2012/07/16

台湾の外交政策: 中国との付き合い方のモデル

中国(中華人民共和国)の大物政治家達は頻繁にアフリカを訪問し、大盤振る舞いで援助している。企業も積極的に投資しており、中国とアフリカ間の貿易額は指数関数的に伸びている[1]。物や金だけでなく、多くの中国人がアフリカに入っている。僻地で活動している日本の青年海外協力隊員のブログを読めば判るが、彼らはいつも中国人に間違えられるという[2]。

一方、台湾(中華民国)と外交関係があるアフリカ諸国は4ヶ国にすぎない。馬英九(Ma Ying-jeou)氏は、2008年5月に台湾総統に就任し、2012年5月に2期目に入る直前の4月に初めてアフリカを訪問した。当初4ヶ国を訪問するはずであったが、土壇場でキャンセルされ、3ヶ国を訪問した。

今回の記事で 馬英九氏の外交政策 及び アフリカ歴訪について概観してみたが、本件は日本外交のヒントになると思う。


【 ニュース 】

馬総統、外遊の成果強調 アフリカ訪問終了

 (2012/04/18)   (桃園 18日 中央社)アフリカ歴訪を終えて帰国した馬英九総統は18日、外遊の成果を強調するとともに、スポーツを通じて友好国の国家元首と異なる関係を構築したことについて「意外な効果があった」と喜んだ。
   12日間の日程でブルキナファソ、ガンビア、スワジランドの3カ国を訪問した馬総統は、これら友好国との関係強化や共同コミュニケ調印など、外遊の成果をアピールする一方、台湾がアフリカで進める職業訓練の実績に驚いたとし、「スワジランドの公共工事担当閣僚も台湾の訓練を受けていた」と説明した。
   また、ガンビアのヤヤ・ジャメ大統領、スワジランドのムスワティ三世との腕立て伏せ競争など今度の「スポーツ外交」については「異なる関係を築いたのは予想外の効果だ」と喜びを語った。[3]



【 解説 】

台湾と外交関係があるのは、世界中で23ヶ国あるが、アフリカでは4ヶ国である[4]。馬英九総統が訪問したのはブルキナファソ(3泊)、ガンビア(4泊)、スワジランド(2泊)であり、「仁誼の旅」(思いやりと友好の旅)と位置づけた。残り1ヶ国はサントメ・プリンシペであるが、直前にキャンセルになった(後述)。 以下、①台湾の外交政策、②台湾とアフリカ友好国との関係について述べる。


1.台湾の外交政策

馬英九総統は節目節目で彼の考えを公表しており、台北駐日経済文化代表処(大使館に相当)のホームページ(HP)、国民党(政権与党、彼が主席)のHPにおいて、日本語で読むことができる[5]。 なお、以下は台湾の外交政策というより、馬英九総統の外交政策である。

(1)外交政策の基本

 ①「先急後緩、先易後難、先経後政」 の原則
  ・急ぎのものを先に、その他の問題はゆっくりと、
  ・解決しやすい問題を先に、難しい問題は後から、
  ・先に経済に対処し、後から政治問題を話し合う。[6]

 ②「和解休戦」と「活路外交」
  ・「和解休戦」とは、台湾と中国が和解して両国関係を安定させること。
  ・「活路外交」とは、台湾と中国が和解したことを、他国との「外交領域へ延伸させる」ことである。[7]

以下は馬英九総統の2008年8月の発言である。
われわれは常に相手を驚かせるようなことをしてはならず、国際的なパートナーが新聞を見てはじめて事情の変化に気づくようであってはならない。できる限りハイレベルの相互信頼を構築し、われわれの動向を相手方に知らせなくてはならない。われわれは一方的に海峡両岸の現状を変更することはなく、「統一しない、独立しない、武力を用いない」の政策を推進する。その他の方面においてもわれわれは注意を払う。但し、これは事を恐れたり争う勇気がないのではない。われわれは自己のはかりが必要であり、小さなことに拘るあまり大きなものを失ったり、また得ることより失うことの方が多いようであってはならない。[7-後半]



(2) 対中融和政策の目標

馬総統は、台湾と中国がお互いの友好国を奪おうとして「金銭外交」をするという「悪性競争」[7-前半] を止めるように路線変更した 。

台湾と中国の関係が改善すると、中国は台湾の友好国と実質的関係(substantive relations)を持つことになる。同様に、台湾は中国の友好国と同じような関係を持つことができる[8]。それが台湾にとってメリットになる。

