私は以前は、ひも付き援助にしてはならない、と考えていました。ひも付き援助案件を受注するため企業が談合したり、政治家や役人に賄賂を支払うという事件があったし、国際社会からもひも付き援助を減らるべきだ、と要請されているからです。しかし、近頃は、ひも付き援助の割合を増やすようにできれば、発展途上国だけでなく、日本企業、ひいては日本の経済を活性化できるのではないか、と考え方を変えました。
今回のエントリーでは、ひも付き援助についてのニュースを紹介します。
【 ニュース 】
2005年7月のG8(グレンイーグルズ・サミット)においてアフリカ諸国への援助を2010年に倍増すると発表しているが[1]、2010年5月25日、「ONE」というNGOがその約束を検証したレポートを発表した。[2]
【 解説 】
1.ONEレポートの内容
(1)援助額
・日本がグレンイーグルズで倍増すると発表したが、ONEは日本の約束を「weak commitment」と評価している。(確かに表のCの欄を見ると、相対的に低い金額をコミットしている。)
・G7総額をみると、2010年の援助予想額(31,329百万ドル)はコミット額(40,228百万ドル)を達することはできない。(表の桃色部分参照)
・G7のうち、コミット額を達成した国は、カナダ、日本、米国である。(表の黄色部分参照)
・特にイタリアは、2010年の援助予想額は、2004年の援助額を下回っている。(表の薄緑色部分)
表1:各年毎のアフリカ向け援助額
表2:アフリカ向けODA推移(2004~2010年)
(2)ひも付援助の比率@2008年
G7総額におけるひも付援助(tied aid)の比率は19%(untied aid=81%)であった。個別には、米国(27%)、ドイツ(23%)、イタリア(21%)、フランス(15%)、日本(3%)、その他不明である[3]。日本は優等生である。
2.ひも付き援助が嫌われる理由
OECDは、2001年4月、ひも付き援助をやめるように提案書を発表したが、その理由は、「援助の効率性」(aid effectiveness)である。ひも付援助の場合、平均して15%~30%、特に食料の場合40%位高くなるとのことである[4]。 援助の「量」を多くするためには、援助を受ける国が一番安いものを買えるようにすべきである、という考えが根底にある。(OECDの決議などは末尾[5]参照。)
【 コメント 】
1.高性能の製品が売れる(良い)とは限らない
ひも付き援助について、以下のように自問自答してみた。(この部分は、某国に駐在されていた日本大使のお話を参考にした。)
<問い> 砂漠の国が太陽光発電パネルを買う場合、日本製と他国製のどちらを選ぶか?
前提は以下のとおり。
①日本製:高価。発電効率が良い。
②他国製:安価。多少発電効率が劣るが、「安かろう悪かろう」ではない。
具体的には、発電量は日本製3枚と他国製4枚が同じだとする。価格は日本製3枚より他国製4枚のほうが安いとする。
<答え> 他国製が選ばれる。砂漠の国では土地の制約がないので、発電効率より価格が重視される。日本企業は、高性能・高価格の製品だけを追求するのではなく、低性能・低価格の製品を作る努力もしなければならない。
<問い> 次に、日本政府が太陽光発電パネルを援助する場合、どのようにすべきか?
<答え>
(1)「無償資金協力」の場合、ひも付き援助にしている。これは、援助資金は日本国民の血税なのだから、日本企業の製品を与える---という考えである。
(2)大規模の場合は「有償資金協力」になるので、ひも付きにはできない(というのが現行のやり方である)。日本製品に価格競争力があれば、問題がないが、実際はそうではない。ここで1つ工夫する必要がある。太陽光発電パネルと「何か」をパッケージにして、ひも付き援助にするのである。その「何か」とは、技術移転・雇用が生まれるよう仕組みだと思うが、私にはまだ具体的な方策はわからない。
2.金の卵を産むニワトリを殺すな
日本が裕福で余裕があれば、「援助の効率」だけを考えて援助してもかまわない。しかし、現在の日本はやせ細ったニワトリであり、少しばかり餌を食べて、金の卵を産もうとしている。痩せている時は、できるだけ多くの餌を食べて、体力をつけなければ、いずれ金の卵(援助)を産めなくなる。日本人はあまりにも真面目であり、変化に柔軟に対応できないのだ。
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【 参考文献 】
[1] グレンイーグルズ会議 (外務省)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/summit/gleneagles05/index.html
最新開発援助動向レポート No.19 「グレンイーグルズ・サミット」 林 泰史
http://dakis.fasid.or.jp/report/pdf/report19.pdf
[2] ONE's 2010 DATA Report
http://www.one.org/c/us/pressrelease/3338/
http://www.one.org/report/2010/en/downloads/DR2010.pdf (全部で254頁)
[3] ONE's 2010 DATA Report の74~77頁。
[4]「Untying aid: Is it working? Evaluation of the Paris Declaration」(60頁)
http://www.oecd.org/dataoecd/51/35/44375975.pdf
[5] 経緯、主な決議等
2001/4 DAC RECOMMENDATION ON UNTYING OFFICIAL DEVELOPMENT ASSISTANCE TO THE LEAST DEVELOPED COUNTRIES
http://www.oecd.org/dataoecd/14/56/1885476.pdf
2005/2/28~3/2 PARIS DECLARATION ON AID EFFECTIVENESS
http://www.adb.org/media/articles/2005/7033_international_community_aid/paris_declaration.pdf
2006/3/15:改正 http://www.esteri.it/MAE/doc/4_28_66_79_84_e.pdf
2008/6:改正 DAC Recommendadationon Untying ODA
http://www.oecd.org/dataoecd/61/43/41707972.pdf
その他の参考文献
猪瀬直樹の「眼からウロコ」 「戦略なきODAを早急に考え直すべきだ 優れた技術があっても海外に売り込めない日本」(日経BP net、2010/2/16)
http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100215/210700/?P=1
杉下恒夫ジャーナリスト・茨城大学人文学部教授 「もっと国民的論議が必要な、今後の無償資金協力の進め方」(国際協力プラザ、2006/6/28)
http://www.apic.or.jp/plaza/oda/study/20060608-01.html
COP15 コペンハーゲン協定(アフリカのニュースと解説、2009/12/23)
※菅直人副総理(2009年11月当時)の発言に注目。
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2009/12/cop15.html
ODAの裏には政治あり(アフリカのニュースと解説、2010/2/07)
http://let-us-know-africa.blogspot.com/2010/02/oda.html
我が国建設業の海外展開のための国の支援についての提言 (海外建設協会、2010/2/14)
http://www.ocaji.or.jp/images/teigen.pdf
海外建設受注実績の地域別推移(1979年度~2009年度)
http://www.ocaji.or.jp/overseas_contract/images/graph_2.pdf








