議員は、上記経歴のとおり、アラビア事情に最も精通している国会議員であるが、現時点では野党の一議員なので、インパクトが弱いのは否めない。
(2)課題2:日本政府にとって、リビアの魅力
少なくとも2つの理由で、リビアは魅力的である。
①石油埋蔵量。日本の石油上流企業や商社(エネルギー部門)は、既にリビアの鉱区を取得し進出している。試掘の結果はまだ出ていないが、リビア政府の原油取分割合が大きいため、開発に着手するためには、油価が高くなるか、大油田を発見するか、あるいはその両方の前提が必要となる。
今後、既に石油(あるいはガス)が発見されているがまだ開発されていない鉱区、あるいは古い油田だが増産することができる鉱区が外国企業に付与されると考えられる。そのために、多数の石油会社が今回のビジネスミッションに加わっている。
②「リビアモデル」。リビアは大量破壊兵器(WMD)を放棄して国際社会に復帰したが、北朝鮮がリビアを見習うように、リビアに北朝鮮を説得してもらうことである[6]。ただし、リビアは核兵器を開発していただけで、保有していたわけではない。また、国連が制裁を加えていた。一方、北朝鮮は既に核を保有しているとみられ、核が北朝鮮にとって生命線になっていること、また中国が支援している----という違いがある。
(3)課題3:日本政府による民間企業への支援
日本政府は民間企業がリビアに投資して欲しいはずだが、民間企業にとっては、リビアは多数ある投資国の1つにすぎず、採算性がなければ進出しない。日本政府がリビアと経済関係を深めたいのであれば、政治的イニシアチブをとる必要があると思われる。
日本がリビアに何をオファーできるのか、また、リビアが日本に何を求めるのか、注目する必要がある。「Give and Take」。リビアは日本の常識以上のことを要求する可能性がある。例えば、英国のShell、BP、米国のExxonMobilが随意契約で鉱区を取得したが、それは両国がリビアの国際社会復帰に貢献してくれたお礼でもある。リビアは両国がリビアにしたことと同様の程度のことを日本に求める可能性がある。
ただし、2つの報道が注目に値する。
①関係者によるとカダフィ氏は、アフリカ開発などにおける両国の協力強化を表明した。
②小池議員は、日本とリビアが共同でリビア国内に環境保全型の都市を造ることを提案し、カダフィは前向きの反応を示した。
なぜならば、これは、日本だけ一方的にリビアに対し何かをするのではなく、日本とリビアが共同でビジネスをする、ということであるからである。もしそうであるならば、リビアは、おそらく運用資産約700億ドルといわれるリビアの政府系ファンドのリビア投資庁(Libya Investment Authority:LIA)を使うのではないかと考えられる。カダフィは採算性を考えずに行動すると言われているが、LIAであれば採算性を重視するということを意味するので、悪くない話である。もしLIAが相手であれば、日本政府は国際協力銀行(JBIC)の資金を使う可能性があると思われる。
----- 参考資料 -----
[1] 産経新聞 (2009/11/20)
[2] Libya's Qaddafi meets Japan's ex-defence minister, calls for better ties Nov 20, 2009 (BBC Monitoring via COMTEX)
[3] 小池百合子Official Website 2009
[4] 『南地中海の新星リビア―高まる日本への期待』(共著、同友館 )
[5] 外務省 日本リビア友好協会
[6] 官房長官発表 (2006/12/1)
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