ちなみに、今回の外遊において、「人道的援助を提供する役割を果たす」[9] と発言しているが、それは、①中国と競争しているわけでない、という中国へのメッセージと、②独裁的色彩が強い国への援助は人道的なものだ、という世界へのメッセージであると考えられる。

(3)活路外交の成果

馬総統は第2期目の総統就任演説(2012/5/20)で、第1期(4年間)を総括し、台湾と中国との和解は実質的な利益をもたらしていると発言している。[7]

「過去60年で最も平和な台湾海峡情勢を作り出し、長期的なパートナーたちの信頼と国際社会の評価を得て、中華民国の国民は127の国と地域に、あらかじめビザを取得せずに行けるようになったのです。」なお、馬総統が総統に就任した2008年5月には54ヶ国であった。[10]

図1はアフリカ諸国の台湾と中国に対するビザ免除待遇の状況を表示したものだが、台湾は政治的には劣勢だが、経済交流の面からは優勢であることが判る。

図1


(4)外交課題

台湾が国連に加入(復帰)することが最終目標だが、現在は国連の専門的機関へオブザーバー資格で参加することが当面の外交目標となっている。そのために、台湾は友好国の推薦を必要としている。なお、専門的機関とは、国際民間航空機関(ICAO)と国連気候変動枠組条約(UNFCCC)である。[11]


2.台湾とアフリカ友好国との関係

台湾は国際合作開発基金(ICDF)を通じて援助を実施している。アフリカ 7ヶ国で実施中のプロジェクトは表1のとおりである。[12]

表1

(1)ブルキナファソ (布吉納法索)

今回の訪問に際し、台湾は、マリから4万人の難民に対処する資金として、160万ユーロ(150百万円)を寄付した[13]。

台湾とは、1961年12月に国交樹立し、1973年10月に断交し、1994年2月に回復している。[14]

在台湾ブルキナファソ大使館によれば、ブルキナファソの米生産量の34%が台湾の農業技術協力援助によるものであるとのこと。[15]

台湾は、「A Light for Africa」プロジェクト(BOPビジネス)を推進している。台湾製のLED太陽光発電ライト(価格10ドル、充電時間30~40分、使用時間4時間)を販売するものである。ブルキナファソの都市部において停電しない世帯は15%に満たないし、全土の電気普及率は5%以下である。[16]


(2)ガンビア(甘比亞)

今回の訪問に際し、台湾は、食料危機対策として、3百万ドル(240百万円)を寄付した。[13]

台湾とは、1968年1月に国交樹立し、1974年12月に断交し、1995年7月に回復している[14]。ガンビアは、台湾と同様な国際関係問題を抱えているため、親近感をもって接していると考えられる。というのも、1982年当時、ガンビアと隣国セネガルは関係が良かったので、「セネガンビア国家連合」を形成したが、方向性の不一致により1989年に解消した。2000年に陳水扁総統がガンビアを訪問した際、ジャメ大統領は、「ガンビアはセネガルのが一地方政府だと見なされていた。外部の圧力にもガンビア国民の主権独立を求める意志は変わらなかった。台湾も同様に、中国の圧力に負けることなく国連復帰の決意を貫くにちがいない」と語っている[17]。その他の背景は、ジャメ中佐(当時)は1994年にクーデターにより大統領になったが、西側諸国が冷たく扱った時に台湾から恩を受けたということが考えられる。

台湾は、農業、教育、医療保健、科学技術の分野でガンビアに協力している。過去10年間で300人以上の留学生を受け入れており、現時点で約200名の学生が留学中である[18]。なお、ガンビアは中国にも留学生(本年は12名)を送っておいる。[19]


(3)スワジランド(史瓦濟蘭)

今回の訪問に際し、台湾は30万ドル相当(24百万円)のノートブックPC 300台、周辺機器、ソフトを寄付した。[13]

台湾とは、1968年9月に国交樹立した。[14]
援助に関しては、農耕団、手工芸団、医療団が訪問して、職業訓練をおこなっている。台湾企業(約25社)が縫製工場などに投資をして、同国に1万余の就労の機会が創出されたとのことである。ただし、低賃金を問題として訴訟が起こされているようだ。[20]


(4)サントメ・プリンシペ(聖多美普林西比)

