2009/12/13

韓国のアフリカ政策

韓国の対アフリカ外交に関する3つのニュースを紹介します。今後、アフリカにおける韓国の援助・貿易・投資が増え、プレゼンスが高まると考えられます。


■ ニュース ■

1.2009年11月24日、「韓国・アフリカフォーラム」が開催された。アフリカの15ヶ国から首脳・大臣が参加し、韓国は次のことを約束した。[1]
①アフリカに対するODA:2012年に2倍(2008年比)にする。
②アフリカから研修生(industrial trainees):2009年から2012年の間に5,000人を招く。
③アフリカへの海外ボランティア:2012年までに1,000人以上派遣する。







出典:「Korea-Africa Forum」 (東亜日報 英語版、2009/11/24)


2.2009年11月25日、韓国は経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC)への加盟が認められた[2]。これは、国際社会が韓国を「援助を受ける国」から「援助をする国」として公式に認たことを意味する。

3.2009年12月上旬、韓国の政府改革委員会と外交通商部は、以下の改革案をまとめた。[3]
①大使、公使の職(世界で129ポスト)の70%を職業外交官から、また、30%を民間人から登用する。
②現地採用の上級研究員を、2010年から2012年にかけて50人採用する。応募資格は、博士号あるいは弁護士資格を持つもの。
③74の在外公館において、2010年から2011年にかけて、専門職行政官を108人採用する。応募資格は、修士号レベルの資格を持つもの。[4]


■ 解説 ■

1.「韓国・アフリカフォーラム」について
2006年11月(第1回)と2009年11月(第2回=今回)に開催されており、次回は2012年を予定されている。韓国はこれまで手薄だった国・地域においては、二国間の外交に加えて、当該地域と「フォーラム」という形で関係を深めようとしている。「アフリカフォーラム」以外に、「中央アジアフォーラム」、「中南米フォーラム」が開催されている。[5]

2.OECD/DACについて
経済協力開発機構 開発援助委員会に加盟しているのは、2009年12月現在23ヶ国である。BRICs諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)は加盟していない[6]。韓国の援助額はこれから伸びると期待されている。朝鮮日報(日本語版)を引用する。[7]

<引用始め>
韓国が昨年、国際社会に支援したODA額は8億ドルで、主要先進国の中でも最下位圏に属する。米国260億ドル、ドイツ140億ドル、イギリス110億ドル、日本93億ドルなどはもちろん、韓国より経済規模が小さいオランダの70億ドル、スイスの20億ドル、アイルランドの13億ドル、フィンランドの11億ドルよりも少ない。
国民総所得(GNI)に対するODAの支出割合は0.09%で、主要国の中で最も低い水準だ。国民一人当たりのODA貢献額も、16ドルに過ぎない。DAC加入国の平均は134ドルだ。外交通商部の当局者は、「(DACに)加入するまでになったのは評価されるべきことだが、正直言って、国連事務総長を輩出し、主要20カ国・地域(G20)首脳会議を主催する国としては、国際社会の期待に達していないのが現実」と話す。
<引用終わり>


3.外交官の改革
韓国の新聞(日本語版)は以下の問題を指摘している。朝鮮日報を引用する[8]。
①韓国の外交官人事の仕組みの根底には、専門性の強化という考え方が非常に希薄だ。
②アフリカで勤務することになると、現地ではただひたすらその地から抜け出すことばかりを考えるという。


■ コメント ■

1.農業に進出
日本と同様に、韓国も「資源外交」を重視している。2008年にはアフリカ諸国へ赴任する外交官が増員されたようだ[9]。韓国の場合、石油・鉱物資源だけでなく、農業も求めるはずである。既に、マダガスカル(だだし契約が破棄された。)とタンザニアで取得している[10]。だだし、アフリカに農地を求めているのは韓国だけでなく、中国、中東諸国、アフリカの一部の国も含まれる。これが新植民地主義あるいは「land grab」なのかどうかはここでは論じないが、豊潤な土地を持ちながら食料を輸入している国にとっては、韓国の農業技術が魅力的であると思われる。韓国農業では「セマウル運動」をアフリカに適用する予定である[11]。

2.韓国の経済発展モデルの検証が必要
私はこのエントリーを書くことで、開発経済学の重要性を改めて認識した。韓国が発展した理由の検証は、アフリカ諸国の発展に不可欠だと考える。

3.外交官の改革
日本では、2008年6月に三井物産OBの松山良一氏がボツワナの初代大使として、また2009年6月には丸紅OBの杉浦勉氏もブルキナファソの初代大使として赴任した。総合商社OBの大使は杉浦氏で8人目となり、うち5人が2006年以降に任命されている[12]。ただし、日本は、韓国のように民間出身者の比率を設定していない。

4.アフリカにおける韓国企業の動向
韓国企業(STX)は、ガーナにおいて今後6年間で20万戸の住宅を建築することを決めた。費用は10,000百万ドル(9,000億円)。9万戸は政府が所有し、残りは売却される。[13]


■ 参考資料 ■

※朝鮮日報はメンバーでないと読めません。

[1]「社説:韓国型アフリカ外交に期待する」 (中央日報、2009/11/25)
[2]OECD Development Assistance Committee (DAC) welcomes Korean membership
[3] 「High Diplomatic Posts to Open for Civilians」(The Seoul Times,2009/12/8)
[4]「外交部、博士・弁護士の先任研究員を登用へ」(朝鮮日報 日本語版、2009/11/30)
[5]「韓国外交の成果を高める『フォーラム外交』」(朝鮮日報 日本語版、2009/12/02)
[6] DAC Members and Date of Membership
[7]「ODA:韓国の援助額・国民意識は『まだまだ』」
(朝鮮日報 (日本語) 2009/11/22)
[8]「【社説】外交官の専門性強化策からまとめよ」(朝鮮日報 日本語版、2009/11/30)
[9]「【コラム】韓国外交部の人事システムの後進性」(朝鮮日報 日本語版、2009/6/14)
[10]「韓国大宇 日本畑地総面積の6割以上の食料生産農地をマダガスカルに確保」
(農業情報研究所(WAPIC)2008/11/19)
「韓国 タンザニアで農地10万ヘクタール開発へ 半分は自国向け加工食料品生産用」(農業情報研究所(WAPIC)2009/9/25)
[11]「韓国の『セマウル運動』、アフリカ貧困国に伝授」 (WoW!Korea News,2009/07/22)
[12]「ブルキナファソ大使に丸紅OB:異色商社マンに託された資源外交」(週刊ダイヤモンド、2009/06/04)
[13] 「South Korea in $10bn Ghana homes deal」(BBC、2009/12/9)

<その他>
韓国の援助について (HP右上のEnglishをクリック)
ODA Korea
Korea International Cooperation Agency (KOICA)

セマウル運動
Wikipedia
ビデオ(日本語)16分 時間に余裕がある方は是非どうぞ。


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1 件のコメント:

  1. FTによる「大宇ロジスティックス社」の記事は誤報だったようです。詳細は以下をご参照下さい。

    新国際情勢下の地下資源と農業資源:日本・アフリカ関係へのインプリケーション by 小松啓一郎 (53/66頁 農業分野での事例:「大宇ロジスティックス社」誤報問題)
    http://www.seijo.ac.jp/pdf/faeco/kenkyu/187/187-komatu.pdf

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