台湾とは1997年5月に国交樹立した[14]。

ポルトガルから独立した1975年、初代大統領Mannuel Pinto de Costa(任期:1975~1991年)が中国と外交関係を樹立した。1997年5月、Miguel Trovoada首相は、政府の反対を押し切って、台湾と外交関係を樹立した[21]。現在の首相(2010/8就任)のPatrice Emery Trovoadaは、Miguel Trovoadaの息子である。一方、現在の大統領はMannuel Pinto de Costa(初代大統領で2011年8月に返り咲いた)であり、中国派である。要するに、首相は台湾派、大統領は中国派であり、台湾にとっては不安定要因であると考えられる。

1997年5月に外交関係を樹立してから、台湾は140百万ドル以上を援助している。2009年の援助額は、台湾(13百万$)、ポルトガル(3百万$)、EU(2百万$)、国連(1.3百万$)であり、台湾の比率が際立っている。[22]

馬総統がサントメ・プリンシペの訪問を取り止めた理由は、Mannuel Pinto de Costa大統領がキューバを訪問するので不在であるということであった。台湾としては訪問に係る事前交渉に合意してから発表しているはずなので、大統領が土壇場でキャンセルしたに違いない。(最近の台湾とサントメ・プリンシペの出来事にいては末尾参考文献を参照のこと。)



<最近の台湾とサントメ・プリンシペの出来事>

2011年1月14日、サオトメ・プリンシペの首相(Patrice Emery Trovoada、2010/8/14首相就任)が初めて台湾を訪問した。[23]
3月14日、総統府は馬総統はサントメ・プリンシペを含む4ヶ国を訪問する旨発表した。[24]
3月26日、外交部は馬総統はサントメ・プリンシペを訪問しない旨発表した。[25]
3月29日マカオの新聞は、「中国は3月28日に『中国とポルトガル語諸国経済貿易協力フォーラム』の事務レベル協議をマカオで開催したが、サオトメ・プリンシペからも参加した」と報道した。[26]
4月6日、外交部は「サオトメ・プリンシペはマカオでの会議に参加しなかった。ただし民間部門が参加したかどうかは不明」と発表した。[27]
4月7日、馬総統は、アフリカ諸国訪問のため出発。(18日に帰国)
5月20日、Trovoada首相は、馬総裁の第13代(2期目)の総統就任式列席のため台湾を訪問した。[28]



【 コメント 】


1.台湾の外交(アフリカ関連)

(1) サントメ・プリンシペと中国

サントメ・プリンシペの大統領が馬英九総統の訪問をキャンセルしたことは、台湾ではなく中国と関係を持ちたいという現れであると思う。台湾の活路外交は「中国との関係が悪化しない」という前提に立っており、中国もそれを認識しているはずである。中国は台湾を刺激しないよう安易にサントメ・プリンシペと外交関係を樹立することはないと思うが、今後の動向に注目したい。


(2) アフリカへの援助

馬英九総統はアフリカ歴訪から帰国して次のように発言している。

・「国際社会に参与するためには、台湾が評価に値する実力を備え貢献のできる良質な国であり、台湾が国際社会に参加することで実質的な利益がもたらされることを示さなければならない。実際、民主的で開放され、世界に進んで報いようとする台湾は、さまざまな面で国際社会からの評価を受けている。もしわれわれが国際舞台に回帰したいならば、貢献の出し惜しみをしていては台湾の国際参加を支持するよう説き伏せるのは難しいであろう。経済協力開発機構(OECD)では、対外援助経費を国内総生産(GDP)の0.28%と規定しているが、わが国はまだ0.1%と比較的低い水準である。 」[29]

・「訪問の過程で、解決しなければならない新しい問題が見つかった。帰国した後、プロジェクトチームを成立させて、アフリカの友好国が直面している新困難を克服する。例えば医療援助については、詹啓賢・総統府資政を招いて衛生署と共同研究し、部会を横断したチームを成立させて、医療資源を整合し、我が国の医療管理様式で支援を推進する」[30]


今後、台湾はアフリカ諸国のためにどの程度の援助を増額するのか、また、具体的にどのような援助をするのか注目したい。


2.日本と台湾の関係

(1)中国に遠慮するなかれ

民主党政権下の日本政府は、中国との関係を悪化させないようにしている。例えば、尖閣諸島中国漁船体当たり事件では、主張すべきことを主張しなかった。また、東日本大震災一周年追悼式において、台湾代表に指名献花の機会を与えず、多大な支援を頂いた台湾の人々に失礼なこともした。日本は主張すべきことは主張すべきだし、また、中国が台湾と関係を拡大しているのと同様に、日本も台湾と関係をさらに拡大すべきである。中国に遠慮していては真の友好関係を築くことはできない。

(2)領土問題への一案


日本と台湾の唯一の政治問題である尖閣諸島については、「先急後緩、先易後難、先経後政」で先送りにしてはならない。政府間で定期的に意見交換の場を作るべきである。ノルウェーが石油資源が期待されるバレンツ海の領海線の設定に40年以上ロシアと粘り強く交渉を重ね、2010年に妥結した事例がモデルになると思う[31]。関係国が意見交換をしている事実を積み上げていけば、国民はその推移を見守るだろうし、紛争が発生する蓋然性は小さくなるはずだ。

日本人は、相手の機嫌を損ねるだろうと慮って、言うことを躊躇しがちになる傾向がある。そもそも外交とは自国の主張を言い合い、妥協点を探ることである。解決するまで何十年を要するかもしれないが、定期的に話し合うことだ。


3.日本の政治

東アジア諸国の元首の任期は以下のとおりであるが、日本政治が脆弱であることを改めて認識した。
・台湾の総統の任期は4年/期(最長2期)。馬英九の任期は2008/5~2016/5(8年間)である。
・中国の国家主席の任期は5年/期(最長2期)。胡錦濤の任期は2003/3~2013/3(10年間)である。
・韓国の大統領の任期は5年(再任不可)。李明博の任期は2008/2~2013/2(5年間)である。

日本の総理大臣は、安倍(就任時:2006/9)、福田(2007/9)、麻生(2008/9)、鳩山(2009/9)、菅(2010/6)、野田(2011/9)と、1年毎に交代している。外務大臣においては、2006/9から数えると、現在9人目である。首相や外務大臣が国際会議などで一回のみ発言しても、その発言には重みがない。これが国際社会で日本の発言力が低下している要因である。「日本のODAの金額が減少すると、外交上の発言力が低下する」という意見があるが、枝葉末節の話だ。

低迷する日本経済(図2)を立て直し、外交的に発言力を待つためには、ふさわしい人物が首相に選出されて、十分な任期が与えられていなければできない。

図2

【 参考文献 】

[1] The Chinese are coming...to Africa (The Economist, 2011/4/22)
[2] アフリカのニュースと解説「滞在者リンク集」の検索機能を利用
[3] 中央通訊社 (2012/04/18)
[4] 中華民国外交部
[5] 台北駐日経済文化代表処
国民党ニュースネットワーク
[6] 馬英九・中華民国第13代総統就任演説 (2012/5/20)
[7] 馬英九総統「活路外交」の理念と戦略 (2008/8/6)
(前半)
(後半)
[8] Taiwan welcomes allies developing relations with China: president (2008/8/18)
[9] ガンビア大統領「いつまでも中華民国を支持」と表明 (2012/4/13)
[10] 活路外交が国際社会への扉開くカギ (Taiwan Today、2011/10/10)
[11] 台湾の国連加盟と活路外交 (2010/9)
[12] Taiwan ICDF > Bilateral Projects > Africa
[13] Trip to African allies is valuable in establishing stronger relations: Ma(2012/4/17)
[14] 中華民国(台湾)と外交関係を持つ国(邦交國・23カ国) 2008年1月15日現在
[15] Cooperation with Taiwan (在台湾ブルキナファソ大使館)
[16] Africa could illuminate Taiwan's LED sector: Ma (2012/4/12)
馬英九総統が「気候変動対策会議」を招集、グリーン産業発展強化を提唱(2010/5/27)
[17] 中華週報1970号(2000.9.14)
[18] 馬英九総統がガンビアを公式訪問 (2012/4/19)
[19] 12 Gambian students set to leave for China (2012/4/5)
[20] 馬英九総統がスワジランド王国を公式訪問(2012/4/26)
Exploitation by Taiwan Textiles (2012/4/17)
[21] Sao Tome and Principe: The Butterfly Effect from Macau to Taipei
[22] Taiwan donated US$13 million to Sao Tome and Principe in 2009(2010/5/24)
[23] President Ma meets Sao Tome and Principe Prime Minister Patrice Emery Trovoada (2011/01/14)
[24] Office of the President announces President Ma to visit African allies starting April 7
[25] 馬総統のアフリカ訪問スケジュール サントメ・プリンシペ取消し (2012/3/27)
[26] Sino-Lusophone Forum to promote Macau (2012/3/29)
なお、同フォーラムは、これまで2003/10、2006/9、2010/11に3回の閣僚会議が開催されている。
[27] African ally Sao Tome and Principe did not attend Macau forum: MOFA (2012/4/6)
[28] President Ma receives congratulatory delegations from Sao Tome and Principe and the Kingdom of Swaziland
[29] 全国民の資産「外交」を共に守ろう (2012/4/19)
なお、0.28%というのは2007年のOECD諸国の平均値であり、1970年に約束したのはGNIの0.7%である。  Achieving the Millennium Development Goals in Africa
[30] アメリカ訪問終了 馬総統:友好関係を固め、台湾に徳を積んだ (2012/4/18)
[31]
ノルウェーとロシアが大陸棚境界画定交渉で合意 (2010/4/28)
ノルウェーとロシアがバレンツ海の境界線問題に合意 (2010/5/20)
ロシア・ノルウェー、海の国境画定 40年越し合意(2010/9/15)


(参考ビデオ)
【仁誼之旅】Part1-馬總統獲頒大十字勳章
【仁誼之旅】Part2 -馬總統參訪?保雷國家醫院及職訓中心
【仁誼之旅】Part3 - 非洲一盞燈
【仁誼之旅】Part4 - 總統間的約定
【仁誼之旅】Part5 - 赴賈梅總統家?Kanilai
【仁誼之旅】Part6 - 總統款宴駐甘館團員眷及旅甘國人

2012/06/04

在外公館(アフリカ)のHP評価 (3回目)

アフリカには54ヶ国あるが、32の国に日本大使館が設置されており、全ての大使館がホームページ(HP)を作っている。このブログでは、2010年1月と同年12月に各HPを定性的に評価したが[1]、今回は「サイト解析」ができるソフトウエアを使って定量的に評価してみた。結果を言うと、32のHPの半数以上に落第点をつけざるを得ない。

調べてみたところ、総務省は在外公館の行政評価を実施していた。今回のブログでは、①最初にそれを紹介し、②次に、私の評価方法と評価結果を説明し、③最後に、コメントを述べる。日本の在外公館のHPが良くなることを期待する。


1.総務省による行政評価 及び 外務省の対応

総務省の「在外公館に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」は、2009年から2012年にかけて実施された。2010年5月、「在外公館に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」を発表しているが、調査の1項目である広報文化業務 については以下の勧告がなされた。[2]

在外公館が管轄する国・地域の治安状況、通信等各種のインフラの整備状況等の違いを踏まえつつ、次の措置を講ずること。
○在外公館における広報文化業務の実施体制及び実施状況を的確に把握・分析し、他の在外公館に比べ実績が乏しい在外公館に対しては、必要な指導を強化すること。
○在外公館に対し、「在外公館ホームページの運営の手引き」に即したホームページ運営をするよう徹底すること。また、当該手引に新設在外公館におけるホームページの開設までの目安となる期間を定めホームページの早期開設を推進すること。さらに、在外公館におけるホームページの運営状況を定期的にフォローアップし、効果的な取組事例や要改善事項を取りまとめ、在外公館に情報提供・指示すること。

一方、外務省は、総務省の勧告を受けて、諸対策を講じた。2012年3月には以下のような報告を総務省に報告している。(下記は抜粋)

・在外公館におけるホームページの開設については、平成23年3月末までに、全211公館がホームページを開設。
・各在外公館に対しては、平成23年4月に「在外公館ホームページ(運営状況等フォローアップ:第2回自己評価)」を発出し、ホームページ運営体制の改善、定期的な更新、リンク切れの対処を求めたほか、在外公館における効果的な取組事例も周知。
・第1回自己評価結果と第2回自己評価結果を比較すると、ミニマムコンテンツの記載達成率90%以上の公館が、日本語版では81公館から96公館、現地語版では105公館から127公館に増加。


2.評価方法と評価結果

(1)評価方法

「Website Explorer」というソフト "サイト解析ツール"を使って、HPに収納されているファイルの「総サイズ」(メガバイト)を計測した[3]。

(2)評価結果

各大使館のHPの「総サイズ」は図のとおりである。(一部の大使館の棒グラフを赤色で表示している理由は、後述する。)

図:在外公館(アフリカ)のホームページの総サイズ(2012/5/31現在)



3.コメント

(1) 望ましいHP

HPが評価されるかどうかは、リピーターを獲得できるかどうかで決まる。下記の日本大使館は独自のレポートやエッセーなどを定期的に提供していることを評価する。(図の赤色の棒グラフ参照)

a. 政治経済情報

日本の新聞などはアフリカ関連の記事が少ないので、大使館が発信する政治・経済ニュースを期待したい。なお、過去のレポートは少なくとも数年間はアーカイブとして読めるように公開して頂きたい。

b. 大使のエッセー

また、事実関係だけでなく、大使の意見も読みたい。例えば、在タンザニア大使(岡田眞樹氏)、在ザンビア大使(江川明夫氏)がエッセーを書いている。今は離任したが、在コートジボワール大使(岡村善文氏)はブログを書いて情報発信していた。[4]

c. 在留邦人のエッセー

日本にいる読者にとっては在留邦人のエッセーも読み応えがある。在アンゴラ大使館の「アンゴラ奮闘記」、在ケニア大使館の「活躍する日本人紹介」及び「ケニアこぼれ話」など、情報発信しようという意思が感じられる。


南アフリカ:月刊南ア・ニュース、Fact Sheet、他
エジプト:Information Bulletin - JAPAN
マラウイ:ニューズレター(英文)
タンザニア:大使レター
エチオピア:ニュースレター(年4回)
アンゴラ:アンゴラ経済月報 アンゴラ奮闘記(在留邦人記)
ザンビア:ザンビア便り(大使)
ボツワナ:「ボツワナ情報」「ボツワナでの生活」
ケニア:「『ケニアの現場から』~活躍する日本人」「ケニアこぼれ話」「JOCVの広場」
ルワンダ:ルワンダ月報
モザンビーク:モザンビーク月例報告
リビア:リビアに関する報道


(2) 特に評価したい大使館

今回の評価では、特に3つの大使館を評価したい。在南アフリカ大使館と在エジプト大使館は、情報の量が飛びぬけており、HPを担当された歴代の担当者に敬意を表したい。

もう1つは、、わずか半年で目覚しく改善した在ジンバブエ大使館である。半年前までは、1年以上更新していない悲惨な内容だった。しかし、新しい大使(福田米蔵氏)が赴任してから、上位に食い込んでいる。HPを良くするもの悪くするのも、大使のやる気次第であることがわかる。

形式的にHPを作成しているだけの大使館(図の下部にある大使館)は改善し、外務省においては在外公館のHPに期待するミニマムコンテンツのレベルを上げて適切に監督して頂きたい。


【 参考文献 】

[1] 過去の評価
1回目(2010/1/10)在外公館(アフリカ)のWeb Page評価

2回目(2010/12/31)在外公館(アフリカ)のHP評価(2回目)


[2] 総務省と外務省
2009/4~2010/5: 総務省による外務省の調査
2010/5/7: 総務省による外務省への勧告 --- その1
2010/12/10: 外務省からの総務省への回答(1回目)
2012/2/16: 外務省からの総務省への回答(2回目)
2012/3/13: 総務省による2回目のフォローアップ---その2

(その1)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000064691.pdf
http://www.soumu.go.jp/main_content/000064692.pdf
http://www.soumu.go.jp/main_content/000064693.pdf
http://www.soumu.go.jp/main_content/000064694.pdf
(その2)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/55495.html
http://www.soumu.go.jp/main_content/000150378.pdf

[3] Website Explorerについて
1.ダウンロード先は http://www.umechando.com/webex/index.html
2.料金は、「個人での非商用利用に限り無償」とのこと。
3.具体的な設定方法
(1)ソフトを起動して、[アクション] → [詳細設定] → [フィルタ] → [スタートページのみ解析] する。このようにしないと、リンク先のファイルの大きさまで計測してしまう。
(2)最上部のURLに設定する。

4.注意点
(1)今回のような分析は、32のHPの相対的な大きさがわかった。しかし次のような問題点があることを指摘したい。
・重い画像ファイルがあるとHPの総サイズが見かけ上、大きくなる。(在ベナン及び在チュニジア大使館のHP)
・古いHPにはそれなりにファイル数が多いので、新しいHPが古いHPと競うのはあまり意味がない。
(2)各HPの大きさの年毎の推移を計測するために適している。

[4] コートジボワール日誌 by 岡村善文氏

(参考)大使館のHP(図の順番)
南アフリカ 
エジプト  
マラウイ  
ブルキナファソ 
ジンバブエ 
タンザニア 
ベナン 
チュニジア
エチオピア
セネガル
アンゴラ
ザンビア
モロッコ
スーダン
ボツワナ
ウガンダ
アルジェリア
コンゴ民主共和国
ケニア
ルワンダ
モザンビーク
コートジボワール
ガボン
リビア
ナイジェリア
ガーナ
マリ
ギニア
ジブチ
カメルーン
モーリタニア
マダガスカル